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―その日の夕暮れ


蘭子が心配する中、宝石の肉を持ち帰った面々が帰還した。
鈴は命には別条ないものの、怪我をして兄の触覚で背負われて帰ってきた。
蘭子は兄妹に駆け寄る。


「サニー!鈴ちゃん!!」
「俺が応急処置したからとりあえず大丈夫だ」
「そうなの、よかった・・・サニーも無事でよかったわ・・・」


おかえりなさい、怪我してない?とサニーの頬を優しく撫でてから、集中治療室へ向かうサニーを見送った。




「え、あの女性どなたですか?」


サニーさんと親しげでしたけど、と離れてふたりを見ていた小松が隣のトリコとココに尋ねた。


「あぁ、」
「あの子はねぇ、、」
「「サニーのカノジョだ」」
「うぇええええ!!!!サニーさんのか、かのじょぉぉおおおおお!?!!?!?!?」


予想外といったふうな小松の大声にこちらの存在に気付いた蘭子が近寄ってきた。


「トリコ、ココさんもおかえりなさい。向うの広間にご飯用意してあるわよ」
「おっしゃー!腹減ってたんだよ〜〜」
「ありがたいね」

ふと、見知らぬ人物の視線に気付いた。

「あら、あなたは?」
「彼は小松くん。ホテルグルメのシェフだよ」
「は、初めまして!」
「初めまして、私もIGOの大学で働いてるの。蘭子よ」


よろしくね、と差し伸べられた手で握手を交わした。
キャンパスに務めて数年間色んな学生を見てきた蘭子は(小松シェフ・・・今後大物になる予感がすごいわ!)と思った。




鈴も無事に回復して意識を取り戻し、宝石の肉を囲んでのディナータイムとなった。
テーブルを囲んだ一同はその輝きに目を奪われる。
サニーなんてその美しさに口を覆って涙ぐんでいた。感動屋さんだ。

夜の帳も落ちて、星々が輝く時間だというのに宝石の肉がもたらす輝きで研究所の屋上一帯は真昼のように明るい。
みんなで『いただきます』をしていざ実食の始まりだ。

す、と軽くナイフを入れる、するとどうだろうか肉汁が花火となってパチパチパチっと弾けた。
一口大に切り分けて、口腔に招きいれれば肉の旨みが口いっぱいに広がり、咀嚼し、飲み込めばまるで妖精の粉でも浴びたかのように全身がまばゆく輝きだした。

「すごい!すごいわ!宝石の肉!!」

蘭子はこの感動を忘れないように、原稿用紙に必死に書きとめた。
一生懸命ペンを走らせていると蘭子の隣が太陽がいきなり現れたかのように一層明るく輝いた。
輝きに誘われるまま隣を見れば、サニーがこれでもか!というぐらい今日一番の暴力的な輝きを体中から放っていた。
多色の髪もわさわさと嬉しそうに揺れていた。

どうやら彼のグルメ細胞に適合した食材だったらしい。


「すごいわ、太陽みたいね!」
「フッ、惚れ直したか?」



その後、宝石の肉をトリコとサニーのどちらのフルコースに入れるかで一悶着あったが、無事に宝石の肉のお食事会は幕を閉じたのだった。



「またフルコース完成に一歩近づいたのね!」


おめでとう、と祝福のキスを贈っただった。

宝石の肉・2




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