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―蘭子とサニーがお付き合いを始めて、またしばらく経った頃。


蘭子が大学の自分の研究室で仕事に励んでいると、携帯端末にサニーからの連絡が入った。



「もしもし、サニー?」
『ん。蘭子元気だったか』


挨拶もそこそこに、サニーは要件に入った。


「え、IGO本部に一緒に来てくれ?どういうこと?」
『オヤジが蘭子を紹介しろってうるせぇんだ』
「はぁ・・・それはいいけど・・・」
『んじゃ、来週の休みにな。ヘリで迎えに行くから待っててくれ』
「ええ、わかったわ」

じゃあな、と短いリップノイズだけ残してサニーとの通話は終了した。


IGO会長・一龍といえば、サニーをはじめとする四天王の育ての親だという。
その父親が蘭子を連れてこい、ということは・・・顔合わせ・・・親に紹介イベント的ものなんだろうか・・・。
そんなに深い意味がないと分っていても、やはりドキドキは隠せない蘭子だった。


ちなみに余談だが数か月前引き合わせてもらった鈴とは、その後プライベートで遊びに行くなど交流を深めていた。
この間も二人でショッピングに出かけたばかりだ。





―そして約束の日


仕事に追われ一週間なんてあっという間に過ぎ去っていってとうとう約束の日を迎えた。
気合いを入れて念入りに髪をセットしたり、服も綺麗めなコーディネートでまとめた。
鏡に向って念入りにチェックする。


蘭子が鏡とにらめっこしていると、家の呼び鈴が鳴る。
インターフォンの受信ボタンを押すと、画面にサニーが映った。
ショルダーバッグを肩からさげて玄関扉を開ける。


「サニーお迎えありがとう」

ちゅ、と唇に挨拶のキスをした。


「うーん。今日のファッションも見事に調和してんな、蘭子」
「えへへ、ありがとう」

美にうるさい彼のお褒めの言葉も貰ったことで、ちょっと自信が持てた蘭子だった。




サニーの操作するヘリに乗り込み、海に浮かぶ御膳・IGO本部へと出発した。

蘭子の勤めるグルメアカデミーもIGOの機関のうちのひとつだが、会長に会う機会など滅多にないので柄にもなく蘭子は緊張していた。
ヘリポートに到着し、応接スペースへと案内される。
案内の黒服が二人の来訪を伝えるとファンキーなスタイルの男性が振り返った。



「おお!サニー!待っとったぞ!!」
「オヤジ、ちゃんと見せたぞ、んじゃっ」

挨拶したかと思ったら、ぐるっと踵を返して即行で引き返そうとするサニー。

「えっ、まだご挨拶してないよ!?」

蘭子の手をぐいと掴んで元来た道を戻ろうとするのを足を踏ん張って止める。


「コラッ、ちゃんとワシに紹介せんかーい!」


という、まるでコントのようなことがあったがなんとか応接椅子に着席することが出来た。
一龍手ずからお茶を点ててくれるというので、ありがたく頂くことになった。
サニーは本当に早く帰りたかったようで、蘭子の隣でムスっと上唇をとんがらせて腕組みしていた。
多分恥ずかしいやら照れくさいやらで居心地が悪いんだろうなぁと蘭子を思っていた。


「それで、サニー、紹介してくれんのか?」
「・・・俺の恋人の、蘭子」
「ほうほう、蘭子さんと言うのか」


点てたお茶をテーブルに載せて一龍も着席した。


「あっはい、初めまして、グルメアカデミーで講師をしております、蘭子と申します。今日はお招きありがとうございます」
「いやいや、突然呼び出してスマンかったの。蘭子さんはウチの所属だったのか」
「はい、いまはキャンパスで自分の研究と教壇に立っております」
「学者なのか、それはこれから活躍が楽しみじゃの」



お点前を頂いて、ほっと一息つく。



「蘭子さんや、サニーは迷惑かけとらんか?」

こいつは人一倍こだわりが強いからの、と一龍は笑った。
その慈愛に満ちた優しい眼差しに蘭子もつられて微笑む。


「いいえ、そんな、迷惑だなんて。素直で可愛い人ですし、私も大事にしてもらっています」
「そうかそうか。サニー愛されとるなぁ」
「フンッ」
「ふふ、サニーちゃん、お父様にいつまで照れてるの?」
「ッ、照れてなんかねーし!」
「そういうところがとってもかわいいと思うのよ?」


一龍はにこにことまなじりを下げてふたりのやり取りを眺めていた。
このふたりならきっとこれからの人生の困難な道のりも手を取り合って仲良く乗り越えていけるだろうと思ったのだ。


「サニーは良い伴侶を見つけたのぅ」
「ん」
「大事にするんじゃぞ」
「オヤジに言われなくても、あったりまえだし」
「わっはっは!孫の顔が見れるかと思うとワシももうちょっと長生き出来そうじゃ」
「「!!」」

一龍の未来を見据えた発言にふたりの顔が一気に赤くなったのだった。






その後昼食を一緒に囲み、本日はお開きとなった。


「蘭子さん、サニーをよろしく頼む」
「はい!私が幸せにします!」
「なっ!それは俺のセリフだし!」

「はっはっは!頼もしいわい!」





一龍はにこにこと微笑んでへリポートまで見送ってくれた。

0:49 2021/02/02
父親編




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