どうしよう、変な気持ちになってきた
俺は毎朝の日課の鍛錬を終えて、汗を流しに井戸に着た。井戸から水を汲んで、盥に移し替える。持参した手ぬぐいを水に浸し両手でぎゅっと絞った。
―びゅぉおお
今日は風が強いようで、汗をぬぐった身体もすぐ冷えてしまいそうだ。
ぼーっと身体を拭っていいると、風に飛ばされてきたのだろう目の前に緋色の布が空からひらりと舞い降りてきた。
きっと洗濯ものかなにかなのだろう。拾って届けてやらねば。
(てぬぐい?いや、風呂敷か?それにしては大きいな・・・)
気になって拾い上げて、両手で広げてみる・・・。
(なっっっ!!!!!こ、こ、これは腰巻ではないか!?!?)
このさらりとした手触りは絹で間違いないだろう。そしてこんな上等な布地で腰巻を仕立てている人物はこの城内でも、そう何人といやしない。
(この腰はもしや・・・椿の物では・・・)
ふとそんな思考がよぎると、顔と下半身が熱くなってしまう己が情けない。だんだん閨で見たような気がしてきた。
(に、匂いとか・・・・)
腰巻を顔に近づけようとした、まさにその時・・・
「幸村ーー!!!」
背後から椿に声をかけられた。ばくん、と心の臓が脈打つ。俺はなんとか平静を装って振り返った。
「ど、どうしたでござるか、椿」
「こっちに緋色の布が飛んでこなかったか?洗濯場に持っていく途中で風に飛ばされてしまったのだ・・・」
(や、やはりこれは椿のこしm)
「あ、ああ・・・これのことか?」
今しがた拾ったのだ、と付け加えて持っていた腰巻をに差し出す。
「あ!それだ!拾ってくれたんだな!」
じゃあ私は急ぐから!と可愛らしい笑顔だけ残して椿は足早にいなくなってしまった。
(や、やばい・・・もう一度鍛錬してこの猛りを静めねば・・・!)
そうは思ってもしばらくその場から動けない俺であった。
(だ、旦那・・・・・流石の俺様でもこれは見なかったことしてにいいかな・・・)