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満は自分の爪を見ては、その度に顔の筋肉を緩ませていた。


それは昨日のこと。

日用品の買出しに来たついでに立ち止まった化粧品のマニキュアコーナー。
一色のネイルカラーに思わず目がとまった。


食い入るように見つめる目線の先には、水色の、勿忘草色のネイル。
まるで自分の恋人の髪の色を思わせるような色だった。
思わず手にとって小瓶を傾けるとパールのラメがきらきらと控えめに揺れた。

ほわほわとした気持ちで見つめていると、つかさず販売員が口を開く。

「このシリーズはこの夏の新色なんですのよ!是非お試しになりませんか?」
「あ、はい・・」

販売員が試供品のボトルを開き、満の人差し指を染めた。
てらりと塗られた輝きに少し見とれる


「これ、買います」


小瓶と人差し指に熱い視線そそぎ、満はレジに向かったのだった。


普段は飲食店でのアルバイトの為、マニキュアを塗ることは殆どない。だが幸い明日から連休をもらっているので、落す手間はこの際考えずに塗ることにした。ドレッサーの引き出しからネイル道具を一通り引っ張りだす。

久しく使っていなかったが、中の液は固まっていないようだ。確認するようにたぷたぷと左右に小瓶を振った。


(久しぶりだから、たっぷり時間つかって塗っちゃおうっと)


まずはぬるま湯と指先をふやかし、不要な甘皮の処理。それからオイルを使ってマッサージし乾かしたところでをベースコートを塗っていく。乾いたところで主役のマニキュアを根元のほうからたっぷり塗りつけていく。剥がれやすい爪先を塗るのも忘れない。マニキュアが乾いたらトップコートを塗って完成だ。

(そろそろサンダル履く時期だし・・・ペディキュアもしようかしら)

ふと思いついて、同じ要領で足の爪にも勿忘草色を塗付した。乾ききったところで、両手両足で視界を埋めた。

「うん!我ながらいい出来栄えね!」

自分を褒めることも忘れない。

じぃっと見ていると段々口角が歪んで目尻が下がるのが分かった。

このネイルを見ているだけで、彼が近くにいるような気持ちになれた。


明日、これを見た彼はなんていってくれるだろうか・・・。

期待に胸弾ませながらは床に着いた。


彼色の爪

あとがき

2010/06/02
加筆修正20130712



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