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カフェ・ラ・ジェーンでの勤務中、賄いを作ることがある。
私が料理が好きで弟たちの栄養面の面倒もみているという話を店長にしたら、頼まれたのだった。
渡された予算の範囲内で当日の勤務メンバー分みんなで食べるメニューを考えて買い物するのはなかなか楽しい。
食べ盛りの弟たちをいかに低予算でお腹いっぱいにさせられるかと考えあぐねていた頃とはわけが違う。
あの時はあの時で楽しかったけどね?
好きな食材を好きに買えるって素晴らしいことだわ。

そして今日は私の当番の日というわけだ。

カウンターキッチンでせっせと調理に励む。
今日のメニューはナポリタンにキャベツのスープ。
鍋をお玉でかき混ぜれば、煮溶けて柔らかくなったキャベツの甘い香りがふわりと鼻をくすぐる。
アクセントに粗挽き胡椒を振り入れればスープは完成だ。

パスタを茹でている間に手早くナポリタンに使う具を刻んでいく。
ベーコン、ピーマン、そして玉ねぎ。見切り品で御安く買えたトマトも一口大に切る。
順番にフライパンで炒めて、全部に火が通ったところでトマトジュースを加えて塩胡椒して味見をする。
うん、ちょっと薄口醤油いれてっと・・・。

具がくつくつと煮詰まってきた頃、タイミングよく茹であがった麺をフライパンに移していく。
追加で麺にオリーブオイルをかけてトングで全体を馴染ませていく。
パスタがトマトジュースを吸って少し太ったら出来上がりだ。

よし、あとは運んで盛り付け・・・と思ったところで正面から声がした。


「お〜いい匂いしてんな〜。今日はなんだ?」

顔を上げれば、カウンターテーブルに頬杖をついた京介がいた。

「ナポリタンよ。京介、仕事終わったの?」
「あと2、3件ってところだな。でも腹減っちゃってさ!」
「え、お弁当足りなかった?」

すると、もうとっくにないぜ!とどや顔で言われてしまった。
京介には毎日お弁当を持たせているが、今日は足りなかったようだ。
早弁ってやつね?

「俺にもなんか食わしてくんね?」
「もう、しょうがないわね。私の分を分けてあげる」
「やりー!満は優しいなぁ〜」
「その替わり、運ぶの手伝うのよ?」
「おう、まかせろ!」


店長に一言ことわりをいれてから京介はキッチン側に招いて、ふたりで手分けしてスープの鍋やナポリタンの入ったフライパン、食器類を客席に運ぶ。
店内は午前の営業時間を終え、一旦閉めているのでもうスタッフしかいなかった。

「賄い出来たのでとりにきてくださいね〜」

と私が声をかければ、みんな集まってきた。
京介は私の指示通り、スープをカップによそってスタッフに手渡しくれる。
家でも手伝ってもらっていることなので動きが良い。

京介が店に顔出すのも珍しくないことなので、スタッフたちも京介からカップを普通に受け取っていた。
でもそのちょっと非日常の光景がなんだかおかしかった。
ふたりでお店とかやったらこんな感じなのかな?

私はそんなことを考えながら、ナポリタンを盛り付けた皿を次々に渡していった。


気をきかせてくれた店長の好意で、みんなとは離れたテーブル席でふたりで食べることになった。
私の分の賄いを半分こして京介の前に置く。
コーヒーはサービスだ。流石喫茶店。

「はい、召し上がれ」
「いただきます!」


京介がフォークにパスタを巻き付けて頬張ると、ん〜〜!と目を輝かせて咀嚼する。

「どう?」
「ん!美味い!」
「良かったわ」

おいしそうに食べてくれる、その顔がとっても好きだなぁ。

京介の笑顔に釣られて私も自然と笑っていた。




lunch with you

「満が作る飯、全部好きだ!」



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