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今日は仕事が休みなので昼ごはんを作りにガレージを訪れていた。
狭霧と牛尾から頼まれ、とある男の子を預かることになったと聞いた。
ちょっと触っただけでジャックのDホイをご機嫌にしてしまったらしい。
昨晩ガレージに招いてからというもの、遊星と意気投合して寝食も忘れて一晩中パソコンでプログラムを打ち込んでいるという。
「で、あれが噂の記憶喪失くん?」
「ブルーノってんだ・・・」
「へぇ〜」
ジャック、クロウの顔には思いっきり「おもしろくない」と書いてあった。
アキちゃんは拗ねて帰ってしまったと双子が言っていた。
―翌日
ガレージに顔を出せば、弟たちがパソコンの前で騒いでいた。
「おはよ、みんな集まっちゃってどうしたの?」
「姉ちゃん、それが・・・」
「・・・データが盗まれた?」
ていうか、盗まれたってなに?
このお家の防犯面弱すぎない?ちゃんと戸締りしてるのかしら・・・。
シティ暮らしで鈍ってるんじゃないでしょうね。
カップめんのフィルムに残された指紋からイェーガーの犯行と判明したらしい。
ていうか、遊星またセキュリティのシステムにハッキングしたの・・・まぁ足がつかなきゃいいと思う。
「ていうか、この女の人は?」
記憶喪失くん―ブルーノはやっと私の存在に気付いたようだ。
そういえば昨日きた時はパソコンに集中していたから会話にならなかったものね。
「私は満。遊星たちの姉よ」
「ぶ、ブルーノです」
「満は俺たちの様子を見に来てくれてるんだ」
「そうなんだ」
「あんたたち放っておくとすーぐカップ麺ばっかり食べるからね!」
「耳が痛いぜ〜」
「弟たちと仲良くしてあげてね」
「は、はい」
というわけで、イェーガーを尾行するべくいまビルの陰に潜んでいる。
私も(面白そうなので)付いてきた。
高級車にイェーガーが乗り込むのを確認してから尾行開始だ。後に乗り易そうなクロウのDホイールに便乗した。
私たちを巻くためか、高級車はショッピングモールに入っていく。
うん、私は買い物をしよう。
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買い物から帰ってきて、晩御飯の準備をしていると、弟たちが帰ってきた。
「おかえり。なに?余所で爆発でもした?」
なんだか心なしか火薬くさい。これはご飯より先にお風呂のコースね。
「満姉ちゃん!もう大変だったぜぇ〜〜」
ショッピングモールで別れてから、散々な目にあったらしくそれをクロウが面白おかしく教えてくれる。
盗まれてしまったデータも結局は有耶無耶になってしまったらしい。
「ていうか、あんたたち。そもそも家に盗みに入られるとか弛んでるじゃないの!?」
「「「う゛」」」
「シティ暮らしで勘が鈍ったんじゃない?私が鍛えなおしてあげるわ!」
「いや、お、おれは大丈夫だ、するなら遊星にだろう!」
「先に飯にすんだろ?な?な?」
「そ、そうだぞ、満、落ち着け、」
お玉を持ったまま詰め寄る私に、面白いぐらい一斉に青ざめる弟たち。
「満さんて、一見華奢で可愛らしいのに暴力的なんだね!」
どの技をかけようか思案していた私に、稲妻が走った。
「・・は?・・な、に、この子、」
なに!なんなのこの子!?
「お、落ち着けって姉ちゃん!」
「恐れを知らない奴だ・・・」
「満の面食らう顔、久しぶりに見た」
「ブルーノ、ちょっと一発お見舞いしてもいいかしら・・・」
「え?僕はちょっと本当のこといっただけなのに〜!?うわああ!!!」
―その後間もなく夕飯を食べに来た鬼柳に回収されるまで、満のキャメルクラッチは続いた。
「なんでみんな助けてくれないのー!?」
「ケンカでは誰も満には勝てないんだ・・・」
「成仏しろ、」
「怒らせたお前が悪い」
(なんか虫が好かないわ!!)