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ネオドミノシティで借りる部屋も無事決まり、鬼柳と二人でサテライトから引っ越すことにした。
着の身着のまま生きてきた満とって荷物というほどの所持品は多くはなかったが。
これから必要な物は今までこつこつ貯めた貯金と(イェーガーからふんdもとい、頂いた)退職金で新居での生活が始まってから購入すればいいだろう。


そして今は荷造りの真っ最中。
明日には再開発で長年塒にしていたこの廃ビルも取り壊される予定だ。

(うーん、持ってくのは気に入ってた包丁とフライパンと二人分の食器と、)

やはり大した量はなく、ダンボールひとつで事足りそうだ。


「京介ー?そっちは終わったー?」

別の部屋で荷造りしてるであろう鬼柳に声をかける。
突然声をかけたせいか、鬼柳は肩を跳ね上げて驚いた様子だ。


「お、おう!」
「ん?どうかしたの?」
「い、いや、何でもないぜ?」


正直あやしい、と思った。
満の悪戯心に火が付く。

「ふうーん?」

床に座っていた鬼柳の背中によりかかり体重かけて鬼柳の上体を倒してバランスを崩させると、手に隠し持っていた何かをかすめ取った。

「よいしょ、っと」
「っ?!、満?!」
「私に隠し事なんて100年早いのよ。一体、何を隠し持っ・・・て・・・え?!」
「・・・・う゛、・・・」

満が鬼柳の手からかすめ取ったもの、それは一枚の写真だった。
しかもただの写真ではない、満が地下闘技場で“女王”として戦っていた頃に売られていたブロマイド的な写真だ。
写真の中の満は試合中なのか汗をかいて、ライトに照らされファイティングポーズをとっていた。
ブロマイドを始め物販というのはある種人気のバロメーターだし、売れれば幾ばくかのマージンも貰えたので、売られているのはもちろん承知の上だった。


「え、え、え、な、んで京介が、こ、こんな写真を!?」


弟たちだって闘技場時代の自分を知るはずがないのに!と満が鬼柳の肩を揺さぶって問い詰めると、
鬼柳が気恥ずかしそうに指で頬を引っ付かきぽつりと漏らした。


「・・・・ふぁ、ファンだったんだよ・・・お前の・・・」

(ファン?ファンってあの、ファン?)

「・・・えぇえええーーー!!!!!」


(京介が、私の、“女王”のファン・・・?)


満は嬉しいやら恥ずかしいやらで顔が火を噴きそうなくらい熱くなった。
え、どうしよう、ちょっと嬉しい。でも過去が知られてるかと思うと恥ずかしい・・・そう乙女心は複雑なのだ。

恥ずかしさのあまり、両手で顔を覆ってその場にへたり込むしかなかった。


「・・・満?」


鬼柳が顔を見せてくれ、顔を覗き込んでも、いやいやと満は頭を横に振るだけだった。
隠し切れなかった耳が赤い。

満と膝を突き合わせて座ると優しい声色で話し始めた。

「あのな、前に一目惚れだーって言ったと思うんだけど、ホントは2度目惚れなんだ・・・」
「っ、」
「最初は女王の強さに惚れた、満と知り合ってからはもっともっと満が好きになった。愛するようになった」

一つ一つ告白するたびに、手の甲に、指先に、赤くなった耳にキスを贈る。
キスの度に手の力は緩くなり、とうとう終いには両手首は鬼柳に捕らわれたいた。
沸騰しそうなくらい赤くなった満の顔がとうとう暴かれてしまった。

「・・・ずるい、そんな言い、方・・・」
「はは、顔真っ赤にしちゃって、かわいいな」

慰めるように、涙が滲んだ目尻を吸ってやる。

「オレの愛の深さがちっとはわかったか?」

不意に耳元で囁かれれば、満は素直に頷くしかなかった。
そのまま耳殻を甘噛みされ、しゃぶられ、きつく吸われる。
チリっとした痛みに満は思わず声が漏れた。


「この塒とも今日でお別れなんだ、最後にサイコーに満足する思い出作ろうぜ?」
「うぇ、そ、それって、まさか!!」


突然浮遊感を感じれば、すでに横抱きにされベッドのある部屋へと運ばれていったのだった。
欲深い熱を孕んだギラついた瞳で見つめられてしまえば、満は大人しく白旗をあげるしかなかった。


「そのまさかだよ、満」




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