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キッチンで下ごしらえをしていると、マーサが牛尾の耳を掴んで引っ張ってきた。
「なぁにしやがんだい!」
「これから夕飯の支度だ!びしびし、手伝ってもらうよ?」
どうやらマーサはこの男にも手伝わせるつもりのようだ。
「ちょっと待てよ、俺は客だろう?」
「知らないよう、さぁ働けはたらけぇ!」
マーサがエプロンを投げ渡していた。
私はじゃがいもの皮むきをしながら言う。
「はたらかざる者食うべからず。マーサ、そいつ、体力だけはあるからドンドン頼むといいわよ」
「そりゃあ助かるねぇ!」
マーサは面倒見がいいからなぁ。きっとあの男の事も元気づけてしまうだろうな。
そして夕飯も完成し、ハウスのみんなで食卓を囲む。
シチューの人参は牛尾が切ったせいでいびつだ。
みんなで揃って食事の前のごあいさつ。
「いただきまーす!」
「おいしいよ、このシチュー!」
「うん!うまい!」
「セキュリティの兄ちゃんがつくったんだぜ!」
タクヤの発言でみんなが一斉に牛尾を見た。
「あぁ・・いや・・・」
「美味しいシチューをありがとう」
「ありがとう!」
小さい子達が口ぐちに美味しいと喜んでいたので、私が手伝ったことは内緒にしてあげようかしら。
食事も一段落し、遊星の語る未来の話に耳を傾けていると、
ハウスの庭にでかい雷が落ち、衝撃で食堂の窓ガラスが粉々に割れた。
ダークシグナーのルドガ―と名乗る男が現れた。
遊星がひきつけることにしたようで、残った私たちは地上絵に巻き込まれないように避難することになった。
いなくなったことに気付いた子供たちを追って、マーサと牛尾が飛び出していった。
「ハウスは、ここは私にまかせて、ジャックも行きなさい」
「・・・だが、」
あんたのその力は絶対役に立つから。
「わかった」
ジャックが部屋を飛び出していった。
「雑賀たちも行ってきて」
「でも満、」
「私はこの子達とここにいる」
「満おねえちゃん・・・」
「怖いよぉ・・・」
「大丈夫、お姉ちゃんと一緒にみんなの帰りを待とうね・・・」
雑賀たちを送り出すと、私は小さい二人を強く抱きしめた。