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サテライトで大きな地響きがあったかと思うと、深部から黒い霧が発生し、空には暗雲がたちこめ稲妻が走っていた。
私の頭の中にゴドウィンのあの言葉が響いていた。
(サテライトが、この町が戦場になる・・・)
プロペラの大きな音に気付いて、マーサと雑賀そして子供たちと一緒に私は玄関まで出てきた。
セキュリティの大型ヘリがマーサハウスの前庭に着陸する。
中から出てきたのは、遊星、ジャックを始めとするシグナーたちだった。
ジャックを見付けると、マーサが嬉しそうに飛び出した。
「ジャック!ジャックじゃないか!」
(マーサ、出奔してからずっとジャックのことも心配していたもんね・・・)
そして、子供の頃にからやっていた“アレ”をやらせていた。(私も子供のころ散々付き合わされたことがある)
元キングであろうともマーサには逆らえないのだ。
私はその様子がおかしくって、おかしくって、肩を震わせて笑った。
遊星も心なしか広角が上がっている。
「ほーんと、この子はいい子だよお!」
「マーサ!いい加減にっ、!」
マーサの笑顔に私も嬉しくなる。
よく見ると後の方に牛尾と秘書―狭霧の姿も見える。
と思ったら、お、悪態をつく牛尾に雑賀がつっかかっている。
ふたりは少なからず因縁があるようだ。
今度その話も聞いておこう。絶対面白い。
「誰が好き好んでこんなところに来るかよォ!」
「ホント、アンタって口の減らない奴ね、牛尾」
「・・・っげ、なんで“女王”までいるんだ・・・」
「私は自分の家にいるだけよ?」
「フン、コイツも満の前じゃ形無しだな」
「さぁさ、怖いオジサンは放って置いてみんなお家の中にはいりましょ」
「「はーい!」」
チビたちの手を引いて雑賀と一緒に家の中に入っていった。
***
状況を整理するために、全員でリビングで話すことになった。
マーサがぽつりぽつりとサテライトの状況を語り始める。
昨日、黒い霧が立ち込め、そこのにいた住民たちが忽然と消えていたのだ。
そして遊星のお友達4人も帰ってきていない。
遊星も心配なのだろう、暗い顔をしていた。
「あんたはー?まだ鬼柳が怖いとかいうんじゃないだろうね?」
マーサの言葉に同席している私まで、目頭がきゅっとなる。
一呼吸置いて遊星が答える。
「ああ・・・あの人々の魂を吸うことで発動する恐ろしいカード、地縛神。正直俺はあのカードが怖い」
「・・・・・・」
「だが、俺にはこれだけの仲間がいる、」
「勘違いするな、オレは仲間になったわけではない」
(おいこらジャック!)
「・・・仲間の思いを感じることが出来た時、俺はその恐怖を乗り越えることが出来る気がするっ」
「それに鬼柳、あいつもかつては仲間だったのだから・・・」
「遊星・・・あんた・・・」
覚悟を決めた遊星にマーサが明るい声で言った。
「よく言った、それでこそ遊星だ!行くんだね、ダークシグナーの本拠に!」
「でも今日はもう遅い。泊まっていきなさい!さあ夕飯の支度をするよぉ」
「私も手伝うわ」
「ところで、おれ気になってたんだけどぉ、」
そこのおねえさんってだれ?双子の男の子のほうが口を開く。
わたしも気になってた、と女の子の方も続ける。
小さな二人に見つめられ、私は自己紹介する。
「あぁ、自己紹介してなかったわね」
「私は朽無満、サテライトの奥、BAD地区の管理人てところね」
「まぁ、私のことは遊星とそこの元キングのお姉さんとでも思って頂戴?」
「そっかぁ!お姉さんなんだぁ!」
「ただの暴力姉だ」
「じゃ、ジャック、満に、そんなこと言ったら、」
「ふふふ、ジャックったら、そーんなにアイスクリームのお土産が欲しいのかしら」
私が両の拳をゴツゴツと付き合わせてにこにこと笑うとにジャックの顔色が青ざめていく。
「ほら、ほらぁ、アイスクリームよぉ!」
「っ!く、ぁ!いたい!満痛い!!」
―頭にたんこぶを貰っているジャックをみて、満のことだけは怒らせないで置こうと、心に決めた一同だった。