一目見た時から、綺麗な人だと思っていた。

韓国戦の直前、チームメイト達の元へやってきた『あの人』にオレは目を奪われた。
思えばあれが初恋、しかも一目惚れだったのかもしれない。
試合中もずっと『あの人』の事で頭がいっぱいだった。プレーや仕草の一つ一つがまるで絵に描いたような美しさで、オレは幼いながらにああ、これが芸術というものなのか、なんて思ったりもして。
それくらい『あの人』には魅力があった。


試合には、オレ達が勝った。
『あの人』は試合で負けたにも関わらずわざわざ祝福の言葉を掛けに来てくれたりとか、それでもやっぱり悔しいのか話してるうちに段々涙目になっちゃったりとかして、オレは終始『あの人』から目が離せなかった。

それからそう遠くはない内に『あの人』はイナズマジャパンの一員になった。オレは宙にも浮くような思いだった。
沢山話し掛けて少しでもオレに興味を持ってもらおう。仲良くなったらこの想いを伝えよう。オレの頭の中はそんな考えでいっぱいだった。

イナズマジャパンにスカウトされたのが『あの人』だけではなかったと知るまでは。




















オレはその頃自分の事で精一杯だった。最年少ということでのプレッシャーもある。自分の好きな人に好きな人がいるなんて考える余裕すらなかった。
それでも、現実を突き付けられたのは案外早くて。
見てしまったのだ。練習後にロッカーの影に隠れてキスをしている二人を。
オレも小学生ながらにそれがどういう意味を表す行為なのか知っていた。
最初は事故かとも思ったが、周りの、彼らをよく知るチームメイトの言葉で全てを理解してしまった。
『お前ら、イチャつくなら部屋でやれ』
顔を真っ赤にして俯く『あの人』と、同じく顔を赤くして素直に謝る『あの人』の好きな人。

オレはあの瞬間、初めて失恋をした。












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