雷門中がホーリーロードで優勝し、見事革命を成功させて自由なサッカーができるようになってから1ヶ月が過ぎた頃。
新雲戦で怪我をして暫くの間入院していた神童も復帰して、雷門のキャプテンマークは再び神童の手に戻った。
尤も、それも天馬が沖縄から帰ってくるまでの間だけなのだが。
「なぁ神童、ちょっとトイレ付き合ってくれないか?」
「ああ、丁度俺も行きたかったところだ」
今日は革命が成功した記念としてホーリーロードに出場した学校が集まって交流試合をやるということになっている。場所は木戸川清修中学のグラウンドだ。
雷門中の出番が一通り終わった頃、神童と霧野は監督に一言残してトイレに向かうべく校舎に足を踏み入れた。
「…貴志部、監督を見なかったか?」
「あれ?さっきまでいたと思ったんだけど…おかしいなぁ」
休日の校舎は人影も無く、二人分の足音だけがやけに煩く響いていた。普段通っている雷門中とは勝手が違うのでトイレを探すのにも一苦労だ。
「ここは…っと、理科準備室か」
「あ…霧野、あったぞ」
「おー、神童目良いな…」
漸く『御手洗い』の文字が書いてあるプレートを見付け、其処に向かって歩いていく。しかし、先程まで人の気配が無かったにも関わらず何処からか話し声が聞こえてきた。二人して顔を見合わせる。
「…どこから聞こえてくる?」
「……そこの多目的室…かな」
興味本意で声のする方へと近付く。見てみると、声の主がいるであろう多目的室のドアが少しだけ開いていた。神童と霧野がそっと中を覗いてみると。
「…!?」
「あれは…木戸川の監督…?」
其処に居たのはホーリーロードの際目にした木戸川清修の監督と見た事の無い人物。そこまではよかった。問題は、その二人が普通の知り合いや友人では済まされないような事をしている、ということであった。
「ど、どうしよう神童…俺、凄く悪いことしてる気分…」
「………」
「…神童?」
神童は目の前の光景に釘付けになっていた。白い肌にすらっと長く伸びた手足。愛撫に敏感に反応して跳ねる華奢な腰。神童は、そんな照美の仕草一つ一つに霧野を重ねて見ていた。
不意に神童が立ち上がる。それに合わせて霧野も立ち上がるが神童は霧野の手を少々強引に掴むとそのまま当初の目的地へと早足に向かって行った。
「…今、誰かいたか?」
「ふふ、気のせいじゃない?」
「そうか…?」
トイレに着くと迷わず個室へ入り込む。勿論、二人で。
当然の事ながら個室は元々一人で入る場所である。その為霧野を追い詰めるような体勢になってしまうが気にしない。神童の雰囲気の変化に逸早く気付いた霧野は戸惑い気味に頬を赤らめる。
「し、神童…こんなところで…」
「悪い、霧野…もう我慢できないんだ…」
「あっ、しんどぉ…、待っ…!」
「霧野、きりのっ……」
「神童先輩たち遅いねー」
「監督、俺たち様子見てきましょうか?」
「その必要はないだろう。いやー、青春だなー!若いっていいなー風丸!」
「…そ、そうだな……」
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