▼ お世話になります
猪の罠用の穴から助けられ、二人は土方の家路へ向かう。
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「で、お前が今日から新しい弟子だってぇのはわかったが、お前は何故忍になりてーんだ?」
「かっこよさそうだからです!父様が見せて下さった絵巻に忍者の絵が描かれてて、父様に聞いたら分身の術とか!水の上を歩けるとか!空を飛べるとか!憧れて・・・・・」
頬を染めながら説明するが素人の・・・いや、子供が想像するような忍者のイメージを聞かされて土方は呆れた。そしてそんなミーハーで自分の娘を預ける千鶴の父、綱道にもただの親バカだったかと悟る。
「そういう術や技は幼い頃から厳しい鍛錬や修行を重ねてやっと出来るようになるんだよ。挫折する奴もいるしな。お前みたいな非力な何も知らねぇ小娘なんか一生できねぇ」
「あ、忘れてました。これ父様から・・・私を預かってくださるとの事でほんのお詫びです。」
「ん?」
千鶴の渡した風呂敷の中身は一束の小判だ。
「おまっ、これ!?」
「『千鶴のやりたいことなら思う存分やってきなさい』と父様は送り出してくださいました・・・」
「いや、綱道さんとこどこにこんな大金がっ・・・ただの町医者だろ」
「最近開発した薬が売れているみたいで、『OCHIMIZUビタミン・ザ・RASETSU』と言ってたしか精力剤と言っていました。」
「ほお・・・?よくわかんねーがお前がボンボン娘で甘やかされていることだけはわかったよ。」
「でも土方さん・・・見た所こちらのお屋敷、瓦も痛んでるしお庭の垣根も壊れてたしあちこち刃物の傷だらけです。そろそろ変えどきでは?」
「・・・・・・・・・・ま、好意に甘えてその金は頂く。お前を置いてやるよ。」
「わあ!ありがとうございます!今日からお世話になります!お師匠様!」
金に目がくらんだ土方はこの少女を弟子として受け入れる。はてさてこの先どうなることやら――・・・・・
(とりあえずしばらくこいつは雑用係だな)
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