ずっと一緒 1/2
※「新婚生活」の続きになります
●5月3日
今日は歳三さんと私が結婚して3ヶ月が経ちました。はい、そうなんです。記念日なのです!愛おしい歳三さんとはそれぞれの両親が勝手に決めた政略結婚ですが私は歳三さんと結婚出来てとても幸せなのです。
初めて歳三さんを見たのは12の頃、当時政略結婚に不満を抱いていた私はちょっぴり反抗期でその日はばあやに黙って華道のお稽古をほっぽりだして街に遊びに行きました。
〜2年前〜〜
「お嬢さまあ!お嬢さまっ!どこに行ったんですか?お華のお稽古の時間ですよぉぉ!」
「ごめんなさいばあや…でも花嫁修行なんてしたくないの」
12歳の私は家を飛び出し街に行きました。家出ではないんです。ちょっと気晴らしに甘味屋に行って可愛い簪や小物なんかを見て堅苦しい家柄と将来から抜け出したかったのです。
「えへへ美味しい!」
「お嬢ちゃんお団子美味しいかい?」
「はい!とってもおいしいです!」
甘味屋のおばさんがひとつおまけにくれたみたらし団子を食べ、お歌を歌いながら私は町ゆく人々を眺めていたら…
「おうこら!テメェぶつかっといて一言ねぇのか!」
「ふ?」
「ああ!?うっせえよ!俺ぁ今ムシャクシャしてんだ!」
(あわわわわっ!どうしよう…おじさん達がケンカしてる!!)
目の前で突然の喧嘩が始まり私は混乱して思わずお団子を落としてしまいました。二人のおじさん達の喧嘩はおさまりません。そんな時・・・・
「おいっ!テメェ等何してんだ!」
「!?」
「昼間っから喧嘩たぁ良い度胸じゃねえか」
「うっ!…これは御武家様…」
「あ〜何でもありませんで!ちょっとした言い争いでさぁっ、すまなかったなっ」
「おお…こっちも悪かったお互い気を付けようぜっ」
現れたのはまるで役者のように綺麗な顔立ちをした男の人、その男の人が二人のおじさん達を一睨みしたら今まで喧嘩してたのをピタリと止め、去っていきました。これが私と歳三さんのはじめの出会い。
「おい!」
ビクゥッ!!
「はい…」
見惚れていた私にさっきまでの睨みをきかせた顔をそのまま向けた。
「怖かったろ、平気か…」
「え……」
団子屋の椅子に座って涙目になっていた私の頭を御武家様は無表情のままぽんっと軽く叩く。
「女将さん、これで新しい団子この子にやってくれ」
自分の懐から出したお金を置いてそのまま御武家様は無言で去っていきました。
その後私は家に帰ったら案の定ばあやに怒られました。
でも…でもどうしてもあの時会った御武家様にまた会いたくて、何だか気になってしまいせめてお礼だけでも言いたく次の日、お琴のお稽古を抜け出しまたあの団子屋の周辺に行きあの御武家様を捜しました。
でもなかなか見つけれなく日も暮れて来て、諦めようとした時・・・・
「こら総司ぃぃ!待ちやがれ!」
「嫌ですよ!一輪咲いても梅は梅〜あっはははは!」
私より五つ六つぐらい上のお兄さんが本のようなものを持って私の横を駆けて行ったのです。でもそれ以前にこの声はこの前聞いた……
「ははっまた総司にやられたなトシ」
「くっそ!総司の野郎良い歳してまで俺の句集をっ…」
間違いなく、あの時の御武家様でした!
「総司もそのうち飽きて帰ってくるだろう。さ、稽古を続けよう!」
二人は中の道場に入って竹刀を持って打ち合う。力強く竹刀を振るうあの時の御武家様が格子から漏れた夕日に照らされ汗がキラキラ光って逞しい男らしさに私は見惚れてしまいました。心臓の音が大きく速くなっていくのがわかる。私はきっとこの方に一目惚れしてしてしまったのでしょう。
ふと、気が付くとさっきの本らしきものを持ちさったお兄さんが戻ってきました。
「あれ?君どこの子?今は大事な稽古の最中だから、危ないからあんまり近寄っちゃ駄目だよ?怪我しちゃうからね。」
「あっ…は、はいごめんなさい…」
「うん。もうじき暗くなるから気を付けて帰るんだよ?」
「はい…あっ、あの!」
「ん?」
「今…あそこで稽古してる…若い方のお兄さんはなんて言う方何ですか?」
「あのお兄さん?あの人は土方歳三。この隣の家の人だよ。それがどうかしたの?」
土方…歳三…
土方歳三…
どこかで聞いたことが…
「あっ!」
「?」
『この間父様に告げられた私の婚約者…武家の…土方歳三…』
あの人が私の婚約者・・・
「君大丈夫?顔赤いけど」
「はひ!だだ大丈夫…でふ」
気をつけて帰るんだよとお兄さんの声を後ろでに聞きながらふらふらと私は家路を辿る。
あの方が私の婚約者・・・
将来の旦那様…………
ウキウキと家に帰り案の定またばあやに怒られ次の日から私は花嫁修業に専念した。
〜〜〜〜〜
それが2年前の歳三さんとの出会い。私の初恋。
歳三さんはきっと覚えてはいないだろうけど。
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