天使と悪魔 1/1


ここは人間界。

午前の暖かな日差しが世界を照らし、小鳥達が元気に鳴いています。

そこに真っ白な少し小さめの羽が生えた天使がやってきました。

「えへへ、二時間並ばないと買えない『スイーツ島田』の幻のシュークリームがやっと買えました!」

シュークリームが入った紙袋を持ちながら幸せそうに微笑んでいるのは準天使の千鶴ちゃんです。
天使の階級は一番上から、

大天使
聖天使
準天使

の3つの階級に分かれています。
階級が大きい天使ほど羽の大きさや、使える力にも差があり、また使命も違ってくるのです。
千鶴ちゃんは準天使なため人間界で亡くなった魂を回収するのがお仕事です。
しかし、たまには息抜きも許されるため今日は人間の姿に変身して前から気になっていた有名なお菓子屋さんのシュークリームを買いに行って来ていました。

「大きな木の上で早速食べよう」

小さな羽をパタパタさせ、真っ白なふわふわしたワンピースを揺らしながらどこかに丁度いい座れそうな木はないかな〜と空を飛んでいました。

「ねぇねぇ、そこの可愛い可愛い天使さん紙袋なんか持ってどこ行くの?」

「きゃあ!!」

現れたのは天使の天敵、悪魔の沖田さんでした。

悪魔は人間の悲しむ事をするのが大好きな生き物で、いつも天使達の仕事を邪魔しようと企んでいます。


「そんなに驚いてくれて嬉しいなぁ。千鶴ちゃん」

「お、沖田さんっ…今日は何しに来たんですかっ!」

悪魔の沖田さんは当然天使の仕事を邪魔しようとなにかと天使の千鶴ちゃんの目の前に現れ千鶴ちゃんのお仕事を邪魔します。そのためいつまでもノルマを達成出来ない千鶴ちゃんは準天使のままで、天界ではおちこぼれでした。
そんな因縁もあってか千鶴ちゃんは沖田さんを睨み付け自分の強さをみせようとしますが沖田さんには全く相手にされません。


「そんなクリクリしたおめめで睨まれても痛くも痒くもないよむしろ虐ぎたくなっちゃう。そんなんだからいつまでたっても準天使のままなんだよ」


誰のせいですか!、と叫びたくなる感情を押さえ込み、千鶴ちゃんは言います。

「今日はお休みの日なので魂回収のお仕事はしません!あっちに行って下さい!」

「今日はお仕事を邪魔しに来たんじゃないよ。千鶴ちゃんに会いにきたんだ」

「私に…ですか?」

何の用だろう?あの何かと会えば仕事を邪魔し、お話といえば毒しか吐かない沖田さんが私に用?
千鶴ちゃんは悪魔の沖田さんに疑心暗鬼に何の用かと聞きました。

「う〜ん。僕の用は後でいいとして、千鶴ちゃんのその紙袋の中身が気になるんだけども。何が入ってるの?」

「これ…ですか?」

「うん!」

ふと、千鶴ちゃんは考えます。今言ったらこのシュークリームは横取りされるのではないかと・・・

「これは…」

「これは?」

「……これは、なんでもないんです!!」

びゅん、と逃げようと全速力で羽をバタつかせて羽ばたきますが、一枚も二枚も上手の沖田さんに腕を掴まれ断念されてしまいました。

「コラ千鶴ちゃん」

「きゃ、」

「逃げられると思った?」

「放して下さい〜」

沖田さんは千鶴ちゃんを後ろから抱きすくめ顔を覗き込みます

「ていうか千鶴ちゃん酷くない?用件言う前に逃げるとか。悪魔より酷いよね」

「なっ!ちがっ」

「違くないよ。でもその袋の中身僕にくれたら許してあげる」

「えぇ!?」

このシュークリームは苦労して手に入れたのだ。正直あげたくない。でもあげないとするとこの極悪非道悪魔の沖田さんになにをされるか…
でも…でも……

千鶴ちゃんが悩んだあげく出した答えは、


やっぱり逃げる。

バタバタバタっっ!!

「ちょっと千鶴ちゃん。君学習能力ないの?ていうか僕君を抱きしめてるんだから逃げれるわけないでしょ馬鹿なの?」

「ううっ〜〜〜お願いです放してください〜」

千鶴ちゃんはバタバタ暴れますが無謀なこと、がっしりと沖田さんの腕に捕らえられてます。

「もう許さないし離さない。千鶴ちゃんがその袋の中身くれるまでこのままだから。」

「そんなっ…」

千鶴ちゃんは大きな目に涙を浮かべ沖田さんを恨みがましき目で見つめます。沖田さんはそんな千鶴ちゃんを気分よく上から覗き込みます。

「わかりました……この袋の中身差し上げます…」

「観念したの?」

「…はい。あの、でもその…よろしければ半分こにしてほしいなと…」

「ん〜〜〜どおしよっかな〜」

「お願いです!それ買うのに二時間も並んだんです!楽しみにしてたんです!」

「……そこまで言うならいいよ」

「ほんとですか!ありがとうございます!」

「ただし千鶴ちゃん。条件があります!」

「え……」

「欲しいなら僕のほっぺたにキスして。そしたら半分あげる」

「えええええぇぇ!!!」

「ちゅーして。ね。」

「だめですよ!天界の掟【第128条・悪魔と口付けしてはならない】って!」

「僕は魔界の者だから関係ないもん。それに口付けって言ってもほっぺだよ?だいじょうぶ、だいじょ〜ぶ!」


「でも、だけど…沖田さんは悪魔さんで、私は天使で…」

「禁忌を犯したわけじゃないからいいんじゃないかな?」

「掟とか重罪とかじゃなくて私の気持ちの問題も………」

「僕は嫌?」

沖田さんは千鶴ちゃんを自分と向かい合わせにしてじっと翡翠色の瞳で見つめ、千鶴ちゃんは何もかもとろけていくような感覚にとらわれました。
ふるふると首を横に振ります。

「いいの?」

「はい……」

「じゃ、はい」

ずいっと左頬を千鶴ちゃんの口元に出し合図をだす。

「どーぞ?」

ドキドキドキドキ


「失礼します…」

そろ〜〜

ちゅっ


「うん。ありがとう」

その時、にっこりと笑った沖田さんの笑顔が悪魔のはずなのに千鶴ちゃんはとても素敵に見えてしまいました。

「はい。」

「ところでそれ中身何?」

「シュークリームです」

「僕甘いもの大好き。千鶴ちゃん食べさせて」

「はい…」

若干照れながらシュークリームを二つにちぎって沖田さんの口に運びます

「あーんって千鶴ちゃん!クリーム垂れてる!」

「ああっ!すみません!」

「あーあ。千鶴ちゃん手クリームだらけじゃない」

「あ……」

「しょうがないなぁ」

ぺろり

「ひゃわ!!」

沖田さんは千鶴ちゃんの手に付いたクリームを舐めとります。

ちゅぱちゅぱ

「きゃあ!何する…」

「綺麗にしてあげてんでしょ!」

恥ずかしい!恥ずかしい!

「はい、綺麗になった。シュークリームご馳走様」

「は、ひ…」

沖田さんにさんざん舐めてしゃぶられた千鶴ちゃんの指はすっかりふやけていました。


「それじゃあ僕はかーえろっと千鶴ちゃんまたね」

「あ、」

嵐のように去っていった沖田さんはもう姿は見えませんでした。

「なんだったんだろう…」

向こうは悪魔でこっちは天使。決して許されない、越えてはならない高い境界線。
なのにこんなに胸の高鳴りが止まらないなんて・・・・


沖田さんのいつもの悪魔のような笑が、今日は天使に見えてしまいました。



END


あとがき

別に悪魔と天使ネタじゃなくても良かったかも。
スイーツ島田は島田さんが人間界でパティシエやってます☆
なんか天使の階級は「神風怪盗ジャンヌ」からもらいました
シュークリームとられて恨みがましき目で沖田さんを見る意地らしい千鶴ちゃんが描きたかった。








《 前 ‖ 次 》



戻る
TOP


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -