浦島歳三 2/3
「ん?誰だ?お前どっからきたんだ?」
永倉が浦島歳三に気付く。
「新八、彼は人間のようだ。俺達魚とは違う」
「に、人間!?マジか!」
「しんぱっつぁん気付くのおせーよ〜」
「確かに俺達とは違うな」
浦島歳三は先から人間の自分が驚かれるのは無理はないと思いましたが、『いや、お前らも見た目人間だろ。絶対魚じゃねーだろ』と、少々疑問に思っておりました。
「ま、人間だからって差別はいけねーよな!悪い奴ばっかじゃねーみたいだし!俺はハゼの永倉 新八だ!よろしくな」
「俺は見てのとーりエビだ。原田 左之助ってんだよろしくな」
「…ヒラメの斉藤 一だ…」
「浦島歳三だ。よろしくな」
「で?なんで人間が竜宮城に居るんだ?千鶴が連れて来たのか?」
「はい、私が人間の子供に苛められていた所を助けて頂いたんです。なので恩返しに竜宮城でおもてなしして差し上げようと」
「千鶴…お前、子供に苛められたのか…」
「……はい」
「でも千鶴、竜宮城に来ちゃたけどさ乙姫に会わすのか?」
平助がたずねる。
「うん!私を助けてくれた人だからきっと喜んでおもてなししてくれるよ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
魚達全員が黙る。
「おい、先から乙姫って聞くといい顔しねーが乙姫っつーのは何者なんだ?」
浦島歳三が先からの魚達の反応が気になり問う。
「まぁ、合えばわかるさ」
「だな、気に入られることは絶対ねーがな…」
「?」
新八と原田が答えるがさっぱり意味がわからず、乙姫様に会うのを少しためらう浦島歳三であった。
「ここが、乙姫様の居るお部屋です。」
千鶴が扉を開けると、その先には立派な階段があり、床には沢山の綺麗なサンゴや真珠の入った貝が置いてありました。階段の先には透き通るような薄地の布のカーテンが何枚も重なっておりました。
そしてカーテンの向こうに居るのは…
「千鶴、二日間もどこ行ってたんだ?」
「薫!」
『…薫?乙姫じゃねーのか?つーか…』
「おい、なんでこいつが二人居るんだ?」
浦島歳三が指しているのは隣に居る亀千鶴と階段の上の装飾品が沢山付いた椅子に座って、きらびやかな着物を着いる乙姫様。着ている物は違えど顔は瓜二つだった。
「ごめんなさい薫…陸に上がって日向ぼっこしてて…ずっと眠り込んじゃって…人間の子供に見つかって苛められてたんだけど、この方が助けて下さったの!」
「その人間が…?」
「うん!あっ浦島さん紹介します。この竜宮城を納めている乙姫様の薫です!私とは双子の兄妹で、訳あって薫だけこの家の子に養子として預けられたんですが、その後いっぱい努力して乙姫様、つまり竜宮城の女王様にまで登りつめたんです!自慢の兄なんですよ!」
「兄?…って男か?」
「え?はい」
千鶴と乙姫様が双子だというのも驚きだかこの美人の乙姫様が男だという事実も驚きだった。
『なんで男が女王様やってんだ…つーか実の兄妹なのに何で妹が亀で兄が人間なんだよ』
「薫!私を助けてくれた浦島歳三さんに恩返しがしたくて、竜宮城に連れて来ておもてなししようと思って連れてきたの!」
「いやだね」
「なっ、なんで!?私を助けてくれたんだよ!」
「千鶴、地上には行くなっていったろ。それと人間は信用出来ない。その人間は今すぐ処刑する」
「なっ!駄目だよ薫!」
「おい、なんで俺が処刑されなきゃなんねーんだ、むしろお前の妹処刑しろ、ここに来る途中俺殺されかけたぞ」
「わ、私殺そうなんて思ってません!かっ、薫!浦島さんを処刑なんてしたらまた地上にいっちゃうから!」
「千鶴が俺に逆らうんだ…いいよ、お前は一週間外出禁止。もし逆らったら二週間にするからな」
「や、やだっ!私外出たいよ!」
「おい、やりすぎぞ乙姫!」
「ほんとだよね、シスコンもたいがいにしなよ。」
「針千本とタコは黙ってろよ。だいたいお前らが千鶴の側に居るだけで危険なのにどっかの鮫の一族の頭領とかふざけた奴が千鶴を狙ってるし、これ以上千鶴に男は近寄せられない、人間なんてもってのほかだ。死ね」
散々な言われようであるが浦島歳三は一つ気になった事があった。
『鮫一族の頭領…?』
「お前サメに狙われてんのか?」
「あ…は、はい。実は…」
「我が妻よ、迎えに来たぞ!」
「!!!!!」
現れたのはサメ一族の頭領、風間 千景。そしてその後ろにいる二人は風間千景に仕える同じ鮫一族の不知火と天霧。
彼風間千景は千鶴を気に入り、嫁にしようと度々竜宮城に現れ結婚を迫りますがいつもシスコンの乙姫様や魚達に追い払われそれでもしつこく千鶴に求婚していました。
「げ、出た。」
「婚活鬼」
「ロリコン」
「黙れ、小魚が。フッ千鶴、迎えに来たぞ恥ずかしがっていないでさっさと俺の嫁なれ」
「いっ、嫌です!お嫁になんか行きません!」
「強情な…照れなくてもいい。素直に嫁にくれば可愛がってやるものの…」
「照れてないし、心の底から嫌なんです。」
「おい、ロリコン鮫とっとと竜宮城から出てけ。そしてくたばれ」
「フッ、乙姫。お前が千鶴の実の兄でなければこの竜宮城ごと跡形もなく消してやるとこだか、ここは我が妻の故郷でもあるし唯一の千鶴の血の繋がりを持った者だから見逃してやるが口を慎むことを知るがよい。」
「お前に口を慎むくらいなら竜宮城が滅んだっていいよ。」
「おい、お前の兄貴とんでもねー事言ってんぞ。大丈夫か竜宮城」
「大丈夫です!あんな事言ってますけど薫は誰よりもこの竜宮城の事を考えてるんです。」
「はっ、貴様自分の故郷を捨てるのか。仮にも女王として一国を納めている者の言葉とは思えんな。」
「故郷とか国の奴らとかどうでもいい。俺は千鶴さえ居ればいい。」
「薫!」
乙姫様は基本妹、千鶴を中心に世界が回っているのでぶっちゃけ竜宮城が滅びようが、国の民が死のうがどうでも良い事でした。
「おいおい!俺らの事はどうでもいいってのかよ?あんまりじゃねーか。」
「そーだよ!俺ら民の事も考えろ!」
「それに千鶴ちゃんは僕のものだしね。」
「いやいや、千鶴は俺のもんだぜ総司。なぁ千鶴?」
「えっ!あ、あの…」
「おい総司、左之何を言っている雪村は誰のものでもない。」
「何?一君ももしかして千鶴ちゃんの事好きなの?だめだよ。千鶴ちゃんは僕がツバつけてあるんだから。誰にも渡さないよ。」
「総司こそ何言ってんだよ!千鶴は総司とは付き合ってもねーだろ!それに千鶴の事一番知ってんの俺だし…」
「平助、お前はただの幼なじみだろ?一番脈がないパターンだから諦めろ。千鶴は俺のだ。」
「左之さんは千鶴の事どうせ性的対象としか見てねーだろ!この歩く18禁!!」
「あぁ!?平助、人を変態扱いしてんじゃねーよ性的対象じゃなくて女として見てんだよ。ガキは黙ってろ。」
「おじさんに言われたかねーよ」
「おじさんじゃねー、大人だ」
「僕は千鶴ちゃんの事女の子としても見てるし、もちろん好きな娘に対してはムラムラもあるけどね」
「沖田さん!!」
「総司、お前は黙っていろ。話がややこしくなる。」
「なに?一君だって男なんだから好きな女の子にムラムラする事だってあるでしょ?あっ、一君はムッツリだからちゃんとムラムラしてるか」
「ムッツリの何が悪い」
「あ…認めた…」
「おい、さきから黙って聞いていれば何を勝手な事をぬかしている。我が妻はお前ら下等生物になんかやらぬ。俺様と夫婦になり、子を生む運命を背負っているんだ。諦めろ。」
「お前こそ何馬鹿な事言ってんだよ相手にされてないの早く気付け。頭沸いてんのか?千鶴は誰にも嫁に出さないし男女交際なんてもってのほかだ。一生俺と二人で暮らしていくんだよ。」
「ここまでくると最早シスコンを越えるよね。キモイ。」
千鶴を愛する者達の言い争いを遠くから呆れて見る浦島歳三。
『俺完全に空気だな。』
《 前 ‖ 次 》