王様と私 3/3


「あっ、王様。お口にソースが付いてます」

「千鶴ちゃんふいてー」

爽やかな王宮の朝。真っ白なテーブルクロスが敷かれた長い食卓で王様は朝食中だ。その隣で紅茶を煎れているのは昨日王様専属召使いになった新米メイドの雪村千鶴。

千鶴は清潔なナプキンで王様の口元を拭く。


「何させてるんだテメェは!」

ゴンッ
「あたっ。」

現れたのは元王様の世話係土方歳三。

「痛いなぁ何ですか叩かないで下さいよ」

「総司!こいつを専属メイドにする事は許したが何恋人同士みてーな真似させてやがる。」

「口拭いて貰っただけですよ。」

「それじゃねぇ!お前ら昨日の晩同じベットで寝ただろ!!」

「え!なななんで知って…!」

「千鶴の部屋にするはずだった部屋が荷物一つ無かったからな。もしやと思ってお前の部屋に行ったら千鶴の荷物が置いてあるし脱いだネグリジェが置いてあるしテメェ等昨晩何してた!?」


「別に土方さんが想像してるようないやらしい事はしてませんよ。文字通り同じベットで寝ただけ。それよりこんな朝っぱらから大声出さないで下さいよねうるさい。」


土方と沖田が言い合いしてる最中、千鶴は必死に今の沖田の言葉を訂正したかったがこれ以上話に水をさすと大変な事になりそうなので我慢した。



『土方さん!昨日は大変だったんですから!昨日は・・・・・・』


〜〜〜〜〜〜〜〜
【昨晩】


「千鶴ちゃん、なんかわくわくして眠れないね。」

何故わくわくするのかは聞かないでおいて、王様が眠れないと言っているのだから召使いとしてはと何か対策を考える。

「羊を数えると眠くなると聞いたことがあります。」

「羊ね…じゃやってみる。」

沖田は目をつぶる。

『羊…羊…土方…土方…土方さんの死体が一体。「ザシュ」土方さんの死体が二体。「ドスッ」土方さんの死体が三体。「ズシャ」土方さんの死体が…』


「ダメだ千鶴ちゃん。もっと目が冴えちゃうよ。」

「そうですか…子供の頃に父様に聞いた方法なんですが…」


「う〜ん枕が悪いのかなぁ…」

「枕ですか?」

「新しいのに変えたんだけどね、どうも合わなくて。」

「前使ってたのは?」

「捨てちゃった。猫がボロボロにしちゃったんだ」

「そうですか…」

それならばどうしようもない。何か対策はないかと頭を悩ませていると。

「良いこと思いついた!千鶴ちゃんが枕になればいいんだ!」

「へ…」

『私が……?』

「千鶴ちゃんの胸柔らかそーだね」

「……………」

ぽすっ

「ひゃあ」

スリスリと千鶴の胸に頬擦りをしながらぎゅうぎゅうと抱き締める。

「やめてくださっ…!」

顔を真っ赤にしながら沖田の肩を押し抵抗するが所詮は男女の違い。力技では適わない。

「ちーづるちゃん!これは、お・う・さ・ま・め・い・れ・い!」

ぷにっと千鶴の頬を人差し指でつつき黙らせた。
これは命令なのだと。逆らったら何をされるのかわからないこの笑顔で千鶴は恐怖感に襲われる。

「ん〜、あったかくて柔らかい」

満足げに千鶴の胸に擦り寄りながら二人は眠りにつくのだった。


〜〜〜〜〜〜〜〜

と、昨夜はこんな感じでこの王様に逆らってはいけないと新たに教訓を覚えた千鶴だった。
ものすごく土方に告げ口したかったが諦める。


「いいか総司!何かあってからじゃ遅いんだぞ!お前は一国の王なんだから少しは緊張感を持て!自覚しろ!」

「そんな怒ってばっかだと血圧上がって死にますよ。」

ぎゃあぎゃあと喧嘩している二人を見てこの二人は仲が良いんだな〜と思ってしまう千鶴だった。


「あっと、おい千鶴!お前は仮にも王様専属召使いになったんだから今日は王宮の事を勉強してもらうぞ。」

「王宮のお勉強?」

「まだ召使い全員の顔も知らねーだろ。城ん中も案内されただろーがそんなに把握できてねーだろうし。しきたりや何をどうするのかも分かんねーからな。」

「え〜千鶴ちゃんは今日は僕と遊ぶんだから必要ないよ」

「うるせえ総司!お前は黙っとけ。」

「は、はい!よろしくお願いします!」

「まずは人物紹介だな」




***********


土方に連れられて来たのは王宮の庭、王宮からは少し離れた石畳の広場。

「ここは兵士達の鍛練場だ。仕える兵士は大体300人くらいだな。こいつ等は普段城の見張りや王様の護衛なんかをしてる。戦争なんかになったらもっと国から集めるがな。…つか総司何でてめぇまで居る?」

「土方さんと千鶴ちゃんの二人きりは危ないでしょう?護衛。」

「…………」

「あの、土方さん。なぜいきなり兵士さん達を紹介させたんですか?」

「あぁ、総司と昔からの顔馴染みっつうか、王宮の中でも位が高い奴らが近藤さんと俺の他に兵士にいるんだよ。」

「くらい…」

「そうじーーー!!」

後ろから聞こえてきたのは元気な少年…いや、一応青年の声。

「平助」

「丁度良い所に来たな。」

「おっ!総司じゃねぇか久々だなここに来るなんて!」

「あ、どうやらいつものメンバーがおでましみたいだね」

やってきたのはこの王宮に仕える者でもっとも位が高い召使い達。
の、兵士組。
藤堂平助、原田左之助、永倉新八、斉藤一 。
彼等は先祖代々この王家に仕えているためとても信頼があつい。又幼き頃からまだ総司が王子の頃から一緒に剣術や政治の勉強を学んできたため兄弟同然な関係なのだ。

「最近忙しかったからね。」

「なー総司剣術相手してくれよ!最近してなかっただろ〜」

「おっ!じゃあ俺の相手も頼むわ!総司なまってんだろ」

「対戦となりゃこの新八様に決まってんだろ!一番は俺だ!」

「このメンバーで一人一人相手していたら流石に総司も体力が持たない。」

「なにそれ。一君僕を甘く見ないでくれるかな?」

なんだか賑やかだが一人蚊帳の外な千鶴は呆然と見守る。

「お!なんだ?可愛い子がいるな新入りのメイドか?」

千鶴に気づいたのは女心を隅々まで理解する男、原田左之助。

「はっ…はい!雪村千鶴と申します!」

「わー女の子だ!」

「かっわいいなぁ〜初々しいっつうかなんつうかこう純粋無垢な感じがたまんねー」

「しんぱっつあん親父くせーよ!つかキモイ!」

「新八の言う事も分かるな。居るだけで華がある感じが。いくつだ?」

「じゅ…16です。」

「じゃあもう結婚しても法的にいけるな。どうだ?今夜一緒に食事でも行かねーか?」

「左之さん口説くなよ…」

「ちょっと左之さん!この子僕のだからダメだよ。触らないで!」

「ひゃあ!」

「……………」

「何だよ総司…僕のって…」

「千鶴ちゃんは僕専属メイドになったからね。だーめ!」

後ろから千鶴をぎゅうっと抱き締め千鶴の頭に顎を乗っけて満足げに公表する。


「「「「はあああああああああ!!!??」」」」


「何だそれ羨ましい!狡いぞ総司!」

「いいな!千鶴の独り占めかよ!」

「いや…てか専属メイドって…新人だろ!?どういう事だ土方さん」

「仕方ねぇだろ総司が聞かねーんだから。こんなに気に入られたみてーだし近藤さんも許可出したしな…」

「あの人総司に甘いからな…」

「へ〜じゃあゆくゆくは千鶴は女王様になるのか?」

「へ?」

鳩が豆鉄砲とはまさにこの事。
女王様…?

「何言ってんだ平助?」

「え、や…二人は恋人同士とかじゃねーの?俺にはそう映るんだけど」

確かに…端からみたらまるで恋人同士のようだ。
だけど総司の場合一国の王なわけで、簡単に結婚など決められは…

「うん。そうだよ未来の僕のお嫁さん」

「ええっっ!」

一番驚いたのは千鶴だ。

「えっ…まじか」

「おい総司!専属メイドまでは許したが結婚は…」

「僕はよく知らないよその国のお姫様より一緒にいて楽しくてあったかくなれる千鶴ちゃんの方が断然いい。可愛いし照れ屋で優しくて。一生懸命な千鶴ちゃんが好き。」

「お、王様…」

「だけどなぁ総司、身分が…」

「身分なんてどうでもいいじゃない。シンデレラも元は町人だし。」

「童話を持ってくんな!!」

「まぁ確かに国中の娘を集めろ〜的な展開だったな。」

「ありっちゃありだな。」

「つか総司そんなに千鶴に惚れてたのか?」

「こんなに僕をゾクゾクさせてくれる女の子他にいないよ。」

「あっ…あの私…」

いきなりな告白で千鶴はついていけず、そもそも人物紹介してくれるはずが総司との結婚話になり顔を真っ赤にしながら総司の腕の中で現状を整理する。


「総司がそこまで本気なんて…千鶴の事可愛いと思ったけど俺諦めるわ。総司頑張れ!」

「えぇ!?あの…ちょっ、」

「だな、俺も千鶴には運命感じたが、そこまで千鶴を想ってんなら潔く身を引くぜ。」

「原田さ…」

「くっ…出会って数秒で失恋とは悲しいな…今夜は俺達の失恋パーティー&二人の婚約祝だ!飲むぞーー!」

「永倉さ…」

「雪村…」

「あっあの斉藤さんっ…これは何かの冗談ですよね?」

「幸せに…なれ…」

「ええ!あのー話聞いて下さい!私はっ…」

「千鶴ちゃん!」

くるんと肩を掴まれ向かい合わせになるように回された。
沖田は千鶴の前に膝まずき、千鶴の手をとり誓う。

「君を世界中の誰よりも幸せにするよ。僕のお嫁さんになって下さい。」

「言ったぜ総司ー!」

「それでこそ男だ!!」

「見せつけんなー」

「あのっ…ですから私は…」

「千鶴ちゃん。末永くよろしくね。」

「!?」


「いや〜新しい王妃誕生だな」

「国中が喜ぶぜ〜」

「後継ぎ問題とか噂されてたけど解決したな!」


「皆さん無視しないで私の話を聞いて下さい!」





こうして、王様とメイドの恋は結ばれ、一月後に結婚式を挙げ国中に祝福されました。
二人はこれからも末永く幸せに暮らしましたとさ。
めでたしめでたし。





END


あとがき

久々の更新\(^q^)/
最後カオス!
千鶴ちゃん強制的に結婚←
時代は18世紀頃のヨーロッパを舞台としてます。
登場人物は思いっきり日本人だがw
名前変えるわけにはいかんし…もう最初の予定から大分ずれてて何書きたいか分からなくなりました。
ちなみに、沖田さんが眠れなく土方さんを数えたシーンはぎ●たまからネタ頂いた(笑)



●裏設定。

・隣の国(西)では風間が王様やってます。
沖田の国よりやや大きい。当然仲悪いため戦争もチラホラ。

・山崎さんは庭師件、弓の使い手。

・総司の姉、ミツも五年前までは王宮で暮らしてたが、嫁に行った。

・総司、千鶴結婚後、千鶴ちゃんはちゃんと沖田さんの事好きになります。でもやってることはメイドと変わんない。たまに薫が城に乗り込んで来て沖田とケンカ。


などなど。
読んで下さり有難うございました!








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