月隠れの晩に 2/2


「で?噂のお姫さんはどうだったんだよ?」

土方の寝殿にて、都の五星が集まって碁や鷹狩などをするのは日常だ。そして今日もごく当たり前に宴が開かれていた…


「うん。暗闇ではっきりとは見えなかったけど可愛い子だったよ 」

「へー総司が女の子に興味持つなんてよっぽどなんだな」

「へ〜そんなにべっぴんなら俺も一目お目にかかりてーな」

「左之さんなんかに見せないよすぐに世継ぎができちゃう」

「左之さん手早いくせに結婚はしてないよな女の子になんか言われねーの?」

「ん?そこは甘い言葉を二つみっつ囁いてごまかすんだよ」

「さいてーだ」

「で?総司はどうすんだよそのおひめさんに一目惚れしたってわけか」

「一目惚れじゃないですよただ可愛い子だなって山崎君に話したら驚いてて…文出せってうるさいからとりあえず文書くよ」



儚げな表情が羽衣をなくした天女のようだった。
今にも消えそうで、このまま手元に捕らえてしまいたかった。ただそれだけだ――――・・・・・・



**********

「まぁ、あの都の五星の沖田の内大臣からの文だなんて」

噂の姫君の寝殿。

「都の五星…沖田の内大臣…?」

「姫様知らないのですか?」

「父様が前にお仕事のお話をしていて沖田の内大臣様の名前が出てきたことはありましたけど…都の五星ってなんですか?」

「・・・・・・・・」

千鶴姫は教養もあり、常識的で良くできた姫君だがこういう色事にはうとく、女御達はそんな姫君を心配していたがまさかあんなに有名な都の五星、五人を知らなかったとは思わなかった。

女御は都の五星達の知名度やどんなに美麗なのかを話した。


「そんなに有名な方なんですか…でもなんで私に文なんか?」

「それは姫様の噂を聞きつけてお出しになったんでしょう。姫様は今とても美しい姫君だと噂がたってますからね。」


都の五星よりも私は昨晩の月の精さんが気になる……
闇夜に包まれて見えなかったけど素敵な声色で、とても聡明な方なんだろうな…






「着いた。」

千鶴姫の寝殿。

「あ〜もーここまで来るのに疲れた!!」


さっき、沖田の寝殿にて・・・


「総司千鶴姫んとこに行くのか?」

「そうだけど…ていうかなんで左之さんが僕ん家居るの?」

「ん?いや〜総司が初めて女に興味を持ったなんて驚いてよ。そんなお前になにか力になれねーかってな」

「力に?」

「そ!女の口説き方やら抱き方やら」

「左之さんにだけは教わりたくない…それに教えてもらわなくても僕だって理解してるよ」

「お前女が何で喜ぶか知ってるか?」

「・・・・・・・・・夜の営み」

「ばっかちげーよ!!歌だよ歌!甘い言葉を入れて読んでやれば女は喜ぶんだよ」

「歌…」

「とにかく俺が手本を見せてやるから見て勉強しろ!」

「はぁ!?」

「手当たり次第に…おまえんとこの更衣で…」

「ちょ…ややこしくなるから止めてよね。」

「まぁいいから!行くぞ!」



それから三時間弱、左之助のただ口説いている様を見せつけられたのだった。


「何で僕が他人のイチャついてる様を見なきゃいけないのさ」

なんとか左之助と更衣の『二人の世界』から抜け出し、千鶴姫がいる寝殿にたどり着いた。
庭の小柴垣をかき分け、前回千鶴姫と話した西庇の前に来た。

「ここからどうしよ」

文を出しているはずだから沖田が来ることは知っているはずだ時間が時間なのできっと千鶴姫は眠っているはずなのだが、沖田は他人の事などなりふり構わずなので相手の都合は考えない。きっとあまりに遅い時間なため、千鶴姫は眠ってしまったのだ。中は真っ暗である。


「いいよね。」

と、勝手にひさしから中に入り込む。几帳をよけると御帳台の中に長い髪を散らばせ健やかに眠る千鶴姫の姿があった。
初めてまともに千鶴姫を見た沖田は御帳台の中に入り、あまりの美しさに触れたくなり手をのばし甲で頬を一撫でした。
すると振れられた感覚に驚いて千鶴姫の体がビクンッと跳ねた。

「ひゃっ…」

「あ、起きちゃった?」


目を開けると見知らぬ人間が目の前に居た。

「だれ…」

恐ろしくて千鶴姫は声を強ばらせ、震える。

「文出したんだけど。僕だよわかる?」

千鶴姫はこの声に聞き覚えがあり、八ッとする。忘れもしないあの月明かりのない薄暗い夜に現れた自らが光り輝く人…

「月の精さん!」

「覚えていてくれたの?」

「私…あの夜の日からあなたが忘れられなくて、いらっしゃるのをずっと待ちわびておりました。また来て下さるなんて嬉しいです」

「まいったな…」

思いもよらぬ歓迎っぷりで嬉しいが、こんなにも千鶴姫に好かれていたとは口では何ともないような事を平助達に言ってしまったがこんなに好意的だと自覚してしまう。

「あっ…ごめんなさい…はしたないですよね、女の方から来てほしいだなんて…」

「そういう意味じゃないよ。僕も会いたかった…君に」

「月の精さん…」

互いの想いが通じ合い、甘い雰囲気が流れる中、沖田は千鶴姫の頬を撫でる。

「口付けしてもいい?」

「月の精さんにならいくらでもっ…!!」

感情にまかせ、二人は夜を共にした。



*************


朝、御帳台に朝日が差し込む。

「スゥ…スゥ…」

「可愛いなぁ」

昨夜の夜の営みで疲れきってぐっすりと眠ってしまっている千鶴姫の寝顔を覗き込み、沖田は髪を撫であげる。
朝日ではっきりと見える千鶴姫はやはり可愛らしく、もう一度抱いてしまいたい勢いだった。

「んぅ…」

「起きちゃった?」

「あ…」

昨夜の事を思い出し顔を赤らめる。

「お、おはようございます…」

「おはよう。痛くない?」

「痛くないです…」

「良かった」

千鶴姫は気付く。最初に出会った時は声だけだった。昨夜は目の前まで近付いたが暗闇であまり顔は見れなかったのだ。そして今は朝、格子から射し込む光が沖田の顔を鮮明に見せた。

初めてまともに顔を見た…

「かっこいい…」

「ん?」

「あっ…えと、あの…」

「お顔が真っ赤だけど何考えてたのかな〜」

「!!っ…月の精さんは意地悪です…」

「・・・・・ねぇ僕達晴れて結ばれたことだし、そろそろ君に名前で呼んでほしいんだよね」

「名前…?『月の精』さんがお名前ではないのですか?」

「…うん、違うよ。本当の名前は沖田総司。管制は内大臣」

「沖田の内大臣…」

それは千鶴姫にずっと文を送り続けてきた人で、まさか恋い焦がれてた相手と名前しか知らない拒み続けてきた相手が同一人物だったなんて思いもよなかった。そして今初めて事実を知って千鶴姫は運命なんだと悟った。

「文…ずっと送っていて下さったのに…ごめんなさい…月の精さんだと知っていたらすぐにでも返しの歌を送りましたのに…」

「名前言わなかった僕が悪いし、僕だってお話したこともないひととなんて考えられないよ僕達はこうなる運命だったんだよ」

「月の精さん…」

「月の精じゃなくて総司って呼んでよ」

「そっ、そうじ…さん」

「千鶴姫…」

また口づけをして沖田は朝早く、自分の寝殿へと帰っていき、すぐに正式な結婚が行われ、二人は晴れて夫婦となりました。
一夫多妻な世の中、沖田の内大臣は生涯千鶴姫ただ一人だけを妻とし、いつまでも変わらず愛し合い幸せに暮らしましたとさ。




END


あとがき
平安時代パロディ沖千でした!『あさきゆめみし』がきっかけで源氏物語が大好きになり、書きたくなり書いちゃいました〜
これでも平安時代を調べて書いたのですが色々間違っている部分も多々ありますのでお恥ずかしいです(//∀//)

結婚するまでには垣間見をし、求婚の手紙(歌)を贈りやり取りし、何度も男の人が女の人の邸に通い、回を重ねると邸の中に入れてそのまま…なんですがこのお話ではすっ飛んでますね(-.-;)

あと都の五星…やりすぎた(笑)で、みんな身分良すぎ(笑)
ま、いっか☆

最後まで読んでいただいて有難う御座いました!








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