うらめしにゃあぁぁ 1/2


※『犬の祟り』の猫バージョン的な感じです。




「出たんだよ・・・・・・」

押し殺したような声である夏の夕食時、原田が言った。

「出るってなんだよ?ゴキブリなら屯所にはわんさかいるさ」

「ちげーよ平助!ゴキブリなら知ってるっつーの!俺が見たのは化け猫!」

「「「「「「「「化け猫!?」」」」」」」」

その場にいた土方、沖田、斎藤、平助、永倉、近藤、山南、そして千鶴が皆声を揃えて言う。

「昨日の晩な、風呂上がりに廊下歩いてたらよ猫の鳴き声がしたんだ。『また野良猫が住み着いちまったのか?』と思って庭の方見ても見当たらねーからそのまま部屋戻ったんだ・・・したら・・・・・」

「そしたら?」

皆緊張した面持ちでゴクリと生唾を呑む。

「俺の春画本達の棚が荒らされてた。」

「っだそのオチ!」

「クソだな!」

「左之・・・お前笑わしたいならもっとましなネタ考えろ」

「っちっげえバカやろー土方さん!俺がウケ狙いにこんな下んねー冗談つくかと思ってんのか!?」

「おい左之お!!こないだ俺が借りた人妻物は無事か!?」

「あぁ、あれは無事だったよ」

「あぁ〜良かった・・・」

「おい!しんぱっつぁん!左之さん!千鶴がっ・・・」

平助がいち早く唯一の女である千鶴の存在に思い出し二人の会話を中断させる。その言葉に原田と永倉はハッとする。

「っあ、ちづっ・・・今のは・・・」

「しゅんがとはなんですか?」

「え・・・・」

「左之・・・雪村をお前らと同じ感覚で考えるな。純粋なんだ。春画なんて知るわけないだろう」

「そっか・・・・」

「千鶴ちゃん。春画っていうのはね、ああいう下世話な男の人達が観る」

「わーーわーーわーー!総司説明しなくていいから!」

「男の人が観る?読むのではなくて・・・?」

「千鶴、食い付かなくていいから」

「つうかさーなんで春画本荒らされただけで化け猫の仕業なんだよー?」

「大量の猫の毛が落ちてたんだよそれに・・・・」

「それに・・・・?」

「眼が合ったんだ・・・暗闇に光る全身炎に包まれたような真っ青な眼が」

「きゃあああああああああ!」
「ぎゃあああああああああ!」

千鶴と平助が恐怖で叫ぶ。

「おめえら飯の時にんな話すんな!黙って食え!!」

「怖いんですか?土方さん」

「ちげえ!!」

こうして土方の怒鳴り声でこの日の夕餉は終わった。







********

その日の深夜、千鶴はうなされていた。

「うう・・・・う・・」

びっしょりと寝汗をかきながら夢をみている。

「うぅ・・・やめてください〜やめてください〜薬は・・・落水はやめてください〜」
※寝言

今千鶴は悪夢をみている。寝汗もびっしょりだ。しかしあまりにもうなされているため起きた。

「はっ!良かった夢だった〜」

ひた・・・ ひた・・・ ひた・・・

「!?」

すると・・・・・
どこからか不気味な足音が聞こえるではないか。千鶴は恐くなりブルブルと青ざめた表情で布団を被る。

おおおお化け!?幽霊!?

ひた・・・ ひた・・・ ひた・・・ ひた・・・ ひた・・・ ひた・・・ ひた・・・

  にゃあ―――


「っは・・・猫?」

どうやら犯人は猫のようだったらしい。千鶴は安心して部屋の襖を開け猫の存在を確認しようとする。

「ねこさーん」

にゃああぁぁ・・・・・

「え、」

猫の姿をみた瞬間、千鶴は凍りついた。その猫は半透明で血だらけだったから――――


「きゃあああああああああああああああああああああっっ・・・・・・・」



***********

ここは広間。今は幹部達、土方、沖田、斉藤、原田、藤堂、永倉の六人が集まり、またもや千鶴に生えてしまった猫耳&尻尾についてどうするかで会議中だ。

「ほーら千鶴ちゃん猫じゃらしだよ〜」

「きゃあ〜〜♪♪」

たしたしたし

千鶴は楽しそうに猫じゃらしで遊ぶ。

「はっ!じゃなくて!違います!何をやらせるんですか沖田さん!!」

「無意識か」

「ったく、お前は祟られんのが好きだな」

「好きで祟られたんじゃありませんぅ!!私だって嫌なんですから!」

「まぁ、状況を整理すると。お前が昨夜見た半透明の化け猫がこの寺の坊さん達曰わく、人間に苛められて死んだ猫が誰彼構わず人を祟ってお前がたまたまその標的になったと。」

「んで?その猫の祟りとやらはお前を同じ猫の姿に変えちまおうと第一段階に猫耳と尻尾を生やしたと・・・・・」

「ふっ・・・ぐずっ・・・」

「男のツボを完全に押さえてんな。俺の春画本荒らしたりそいつきっとオスだな。」

「総司。お前の念願の猫耳千鶴ちゃんが見られて良かったな」

「萌えるね♪」

「うぅっ・・・また、また他人事だと思って・・・」

「まぁ千鶴ちゃん。こんな機会めったにないし、触らせて♪」

「二回目ですぅ!!ってきゃああああああ!」

「うわぁ〜やっぱふわふわだね。耳も尻尾も」

「千鶴二回目なんだから諦めろ。おっ、ここ気持ちいいか?」

「千鶴は敏感だから触りがいがあるな・・・ん?」

「土方さんやっぱやらしいな・・・」

「ひいいいいいいいい〜〜〜〜〜〜〜!!!!」

隊士達六人皆一斉に千鶴を触り出す。


くいくいくいくい

「ま、やっぱ犬もいいが王道は猫だよな!」

「何の王道ですか?」

なでなでなでなで
くいくいくいくい

「あ〜癒やされる〜」

ゴロゴロゴロ

「ん?千鶴ちゃん喉なってる?」

「はっ!ちちち違っ・・・違います!!」

「今鳴ってたって!俺ちゃんと聞いたぜ!」

「違っ・・・お腹です!お腹が鳴ったんです!」

「・・・・・まぁ・・・そういう事にしといてやるけどよ。千鶴腹減ったのか?」

「かつお節ならあるよ」

「要りません」
ゴロゴロゴロゴロ

意地の張った千鶴を皆、微笑ましくニヤニヤ見つめる。

「にゃあ〜千鶴ちゃん。ほら、"にゃあ"は?」
なでなでなでなでなで

「ん・・・言いませんぅ」

「良い声で鳴いてみろ」

「あっ・・・原田さっ、耳噛まないで」

「ん〜?あんまり可愛いと食っちまうぞ〜〜?」
はむはむ

「やあぁぁ〜」

そう、ここは千鶴を狙う狼でいっぱいなのだ。物怪や幽霊なんかよりずっとおそろしい彼等が居る。


ごろごろごろごろ
「鳴ってんなぁ〜」

「んン〜」

「総司猫じゃらし貸して。俺もやりたい」

「ん」

「あんがと。さぁ!千鶴!ほらほら!」

沖田に借りた猫じゃらしを平助は千鶴の目の前に突き出しフリフリと横に振る。

「あっ・・・」

だが、千鶴はまだかろうじて人間。己の理性と戦うがお尻にあるキュートな黒い尻尾はパタパタと楽しそうに動く。構わず平助は猫じゃらしを振る。千鶴は眼で追う。

「千鶴〜ほぉ〜ら」

「えい!」
たしたしたしたし!

「お!じゃれた!」

己の戦いに負けあっけなく千鶴は猫じゃらしにじゃれついた。ちょっと鋭くなった爪で千鶴の手が必死に猫じゃらしを追いかける。

「可愛いな〜楽しいか?千鶴〜」

「えい!えい!えい!」

原田の声は届いていない。

「つまんないな〜千鶴ちゃんの気がそっちばっか行っちゃって」

「猫といえば猫じゃらしだしな。しょうがねぇよ」

「あ!猫といえば!そうだよ左之さんまだあるじゃない!猫といえば♪」

「あ?」

「僕ちょっと出かけて来ま〜す!」

「あいつが楽しそうに動き出すってぇとロクな事じゃないだろーが今回ばかりは期待できるぞ」

「えい!えい!えい!」
たしたしたしたし

「千鶴猫じゃらしはもういいから俺等ももっと構ってくれよ♪」

「やです!」

「ふられた・・・」

「ちーづる。猫じゃらしはお前の事は可愛がってくんねーぜ?俺を構えよ」

原田が千鶴の猫耳に優しく吐息をかける。

ふうぅー・・・

「ひん!?」

「ほら、こっち来い。可愛がらせろ」

「んっ・・・舐めちゃやあっ・・・」

原田が千鶴の頬を舐めるとそれを傍観していた者達は黙っちゃいない。







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