犬の祟り 1/2


※ホラーじゃありません






「思い当たる理由といえば一日前、原田さんと永倉さんと平助君に美味しいって評判の甘味屋に連れて行って貰ったんです。その帰りちょっとした願掛けで神社に寄って御参りしたんです。そこは犬を崇めている、要するに犬神の神社で・・・・私その犬神の像がか、可愛くて・・・・・頭を撫でたんです。そしたら・・・・・そしたらっ・・・」

「・・・・そしたら次の日おまえの頭から犬の耳が生えていたと?」

「は、い・・・多分。」

新選組屯所の土方の部屋。副長の部屋は他の隊士より多少広いかもしれないがそこに大の大人(しかもみんな男)が六人も集まれば狭いしむさ苦しい。そんな中にもう一人、唯一の女の子千鶴。千鶴を囲むように円になりみんなが見てるのは中心に居る千鶴の頭から生えている犬の耳――・・・・・・・


ことの始まりは昨日の昼。原田、永倉、平助に前々から美味い甘味屋があるから機会があれば行こうと言われていて昨日は三人共昼間は隊務がなかったため千鶴はそのまま三人に連れられ甘味屋に向かった。美味しいと評判の看板メニューの団子を食べ、帰りに神社に寄り御参りがてら「運試ししよーぜ!」と平助が言い出し誰が1番良かったか競い合いをし戯れていた。すると千鶴が守神の犬神、もとい狛犬を「可愛い!」と言い出し頭を撫でていた。
そんな出来事から一夜明け、朝起きたら千鶴の頭には現在のように犬の耳が生えていた。


「本物なのか?」

「もっ、もちろん!耳だって動くしっ」

「ほら!」と言いながら千鶴は犬の耳を動かす。

ピコピコっ

「「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」」

右に行ったり左に行ったりピコピコと千鶴の黒い犬耳は元気に動く。

「ほんとに生えてんのな」

「犬かあ…僕は猫が良かったなぁ」

「お前は猫派か…総司。」

「なに?一君は犬派なの?まぁこれはこれでいいよね」

「千鶴さ…それ生えてて特に生活困んねーだろ?もうそのままでいんじゃね?」

「耳・・・触ったらあったかいのか?」

「誰かが喋る度にその方向に向くんだな。」

「待って下さい!待って下さい!困りますよ!ものすごく困ります!これじゃあ恥ずかしくて外歩けないしっ、それにこれ多分あの狛犬の祟り・・・ですよね!?怖くてどうにかなってしまいそうです・・・・・・」

「外歩くときは笠でもかぶればいいんじゃね?問題ないだろ」

「ほっかぶりとかもいいんじゃね〜」

あはははと呑気な男六人はこの非常事態をものともせず談笑する。

「うっうぅ…皆さんは他人事だからいいけどひっく…私は怖いんですぅ!祟られて怖いんですぅ!!」

「千鶴泣くなって…」

ちょっとおふざけが過ぎたかと六人は反省する。だが本心は皆、今の会話のようにぶっちゃけこのままでもいいと思っている。

だって可愛いから・・・・・・


「ねぇ千鶴ちゃん尻尾は生えてないの?ちょっとおしり見せてごらん?確認してあげる♪」

なでなでと沖田が千鶴のお尻をいやらしい手つきで撫で回す。

「きゃあぁあああ!いやあああ!!」

「総司いいい!!」

土方の怒りの罵倒が浴びせられる。

「総司!羨ましいぞ千鶴ちゃんの丸く小ぶりな可愛いおしりを撫で回すなんて!」

「新八…本音少し隠せ」

「ひっく、うぅ…」

「で?千鶴。尻尾は生えてんのか?」

「生えてないです!」

にょき。

「わ!千鶴!千鶴!なんか出たぞ!?」

「ななななんか!なんか生えた感触がっ」

千鶴が自分の尾てい骨に触れてみる。

「尻尾生えてます!」

「このまま行くと千鶴は犬になるのか?」

「それは嫌です!」

「千鶴・・・その尻尾本物かどうか確認するからちょっと触らせてくれ」

「左之さん下心丸出しだぞ!」

「僕が確認するからいいよ」

「俺も確認する!」

「じゃみんなでって事で」

「だめですぅ!!」

「そりゃだめだろ。」

「とか言って土方さんも触りたいですよね?」

「まあな」

「土方さん!?」

「土方さんもこう言ってる事だし千鶴あきらめろ」

「なっなんですか!皆さん来ないで下さい!」

中心に居る千鶴に皆近寄る。

じりじり・・・・・

ぱくっ!

「ンやっ…」

沖田が千鶴の犬耳をはむはむと口に含む。

「おお!ほんとに生えてんだな」

原田がもう片方の犬耳を親指でコシコシと擦り耳の穴に息を優しく吹きかける。

ふ―――――っ

びくんっ!
「あっ…」

「なんだ。いっちょ前に感じやがって」

くいくい

「あ、土方さ…ひっぱらないで・・・」

「ふわああっ…千鶴、尻尾メッチャふわふわだなぁ」

「ふわふわなのか・・・」

「一君も触る?」

「ああ」

「平助君っ…何してっ!…」

「や、袴で尻尾触れないから脱がした。」

「全部脱がしてはいない。ずらしただけだ。」

「面白いな…ふわふわ動いて」

「うっうぅ!ばかあ!平助君のばかあ!」

「いてっ!ちょっ…叩くなって・・つか何で俺だけ・・・」

「おいおいおい!みんなして羨ましすぎだろ!!俺も!」

「しんぱっつあん…」

「触るか?新八。」

「おおう!」

「永倉さん!冗談ですよね?」

「いや、コレばっかしは我慢できねぇな…つー事でよ千鶴ちゃん!失礼する!」

さわっ


「ひっ!」

「しんぱっつぁん尻尾じゃなくてモロに尻触ってんな」

「つい、な…」

「あっ沖田さん何をっ…」

沖田は千鶴の犬耳に舌を這わす。

「ん〜〜・・・千鶴ちゃんの耳先から触る度ピコピコしてるね。」

「尻尾も触る度ふりふりしてんぜ!」

「尻尾振ってやっぱ気持ち良いんだろ」

「ちがっ…違います!違います違います違いますう――!!」

「我慢は良くないよ千鶴ちゃん?」

「千鶴。ほら気持ち良いか?」

「んんっ・・・土方さんやぁ!」

耳元で囁きながら犬耳を引っ張ったり、摘んだり、擦ったり、耳の穴に指を入れ、触れるか触れないかの所で指を出し入れし千鶴の反応を見る。

「んっ、ンんんんんんっ」

「土方さんなんか・・・やらしいな。」

「土方さんはやらしいよ。」

「千鶴可愛いな。今度さ、うさぎを祀ってる神社かなんか行って祟られて来いよ。うさ耳が生えてくるかも」

「平助うさ耳派か」

「土方さんは犬っぽそ―」

「ああ、犬派だな」

「左之さんは?」

「狐とかそそるな。妖狐みたいによ」

「俺は千鶴ちゃんなら狸とか似合いそうだと思うが」

「あ―わかる!似合いそうだな可愛いって絶対!」

「あぁっ・・・んぅ・・・!」

くにくにくにくに・・・・


「僕は断固猫派!猫耳の千鶴ちゃんがにゃあ〜って甘えてきたら可愛くない?」

「「「「「それは・・・・・」」」」」

ゴクリと六人は千鶴の可愛い姿を想像し生唾を飲む。
そして皆先から手は休まず千鶴の犬耳や尻尾を弄り続ける。

「首元撫でたらゴロゴロしてさ〜」

「擦り寄って来たりな!」

「あっ…あの!皆さん!私がここに居ることお忘れじゃないですか!?ていうか!ていうか手!辞めて下さい!」

「忘れてねーよ。忘れてないからこうして弄ってんだろ。」

「千鶴ちゃん。ちょっとさ、『わんっ』って鳴いてみてよ」

「なんでですか・・・・・」

「俺も聞きたい!」

「千鶴ほら。鳴いてみろ!」

「う・・・・・・・〜〜〜〜〜〜っっわ、・・・・・・わんっ!」

「可愛い〜」

「千鶴!千鶴!ほら、ご褒美にこれやるよ!饅頭。」

「良い子だな〜」

なでなで

「犬扱いしないでください!」

「あ!尻尾!千鶴尻尾メッチャ動いてる!メッチャパタパタしてる」

「ちがっ…」

「あ、でも耳は垂れてるぜ。下向いてる。」

「千鶴ちゃんもう一回『わんっ』って鳴いて。」

怖いので千鶴は従う。

「わんっ(泣)」

「可愛い可愛い!」

平助が千鶴の犬耳をくいくいっと引っ張る。

「きゃんっ・・・」

「あ!今の!『きゃんっ・・・』って可愛いかった!」

「よし!千鶴もう一回。」

「きゃ、きゃん・・・・」

「ちげえ!引き気味に言うな!色っぽく!」

「左之さんこだわるな」

「もう一回耳引っ張ってみるか」

くいくいっ

「んぅ・・・・」

「気持ち良いか?千鶴ぅ〜」

「なかなか鳴かないな。」

はむはむ。

沖田が千鶴の犬耳を甘噛みする。

「きゃんっ・・・!」

「鳴いた!」

「あっ・・・あぁ!沖田さんっ止めて下さっ」

「良い子だね〜」
なでなで

ちゅ、ちゅ、

「斉藤さん!」

斉藤が千鶴の尻尾に口付ける。

「愛らしい・・・・・」

「一君千鶴が可愛いくてしゃーないんだな。」

「一君動物とか好きそうだよね。影で雀とかに餌やってそう」

「おーい!良いもん持ってきたぜ!」

「何だ新八?そういやいつの間にか居なかったな」

「何持ってきたの?」

「『お椀に入れた水』だ!」

「だから何?」

「犬みたいに千鶴ちゃんがペロペロ舐めるかと思ってよ!」

「いいな!見たい見たい!」

「さあ!千鶴ちゃん!召し上がれ!」

タンっ、と千鶴の目の前に水の入ったお椀を置く。
「飲め」と言う事だ。

「あの、私まだ犬じゃないんですよ?手を使えるんですよ?」

「手は使わないでね。ペロペロって舐めてごらん?」

こうなれば千鶴もヤケクソである。誰かが助けにくるまで耐えるしかないのだと悟った。

「い、いただきます・・・」

ぴちゃぴちゃ
「飲んだ!」

「か、可愛い…」

「美味いか?千鶴〜」

なでなでと原田は千鶴の頭を撫でる。千鶴は涙目になりながら心の中で「ただの水です」と、ひねくれる。

「いいな。僕も千鶴ちゃんにペロペロ舐めて欲しいな」

「俺も」

じっ・・・・・・


「皆さんそんな目で見ないで下さい!しませんよ!」

「ほっぺたとか指でいいんだよ。ちーっとペロっと舐めるだけで」

「ついでに抱き付いてくれて『大好き!』とか言ってくれるともっとありがたい」

「ほら、千鶴。」

ぐいっと土方が千鶴の腕を引っ張り引き寄せる。







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