今宵の熱 2/2
千鶴の顎を土方の指がクイッと上に向かせ顔を近づける。
「千鶴・・・」
「あ・・・・」
唇と唇が触れ合う瞬間
「なんてな」
「え?」
スッ、と土方は千鶴の上から退いた。
「わかったか?こういう事になるからだ。あまり男を煽るような事はすんな。」
「私いま煽ってたんですか?」
「端から見たらな」
「でも怖くなかったです・・・」
「それは俺にその気がないからな。他の奴には通用しねぇ」
「わたし・・・」
「何だまだなんかあんのか?言っとくがこうやって男女が同じ部屋だってのも問題なんだからな。今はしょうがないが」
「ほら、起きれ」と、土方は布団の上に寝転がったままの千鶴を起こすと切り出す。
「その後は・・・」
「あ?」
「その後、男女はどうなるんですか?」
「・・・・・・・・・・・・・」
「くっ、口付けまでは私もわかりますが・・・その後の事は知らないんです・・・何をするんでしょう?」
「・・・・・・・・・・・」
千鶴はまだ知らない。なぜなら教えてくれる者もいないからだ。
(あーたしかコイツの母親はいないんだっけな・・・兄妹・・とかは居ねぇはずだったな一人娘のはずだ・・・しょうがねぇかもしんねぇが綱道さんあんたちゃんと教育しとけよ!!!)
イライライライライライラ
怒りたくても怒れなく、土方は額に青筋を浮かべ耐える。
「土方さん?」
「おめぇもちゃんと医者の娘なら一般常識として勉強しとけ!!」
「ひぃぃぃ!!??」
なんで叱られたのか千鶴はわかっていないがとりあえず恐いので謝る。
「すすすすすみませんっ・・・!違う方に聞きます・・・」
「・・・・・ちょっと待て、誰に聞くつもりだ?」
「えと・・・永倉さんとか原田さんとか平助君に・・・」
ここあたりのメンバーは千鶴が気軽に質問できるちょっとお兄ちゃん的立ち位置の面子だ。
「そこには聞くな。お前がんな事聞いたら色んな意味で泣くぞ。」
「えっ・・・そうなんですか?・・・でしたら・・・沖田さんや斎藤さん、山崎さんに・・・あっ近藤さんでしたら!」
「もっとだめだ。」
このメンバーについては先程の面子より悲惨な事になるだろう・・・
「お前は他にいねぇのか!?」
「だっ、だって・・・屯所から出られないじゃないですか・・・」
「・・・・・・・・・・・・ま、まぁそうだな・・・悪かった」
「土方さんが教えて下さらないんですか・・・土方さんに教えて欲しいです・・・」
「・・・お前は」
あぁだめだ。こいつのこの瞳・・・苦手だ。
「土方さ・・・」
「触るな」
「っ・・・・」
千鶴が土方の袖に手を伸ばそうとした時、その手を土方は振り払った。
「俺も利口じゃねぇんだ。お前がいくら餓鬼だからって・・・ってなんで泣いてんだよ!?」
「うっ・・・うぅ・・・ひっくっ、ふっ」
千鶴がボロボロと大粒の涙を流しているのに気付き土方は戸惑い焦る。泣かしたのは彼だ。
「ひじっ・・・かたさんがっ・・・ひじ方さん・・・こっ、い」
「あ?」
「土方さん恐いィィ〜〜っっ、ぐすっ・・・」
千鶴は土方の突き放したような態度と冷たい眼が怖かった。
あの眼は雪の降る夜最初に出会った時の目をしていたからだ。
「悪かったって・・・今のは・・・少し驚いただけだ。お前に怒ってるとか嫌いだからとかじゃねぇんだよ・・・」
「ん・・・・っふ、」
「・・・・・・あぁぁぁ〜〜ーー悪い!悪い悪かった!俺が悪いからすまねえ・・・だから、もう恐くねぇから・・・泣くな。俺は泣かせんのは得意だが泣き止ませんのは苦手なんだよ・・・」
頭を抱え込み、こんなにも困っている土方を見た事があるだろうか。普段の鬼副長とはえらい違いだ。
「土方さん・・・?」
「泣くな頼むから・・・」
「・・・・・・・んっ!?」
優しく優しく手を伸ばして千鶴の涙を拭い口を塞いだ。
自分の中にある限りの優しさを全て千鶴に降りそそぐように、頬に手を添え、そっと撫でながら甘い口付けをする。
「んっ・・・ふ・・・」
ちゅ・・・、クちゅっ
静かな部屋にはしばらく口付けの音だけが響き渡る。
なすがままに土方から与えられる接吻(キス)に混乱しながらも千鶴は大人しく受け入れる。
「はぁっ、千鶴・・・」
熱を帯びた瞳を千鶴の瞳に焼き入れるように見つめ、また口付け、頬を撫でる。続く口付けに千鶴も段々と手を土方の首に回しもっとと、求める。
「ひじ・・かた、さ・・・んっ、ふぁっ」
「ちづるっ・・・」
「・・・・・んっ、」
土方の口付けが唇から首に、首から鎖骨へと移っていく。
右手を薄い寝間着の上に添え、千鶴の控え目な胸元を弄る。
「きゃっ・・・」
少し襟をはだけさせ白い肌に赤く花びらを散らす。チクリチクリと微小の痛みを感じれば千鶴の眉は少しだけしかめられる。
「嫌か?」
「んっ、だいじょぉっ・・・」
大丈夫だと言いたいのだが与えられる感覚に上手く伝えられない。土方の吐息が千鶴の肌にかかりくすぐったく、クシャッと千鶴は土方の髪の毛を掴む。
この時点でお互い自分の感情に気付いてしまった。¨土方は千鶴が好きで、千鶴も土方が好き¨だけどそれは口に出すことはなく、身体だけを求め合うがそれは今夜だけ許された関係。
明日からはまた新選組副長と捕らわれの身である居候の少女。「今夜だけは」それだけを言い訳に今だけは互いを求め合うのだが・・・・
「んっ・・・、ちづる・・・」
寝間着を退かし、土方の指先が桜色の蕾に触れた瞬間。
「ぎゃあ!」
「・・・・色気のねぇ声出すなよ・・・・」
「ななな何してるんですか!何するんですかぁ!?」
「何って・・・ナニだろ」
「ナニって何ですかぁっ・・・!!」
「今更かよ!あんなぁ・・・自然の流れで察しろ。そして感じれお前は今心地良かったか?」
嫌いな相手、好きでもない相手ならあんなに素直に受け入れはしない。千鶴がどんな気持ちで自分を受け入れたか土方は知りたい。
「はい・・・少し恐いですが・・・嫌じゃありません・・・」
「そうか・・・」
またキスをして、互いを欲して『恋』を教えてもらう。
旅先で気付いた思いがけない互いの気持ちはこの先どう転がっていくのかまだ誰もわからない。置かれた立場からどうしていいかわからないがそれでも動物的衝動が抑えられないのだ。
「んっ・・・」
進む行為に千鶴の指先が土方の背中に食い込んでいく。
「何も言うな・・・何も言わないでくれ・・・今は、抱かせろ」
「土方さん・・・」
「千鶴・・・」
「「好き(だ)(です)」」
END
このあとは・・・皆さんの御想像通りですね^^
ちょっと今はまだ結ばれてはならない時期に恋心に気付いてしまった切ない土千。
でもちゃんとくっついてくれると思いますよ!
此方の作品は企画サイトの『春の月』様に捧げます。
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