君の居る家 | ナノ


▼ ここに住みます




「大変勝手ですが今日からここに住まわせてもらいますね」

可愛いらしい女の子だがやり口は強引である。座敷わらしには家主の許可など関係ないのだ。自分が気に入ったかどうかである。

「信じたくないけどどうやら君は¨人¨ではないみたいだし、僕にしか見えないし、君が座敷わらしな事は信じてあげるとして、ここには置いてあげないよ。」

「どうしてですか!?」

「邪魔だから。妖怪でも¨見える¨以上そこに存在してるのと変わらないんだから。生憎僕は優しい人間じゃないからね。自分が心を許した人とじゃないと同居なんて無理だし。」

「嫌です!ここがいいです!ここに住みたいです!」

「ちょっと・・・・斬っちゃうよ。」

沖田の右手は部屋の片隅に置いてある刀に伸びる。

「斬れませんよ。私は妖怪です。実体がないのですからこの世の物では滅せません。」

「え、そうなの?」

「なんだ」と沖田は刀を置き少し考える。

「うーん・・・塩かけたら消えるかな?」

「・・・・・・・それは、まだ試した事がありませんが・・・・」

この人は自分に塩をかける気なのだろうか?座敷わらしは縁起の良い妖怪なはず、ここまで煙たがる人間もはじめて見た・・・・千鶴も少し居心地が悪くなり涙ぐむ。

「そんなに私がお嫌ですか?」

「うん。」

「でも住みますけどね。」

「引き下がらないんだね。」

「住めば都と言いますよ?」

「使い方間違ってる」

「・・・・・・・・・・・・ぐすっ」

「・・・・・・・・・・・・」

この妙に押しが強い割に腰が低い少女は引き下がらない。なんて頑固なんだと沖田は舌打ちする。

「そうだなぁ。君が座敷わらしならこの僕の病気を治してよ。そしたら置いてあげる。座敷わらしは福を運ぶ妖怪でしょう?」

「あなたの病は結核ですね・・・」

「へぇ・・・わかるんだ」

「あなたを視たら肺に黒くモヤがかかってますので」

「ふぅ〜ん」

「座敷わらしは確かにお金持ちになるとか福を運ぶとか言われてますが、実際はその家主が一番に望み叶うための運を呼ぶのです。願い事は必ずしも叶うわけではないのですよ」

「・・・・・なら僕の結核は医者に治せないなら治らないって事?」

「解りません。もしかしたらあなたの病を治せる薬や方法が発見されるかもしれませんし、私の力が及ばないかもしれません」

「ふぅん、じゃあ賭けをしようか」

「賭け?」

「期限は三ヶ月。その間にもし僕の病が治ったり、治る手掛かりが見つかったら君は引き続きこの家に住んでもいいよ」

「ほんとおですか!?」

「うん。ただし、治らなかったら出て行って。」

「なら三ヶ月まではっ・・・」



「置いてあげる」




頬笑みかけた沖田さんはどこか冷たかった―――――





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