ポッキーの日 1/2
『あなたもわたしもポッキー!』
今日はポッキーの日です。千鶴ちゃんが大好きな彼らは千鶴ちゃんとポッキーゲームをしようと頑張ります。
■土方先生の場合
「土方先生!頼まれたプリント集めました」
「おお、ありがとうな千鶴」
中休み、土方は千鶴にクラス全員分のプリントを集めてくれるように頼んでいた。
「千鶴何持ってんだ?」
「これですか?ビターチョコポッキーです。今日は11月11日なので昼休みにみんなで食べようと思って」
「そんな日か…」
そういえばやたらそんなCMが流れていたな…
「千鶴…」
「はい、何ですか?」
「俺にもそのポッキー一本くれねえか?」
「はい!是非食べて下さい!」
新発売のなんですよ〜と千鶴は土方にポッキーを一本手渡した。
「千鶴、ほら!」
「!?」
土方は渡されたポッキーを千鶴の口の中に突っ込みもう片方の側から食べた。
「ふっ!?ひじっ…」
ポリポリポリポリちゅ
「んっ…」
最後に唇をペロリと舐め、
「ごちそうさん」
と不適な笑みをしながら土方は去って行った。
土方さんとのキスはビターチョコの味でした。
■沖田先輩の場合
「ん〜〜」
「きゃ」
ポリポリポリポリ
ちゅ、ちゅ、ちゅ
「沖田先輩!!」
「なーに?」
「いい加減にしてください!!」
先程沖田先輩からメールが来て『屋上に来て』とのこと、早速行ったらドアを開けるなり沖田先輩に顔をがっしり掴まれてポッキーをくわえさせられいきなりキスされた。
そして今に至る。
「いきなり、何を…!」
「今日はポッキーの日だから千鶴ちゃんとポッキーゲーム!苺ポッキー買ってきたから食べようと思って」
「なんでキ、キス…し…」
「彼氏だからいいでしょ?」
「だめです!ていうか私たち付き合ってませんよね?」
「もうキスしたし、付き合ってもいいんじゃないかな?今日からよろしくね」
「ええええーーー!!??」
ちゅ、ちゅ、ちゅ、ちゅっ
「ん〜〜〜〜!!」
助けて!!!!
沖田先輩とのキスは苺味でした。
■斎藤先輩の場合
お昼休み、斎藤先輩にお昼に誘われました。
珍しく二人きりなので今日は有意義に過ごせそうです。
「雪村、今日はポッキーの日だ。それで先程購買部でポッキーを購入してきたのだが。」
「あ!そういえばそうでしたね!」
「それでだな……ゴホンッ」
「先輩?」
なんだか斎藤は目を合わさない。心なしか顔が赤いみたいだけど………
「お、俺と…その、ポ、ポッキー…ゴホンッ、ポッキーゲーム的なものを…してくれはしないだろうか…」
「ポッキーゲームですか…?」
千鶴は頭の中で今斎藤に言われた事を整理する。
唐突すぎて、あまり理解出来なかったのだ。
ポッキーゲームってあれだよね?ポッキーの端と端を一人ずつくわえて食べていって、折れた方が負けって……
私と斎藤先輩が…?
「えええええ先輩!?」
「やっ、やましい気持ちはない!これは勝負であって…」
「で、でも…恥ずかしいですし……」
「俺はポッキーゲームとは、互いの意地を競い合う立派な競技だと思うのだ。折れれば負け。それは剣道と何か共通する物を感じぬか?」
「そ、うですか…?」
熱く語る斎藤は更にもう一押し。
「雪村…頼む。力を貸してほしい!」
「わ、わかりました」
千鶴は結局押されて負け。ポッキーゲームを引き受けた。
「抹茶味を買って来た…」
「私も抹茶好きです」
お互い正座をし向かい合い、端と端をくわえゲームが始まる。
ドキン、 ドキン、
ポリポリポリポリポリポリ……………
そしてふと、千鶴が気付く。
あれ?これ折れなかったらどうなるんだっけ?
ちゅっっ…
「「 あ、」」
唇があたった…
「す、すまん!雪村! 」
「いえ…あの、こちらこそすみませんでした!!」
キーンコーンカーンコーン
「予鈴が鳴ってしまったな、行くか」
「は、はい…」
その後次の日まで斎藤先輩とは目を合わさず、お互い真っ赤にならながら口元を押さえ教室に戻りました。
斎藤先輩とのキスは抹茶味でした。
■平助君の場合
「きょ、今日ポッキーの日だな!」
「そうだね…」
朝、いつものように寝坊した平助君を起こしに行くともう制服にも着替え、準備万端だった。そして唐突に言われた。
「ポッキーゲームしねぇ?」
「え?」
「今日ポッキーの日だなぁ〜と思って……」
平助君が目を合わさない。
「ポッキーゲームって…ポッキーゲームだよね?」
「うん…」
「でも…あれって、だって……」
唇あたったら…………
「嫌か?」
『あっ!平助君落ち込んじゃった!!』
「だだ大丈夫だよ!!私ポッキー大好きだし!」
「え!マジでいいの!!」
「う、うん…」
「ヘヘッ、これ冬季限定のかぼちゃ味!!」
「おいしそ〜」
良かった。平助君元気になって、というか時間がギリギリになってきたから急がないと遅刻しちゃう!
「平助君!んっ!」
千鶴はポッキーをくわえ平助に片方くわえるように催促する。
「あ、じゃあいくな…」
平助が真っ赤になりながら片方をくわえ食べていく。
ポリポリポリ
『あと、あとちょっと、あとちょっとでキスできる…』
ドキン、ドキン、
むにっ
「ひゃ」
唇があたった。
「ヘヘ、平助君!?」
「ごめん千鶴、ワザとだから」
「え、」
「さっ、学校行こーぜ!遅刻しちまうな」
目を合わさずそそくさとスポーツバッグを持ち、千鶴の手を掴み部屋を出る。
「うん」
「行ってきまーす」
「行って来ます」
平助の母親に声をかけ玄関の扉を開ける。後ろからは母親が行ってらっしゃい気を付けてねと見送りだし、二人は走る。
学校に着くまで無言で、千鶴はただ平助の背中や走っている振動で揺れている髪の毛を見ながら繋いだ手の体温を感じ、さっきまでの平助の照れている表情や真っ赤な顔を思い出し自然と頬が綻ぶのだった。
平助君とのキスはかぼちゃ味でした。
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