千鶴とプリクラ 1/2


※このお話は「千鶴ちゃんとプリクラ」の続編です



「じゃあ土曜日13時にショッピングモールの広場な!」

金曜日の放課後、幼なじみで家が近い千鶴と平助は一緒に下校し、千鶴の家の前でそう約束した。

二週間前、千鶴と平助は駅前のアーケード通りのゲームセンターに新しく入ったプリクラを撮りに行こうと約束をしていたが、あいにく平助に補習が入り先延ばしになっていた。だが、今週末は二人とも予定はなく、二週間前の約束をまた新しく計画した。


「うん平助君またあしたね!」

可愛らしい笑顔で千鶴は手を振り家の門を開ける。

前に千鶴とプリクラを撮りに行こうとした時周りに邪魔され危うく集団で行くことになりそうだったが千鶴がキチンと平助との約束を守ってくれたお陰でこうして2人っきりで行く事が出来ることになったのだ。



『あ〜明日楽しみ!コスプレできるとか最高だよな!千鶴には巫女さんの服着てもらって…すげー似合うだろーな!あと猫耳カチューシャとかあったな…ぜってー可愛い!』

明日の事を考えるとわくわくしてしまう。
平助と千鶴は幼なじみだが平助は千鶴に恋愛感情を抱いていて、可愛くて、優しくて、一緒にいると幸せで…千鶴が大好きなのだ。



土曜日


「千鶴なに着る?」

「う…何にしよう」

たくさんの衣装が並ぶゲームセンターの隅っこに、平助と千鶴の姿があった。

「お、俺はさ!これがいいと思うっ!!」

「巫女さん?…」

「すげー似合うって!千鶴のイメージにぴったり!これにしろよ!」

「恥ずかしいし…普通にやっぱりカチューシャだけとかでいいかな…」

「恥ずかしくねーよ!!その…かっ、可愛いと思うからさっ…」

真っ赤になり千鶴にどうしても巫女衣装を着てほしい平助。

「で、でも…」

「俺も着るからさ!二人ならはずくねーだろ?」

「いっしょに着るなら…」

「やった!」

千鶴の了承もとり、巫女の衣装を持って試着室に千鶴を押し込む。

「あ!平助君は何着るの?」

「俺?俺は…なんにしよ。」

「じゃあおそろいにしよう!」

「へ?」

・・・・おそろい?

「平助君細いし…多分女の子用の服も入るし、二人一緒なら私も恥ずかしくないし!」

自分も巫女姿になり、平助も巫女になり、二人一緒にコスプレしようと言っているのだ。


「え…女装しろって?」

「うん!」

いまだかつてないほど目をキラキラ輝かせながら

「いや…でも俺…」

なにが悲しくて好きな子の前で女装なんか…

「だめ…かな?」

しゅん…と上目使いで千鶴は平助を見る。

「ぜんっぜんだめじゃねーよ!!」


俺のプライドが崩れ落ちた…






こうして・・・・・・


「わぁぁぁぁ!平助君可愛い!凄く似合う!!」

「あぁ…そう?」

試着室から出てきた巫女姿の平助を千鶴は目を輝かせながら食い入るように見る。

こんなにも司近距離でとびきり可愛い笑顔を向けられ正直平助は今にも心臓が爆発しそうなくらい鼓動が速くなっているが男である自分が「可愛い」「すごく似合う」と言われ複雑だった。

「ち、千鶴は着ないのかよ!おそろいって話しだったのに」

「えっ!私はやっぱり恥ずかしいし…」

顔を真っ赤にし、両手を目の前でブンブン振りながら目一杯拒否する千鶴だが平助は譲らない。

「俺も着たんだから千鶴も着ろよ〜」

「だだって…人居るし…」

「俺は!千鶴の巫女姿メッチャみてー!!」

とにかく平助は千鶴の巫女姿を見たくて必死だ。じゃなきゃ自分が何のためにこんな恥ずかしいし格好をしたのか…


「ちーづる〜着れたー?」

試着室前の椅子に座りながらカーテン越しの千鶴に問いかける。

「き、着れたよ…」

シャッとカーテンを明け、中からは巫女ね衣装に身を包んだ千鶴が現れた。
細身な千鶴の体型がはっきりとわかる白地の上半身にふわりと真っ赤な袴が揺れた。
結構本格的なため小道具なども用意されていて、翡翠色(偽物)の勾玉の首飾りや

「も…萌え!」

「え?平助君…もっ…?」

「あーー!!イヤちげぇ!!何でもねぇ!」

「?」

「あーのさ!千鶴すげーかわいい!」

「ほんとう…」

「おぉ!なんか抱きしめた…じゃなくて、メチャクチャ可愛い」

「あ…ありがとう!平助君もすごく可愛いよ!」

「…ありがと」


二人はプリクラ機の中に入り早速撮影する。

「わーい新機種だ!」


『フレームを選んでね』

「あっ!平助君これ背景可愛い!これにしよ?」

「げーこれめっちゃピンクじゃん。あっ!これにしようぜ巫女姿と似合う」

「…そんな背景が墓場のプリクラなんていや!それに巫女と墓場はなにも共通しないよ!」

結局背景はすべて千鶴が決めた。

『それじゃあ撮るよ!まずはカメラに向かって可愛く上目使い!彼に可愛くおねだりポーズ!3・2・1』

「平助君上目使い!」

「できねーよ!!」

パシャッ

「もう〜次はちゃんとしてね!」

『あれれ〜?雨が降ってきちゃった!相合い傘でラブラブ度上昇!』

「プリ機ってはずかしい事言うな。」

「選んだ背景がカップル向けのだったから」

若干気まずい雰囲気になり、二人の間には数センチ程の距離ができる。


『3・2・1 !! 』
パシャッ

『やべ…気まずい。や!千鶴とカップルぽくプリクラ撮れんのは嬉しいけど、つかあからさまに千鶴から離れちまってるし…千鶴違うんだ!恥ずかしいだけなんだ!出来る事なら俺も後ろからぎゅっってしたり、ちゅっ…ちゅープリとかしてみてーけど俺達まだ幼なじみっつー関係だから出来ないし…恥じらう千鶴も可愛いし巫女姿とか鼻血もんだしこう神聖で汚れを知らなさそうな感じがそそるっつーの?とにかく可愛い!千鶴ー好きだ!可愛いぞ千鶴!!』



平助が自己の世界へ行っている間にカメラ撮影はすべて終了した。



『落書きコーナーは右だよ。忘れ物に気を付けてね!』

二人は落書きコーナーへと移動する。

「こーゆうのって何書けばいいんだ?」

「何でもいいんだよ。私平助君にヒゲ描いちゃお!」

「そうゆう事するんなら俺も千鶴の眉毛つなげてやる。」

「やだ!」

「……な、今度来たときは普通の服で撮ろうぜ。俺女装したプリクラなんてやだ。」

「も〜平助君が言ったんだからね?コスプレするって」

「千鶴は可愛いからいいよ…」

「へ?平助君は可愛いよ!似合ってたから自信持って!!」

「いや!そういう意味じゃねーから!つか嬉しくねー」


どこまでも鈍い千鶴には通じない。


「やっぱちゃんと言わないと通じないよな。」

「何が?」

「なっ、何でもねぇ!」


幼なじみから脱出したい。そう強く思い決心する。







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