ポッキーの日 2/2


■原田先生の場合


「お、千鶴うまそうなもん食ってるな」

ポリポリポリと、千鶴がホワイトチョコのポッキーを食べていたら原田先生が話しかけてきた。


「えへ、今日はポッキーの日だから便乗して買っちゃいました」

「そういうイベント好きだな千鶴は」

「楽しいですよ」

「じゃ俺も便乗して、」

「?」

ずいっ、と原田は身体を前のめりに倒し、千鶴の近くまで口を開いて寄る。


「ほら、食べさせてくれよ。今、両手塞がってんだ。」

「えっ!」

「ん?何恥ずかしがってんだよ人来ちまうぞ」

ここは図書室の前の廊下。いくら図書室は今の所授業の間の10分休みには生徒や教師は特に用事があるような所は周りには無く、誰も通らない事を良いことに原田は大胆に千鶴とのスキンシップをとろうとする。


「う…失礼します…」

千鶴がおずおずと原田の口にポッキーを運んでいく。

ぱくっ

「ん!うめーな」

「冬季限定ホワイトチョコレート味です」


「よし!千鶴、今度は俺が食べさせてやるよ」

「えええっ!いいです」

「照れんなよ、ほら、あーん」

「…でも恥ずかしい…」

原田におされ、なんだか流されつい口を開けてしまった千鶴。

「あ、あーん…」

ぱくっ。
ポリポリポリ

「うまいか?」

「はい…」

千鶴が赤くなりながらポッキーを食べ、あと残り1センチのところで原田は千鶴の両手首を掴み、千鶴がくわえているポッキーの端を食べる。



ぱくっ
ちゅっ……


「ふっ!?」

「千鶴ごと食ったら倍うまいな。また食わせてくれよ?」


にっこりと笑いながら自分の唇を舐め、予鈴が鳴り響き原田は「授業遅れんなよ〜」と言い残し、去っていった。一方の残された千鶴は真っ赤な顔から湯気を出しながらその場でへたり込んだ。



原田先生とのキスはホワイトチョコの味でした。







■風間の場合


なんでこんなことに………


千鶴は今日、いつものように授業が終わり、下校しようとしていたのだ。しかし、途中幼なじみの平助に借りていた千鶴がこの間学校を休んだ分のノートを写させてもらうため借りていたのを思い出し、彼が今居るであろう学校の道場に向かっていた。道場は一階にあり、千鶴が向かっていた玄関とは正反対の場所にあるため結構な距離がある。長い廊下を歩き、職員室、校長室、応接室、保健室を過ぎていくと生徒会室の前に着いた途端、いきなりドアが開き、天霧が現れた。

「手荒なまねはしません。大人しく御同行願います」

と、千鶴は拉致された。


そして今に至る。

ここは生徒会室。千鶴が生徒会室の黒いソファーの上。いや、正しくは生徒会室の黒いソファーに座る薄桜学園の生徒会長である風間千景の膝の上に居た。



「我が嫁よ。聞けば今日は庶民の間では『ポッキーの日』というらしいではないか。某菓子会社が商品売り上げに駆けつけて考えたらしいが。世の恋人達はそれに便乗し、ポッキーの日にはポッキーゲームをするそうだな」


「………………」


千鶴は風間が座っている膝の上で向かい合わせになるように座らされていた。風間は千鶴の腰に手を回し、逃げないようにがっしりと掴み固定している。


「俺様がそんなふざけた世の習わしを不本意ではあるが、恋人達のイベントではこの俺がしないのは利に反しているとは思わないか?我が妻よ」

「あの風間さん、私はあなたの妻ではありません」

「そこでだ。」

「聞いてますか?」

「ここにベルギーの一流のパティシエに作らせた金粉をまぶしたポッキーを用意した。一日中飽きるまでポッキーゲームが楽しめるぞ。喜べ」


風間が座るソファーの前に置かれているテーブルには長いワイングラスに入った金粉がまぶしてあるポッキーやその他にも高級そうな洋菓子が並んでいた。


「私、用事があるんです。帰らして下さい。」

「夫より優先するべきことなんて無いだろう。」


話が通じない・・・・・


「時間はたっぷりある。試しにこれを食べて見ろ。」

風間が手に取ったのはピンク色のマカロンだ。

おいしそう…


正直放課後のこの時間帯、小腹が空いてしまい食べたいのは事実。だが今食べてしまったら風間の思う壺。


「……いりません」

「意地を張るな。物欲しそうな目で見てるではないか。」

「うっ…」

どうやら千鶴の心情はお見通しのようだ。

「口を開けろ」

「でも…」

「食べさすだけだ」

何もしないなら…………
そう安心し千鶴はなすがままに口を開ける。

ぱくっ
サクサクサクサクサクサク

「うまいか?」

「ふぁい…」

口いっぱいにマカロンを頬張りながらどこか悔しそうに味わう。

高級なだけあっておいしい………

「これはチュロスだ。チョコレートに付けて食べるのがベルギー流だそうだ。食べてみろ。」

そうして千鶴は口を開ける。

「ん〜〜っっ…おっ、おいしいです!!」

「ドイツの伝統的なくるみクッキーとチェリージャムのクッキーとプレッツェルもある。」

「ん〜〜!!おいしい!」

「北海道の石屋製菓の白いロールケーキだ」

「とっても甘いです〜〜!!」

どんどん餌付けされていく千鶴は油断していく。

ぱくぱくぱくぱくぱくぱく


「うまいか?」

「はい!!とっても美味しいです!!」

「次はこれだ。」

ぱくっ!

なんも疑いもしなく口に入れたのはあの金粉がかかったポッキーだった。

「!!」

はっと千鶴が気付いた時にはもう遅い。

ぱくっ!
ポリポリポリポリっ


千鶴の両頬が風間の手によってがっしりと抑えつけられる。

ちゅうううううううぅぅぅぅっっっっっっ…………

「ん〜〜〜〜!!」


風間により千鶴へと、濃厚な口付けが襲いかかる。


「ぷはっ……」

「ふっ、甘いな。」

紅い目を光らせながら千鶴を見つめ自分の舌を舐める。

「なっ、何するんですか!」

「恋人達のイベントなんだ。何を怒っている」

「ですから、恋人じゃっ…」

「まだ認めない気か?」

「っ……」

風間にまた口を塞がれ、反抗の言葉は呑み込まれた。
しばらくは風間に熱い愛のほどこしを受け、千鶴はしばらくは生徒会室から出て来なかった。


風間さんとのキスは高級でなんだかよくわかりませんでした。





END


あとがき

だいぶ日にちずれましたが、ポッキーの日に因んでみんなにポッキーゲームを迫られる千鶴ちゃん話。
それぞれポッキーの味変えたが……ネタが切れて平助かぼちゃ味って…(-口-;)

ちー様は普通のポッキーは選ばないということで金粉ポッキー←どんな味だよ!

読んでくださりありがとう御座いました!







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