短編 | ナノ
獄寺くんと手

「獄寺くん、もういいって……」
「いーえ! このヤロー10代目のスカートの中覗きやがったんスよ! 殺す!!」
「いやわざとじゃなくてこの人が転んじゃった先にわたしが立ってただけだし、死ぬ気モードのせいで下着見られるのに慣れてきたし……」
「おいテメエ……この人のパンツの柄覚えて帰れると思うなよ。今から二発ずつ殴っていくから柄を忘れたら言え」
「暴力に訴えるな! わたしは気にしてないんだってば! コラ! 獄寺くんっ!」ギュッ
「!!」

「お、名前と獄寺。何やってんだ?」
「あ、山本。また獄寺くんが学校の先輩に絡んじゃって」
「ハハ、またか獄寺。怒られたから静かなんだな」
「…………」
「あぁー違くって、なんか獄寺くんって手つなぐと大人しくしてくれるんだよね」
「うん? あー、繋いでるなぁ」
「苦手だから静かになっちゃうのかもだけど、いっつも変に喧嘩ふっかける獄寺くんが悪いんだから」
「そうなのか? じゃー獄寺の代わりにオレがつなぐぜ」ギュッ
「はっ!? な、なんでわたしと? そこはわたしの代わりに獄寺くんと……」
「テッ……メエ、じゅっ10代目の手に気安く……触んじゃ……」
「んー、多分だけどオレと手繋いだら獄寺元気になっちまうからなー」
「え? なんでわたしとはダメで山本とはいいの!? 傷付くんだけど獄寺くん……獄寺くん!? 何その顔! そ……そんなにイヤだったの……!?」
「イヤ……じゃねえっスっ! だけッ……ど、あの……」
「えぇーこんなに歯切れの悪い獄寺くん初めて! 今猛烈に死にたい!!」
「よしよし名前、オレはオマエと手つなげてうれしーぜ」
「山本! 大好きだ山本ー!」
「ッだはッ!! テメッバカ野球バカ!! じ、10代目ぇオレが嫌がるわけないじゃねえスかあ!」
「ホント?」ギュッ
「…………ッ!!」
「うわー筆舌に尽くし難い顔をしている! 山本ー!!」



獄寺くんとタバコ

「獄寺くん。タバコは体に良くないからやめない?」
「へっ!? い、いやしかしこれはオレのボムに火をつけるための……」
「それ以外でも吸ってるでしょ。獄寺くんあまりにも自然に吸ってるから忘れてたけどわたしたち中学生だよ。お巡りさんに見つかったら捕まるよ」
「へッ、そんなモン怖がってちゃボンゴレの名がすたります。ブッぱなしてやりますよ」
「いやいやダメダメ。ホントはタバコだけじゃなくって爆弾もダメだけど……。どうしてもっていうならコレ使おう」
「これは……チャッカマンですか?」
「うん。ライターにしようかと思ったんだけどなんか怖くてこっちにしちゃった」
「こ、これをオレに!?」
「そう、獄寺くんに。火付けならこれがあるしもうタバコ吸わなくていいでしょ?」
「しかし10代目、これで火をつけるとなると片手が塞がっ……いえ! あなたからいただいた物です! ありがたく使わせていただきます! 逆にダイナマイトを口に咥えるとかして」
「ちょーい! いや危ないそれは危ない! 絶対やめてね!」
「くっ、とはいえ片手でチマチマ投げるのでは破壊力が……」
「いや片手でも両手でも爆発物投げるのは控えて欲しいけど……どうしてもっていうならわたしが火つけるから!」
「え!?」
「例えば獄寺くんが爆弾をこう持ってたとしたらこう、こうして……こう……」
「い、いや危ないっス! 10代目にそんなことさせられません!」
「自分はボム口に咥えようとしてたのに!?」
「っつーかオレはあの、オレが10代目に火をつけていただくなんて、いや、あの」
「わ、わかったから獄寺くん、なんか汗すごいよ」
「……失礼します!!」
「あー獄寺くん、禁煙、なるべく禁煙ねー!」



獄寺くんと呼び方

「10代目! 昼メシ一緒にどーですか」
「お、お呼びじゃん。行ってらっしゃい10代目〜」
「もう、花! はーい獄寺くん、ちょっと待ってー!」

「……ねえ獄寺くん。その10代目っていうのやめない?」
「へ? 何でですか?」
「いや、二人だけの時ならいいんだけど大勢の前で言われるのは恥ずかしいっていうか……」
「これから慣れてかなきゃっスねえ」
「そうじゃなくて! 誰かがいる時は普通に呼んで欲しいの」
「普通に……っつっても、10代目は10代目ですし……」
「たまに言うでしょ。沢田さんって。それでいいんだよ」
「沢田さん」
「そう! ずっとそれでいこう。呼んでる相手はかわらないし」
「沢田さん」
「うん」
「……沢田さん」
「…………」

「……ごめん、なんか恥ずかしい。やっぱ10代目でもいいよ」
「そ、そっスね! うん……」



獄寺くんとお弁当

「うわーっなにしてるの大丈夫!?」
「じゅっ10代目! い、いえこれは何でも……」
「すごい数の鳩! 餌でもまいたの? ダメだよ風紀委員に怒られるから……あれ?」
「…………す、すみません!! 10代目が作ってくださった弁当を鳥公に食われちまって! 腹を……切ります!!」
「切るな!! そんなの気にしなくていいから! ていうかどういう経緯があればこんなことになるの!?」
「朝……10代目に弁当をいただいた後、喜びのあまり頭に乗せたりとかしていたんですが……」
「(かわいい……)」
「誰にも盗られないようにそこのロッカーの上に隠しておいて、いざ食べようと包みから出して頭に乗せたら転んじまって……」
「えっ。大丈夫だった?」
「は、ハイ! ですがオレの頭から落ちた弁当は通りかかった生徒が蹴飛ばしてしまい……そのまま開いていた中庭へ吹っ飛び……弁当を見失ったオレがモタクサしてる間に、鳥野郎たちが……」
「だから中庭にいたんだ。中身は……あら、綺麗になってる」
「……スミマセン! オレは……せっかく、あなたが作ってくれた……」
「いいよいいよ、お弁当食べたいってランボ達が言うから一緒に作っただけだもの。獄寺くんのお昼パンとかが多かったから……って、こんなことになるなら余計なお世話だったかも」
「違います! 10代目はオレのことを考えてくださったのに、それを無駄にしたのはオレで……」
「うわあ土下座の姿勢に入るな! えっと、代わりっていうか、もう一つあるから、よかったらこれ」
「え!? なんでもう一つ……い、いいんですか!?」
「うん。獄寺くんがよかったらなんだけど……」
「10代目……! こんなオレにもう一度弁当を! うぅ……ありがどうござっ……」
「えー!? 泣くなー!」

「何かと思ったら名前、アンタの腹の音ねー」
「や、やめて……聞かないで花……」
「お昼終わったばっかじゃん。どうしたの?」
「……食べてない、けど、嬉しくて胸はいっぱいというか……」
「何言ってんのよ……」



獄寺くんとボタン

「うおっわったった! あっ獄寺くんごめん……イテテ!」
「うわっ、すみません10代目……あ! 髪がオレのボタンに」
「わ、わたしが変な風にぶつかっちゃったから……。ごめん、取れないから髪切っ」
「ふんンッ!!」
「ちょおい!!」
「失礼しました! あっ待ってください、糸くず取りますから」
「自分の服のボタン引きちぎるのに躊躇いが無さすぎない!? いやっありがとうなんだけど、ごめんね……」
「いーんスよ、ボタンなんかまた付け直せますし。10代目の髪のほうが大事です」
「イタリア男だ……。ありがとう、よかったらわたしにボタン付けやらせてくれない?」
「えっ! いいんですか!? ……ウッいやしかしこんなことでお手をわずらわせるわけには」
「わたしが転びそうになったせいだもん。獄寺くんがよかったら」
「い、いや! ……やっていただけたら……嬉しいです。お願いします」
「任されよー」

「あれ、そういえば獄寺くん最近こないだのシャツ着てないね」
「10代目がボタン付けやってくださったやつですか」
「うん。あれ、もしかして変なふうになってた?」
「あれならウチに飾ってあります。10代目が手ずから直してくださった服ですから!」
「えっ……着なよ……」
「もったいなくて着れないです!」
「いや着なよ! あのシャツかっこよくて似合ってたのに!」
「えっ」
「またボタンがとれたらわたしがくっつけたげるから」
「……え!? ハイ! す、すみませんもう一回!」
「裁縫の練習しておくかー」
「じゅ、10代目ぇ! あのっもう一回……」



獄寺くんとイタリア語

「獄寺くんってイタリア語もできるんだよね。ていうかそっちが母国語だし。日本語ペラペラなのすごいなあ」
「いやあ、そんなことねっスよ」
「……ねえ、イタリア語で愛してるとか好きとかってどう言うの?」
「へ!?」
「あ、書き方じゃなくて発音とか、どんな感じ?」
「どんな感じ……っつっても、色々っスけど……こっちでも聞くのはTi amoとか……」
「てぃあも? 他には?」
「もっとアツいのだとTi adoroとか、ヌルいとMi piaci……」
「へぇー、かっこいい。わたしに言われてるわけじゃないのに照れる」
「うっ、す、スミマセン……」
「ううん、ありがとう! やっぱあの電話……」
「電話? 10代目のお家に不審電話っスか! こんな内容で!? なんつー恥ずかしいヤローだ……」
「いや、リボーンが電話でイタリア語喋っててさ。なんか雰囲気変だなって思って。あいつ愛人ビアンキだけじゃなかったのか……」
「リボーンさん……」



獄寺くんとおんぶ

「10代目!? どーしたんスかその歩き方!」
「あっごめん、変だった? 足首捻挫しちゃって」
「なにぃ! お、俺がいなかった時にそんなことが……いつですか!?」
「昨日の夜、ランボが寝てくれなくてドタバタしちゃって、その時」
「あンのクソ牛! 次見たらシメる! ……10代目、今日はオレがあなたの脚になります!」バッ
「オウッ!? 獄寺くん!?」
「こんなこともあろうかと鍛えてたんで任せてください」
「想定してたの!? いいよいいよこんなっ、恥ずかしいからっ……」
「オレがいる限り10代目に遅刻なんかさせませんっ! つかまっててくださいねー!」
「待っゴブッベロ噛んッひぃいい!!」

「なあ名前。獄寺すげー沈んでるけど何かあったのか?」
「知らないっ。ほんとに恥ずかしかったんだから。全校生徒に見られてからかわれて、すっごく恥ずかしかったんだから!」
「そっかー。じゃーしゃーねーな!」



獄寺くんと仲直り

「じゅ、10代目……」ウロウロ
「……」
「あの、オレ……」ウロウロ
「……」
「10代目……」
「獄寺くん」
「ハイッ!?」
「……そういう……顔はずるい」
「え!? スミマセン! えっと、どういう……?」
「なんでもない。もう怒ってないよ。でも今度はちゃんと待ってって言ったら待ってくれる?」
「は……ハイ、もちろんです! オレの乗り心地が悪かったばっかりに10代目に不便を強いて……スンマセンっした!」
「えーとね、違うのね。獄寺くんにそんな気がなくても、男の子が女の子とあんなにくっついて登校したら皆誤解しちゃうんだよ」
「誤解?」
「付き合ってるのかって。皆そういう話好きだから一回見られたらずーっと言われるよ。そんなの嫌でしょ?」
「まさか! 10代目に寄る虫が減っていいじゃないスか!」
「あれぇ!?」
「大したこともない癖に10代目に近づくヤローが多いと思ってたんです。そういうことにしときましょう」
「しません! 10代目……ではないけど! だからって! そこまでしなくていいよ」
「えっ……もしかしてす、好きな男が……?」
「いや違っ……でもほら、獄寺くんが好きな人できた時とか困るかもよ」
「問題ねっス。オレは……」
「……オレは?」
「……いや。そ……っか、こういう……」
「えっ。どうしたの?」
「い、いえ! あの……オレは気になんねーですけど、10代目が仰るならやめます」
「うん、ありがとう! また何かあったら肩貸してくれると嬉しい!」
「……はい!」



獄寺くんとお祭り

「あテテ……」
「大丈夫ですか? クソッヒバリのヤロー、10代目を巻き込みやがって」
「どっちかっていうと獄寺くんの爆風に巻き込まれたような……それより花火! 綺麗だねえ」
「ッス。今日は大変でしたから、余計染みますね」
「……獄寺くん。……」
「え? あ、すいません。花火の音で聞こえなくて……」
「あっごめん。そんな大事な話じゃないんだけど」
「いや、もう一度! お願いします!」ズイッ
「……ン。うーん。あの……」
「はい!」

「……獄寺くん」ギュッ
「はっ!? はい!?」
「今日、楽しかった。どうしようって思ったこともあったけど。獄寺くんは?」
「はい! たっ楽し、あ、あなたと」
「よかった。今日のこと忘れないでいてくれる?」
「わ……忘れません! 10代目さえよかったら、来年も」
「うん、来年。絶対来ようね。絶対だよ、約束」
「はいっ。次は野球バカも女共も抜きで、……ふ、ふた……」
「本当は獄寺くんも皆も危ない目にあって欲しくないし、そうならないように頑張るけど、だめかもしれないから……」
「……10代目? 何の……」
「獄寺くんの命が一番大事なんだよ。ボンゴレとか右腕とか関係なくて。皆そうだから……」
「そっ……それ……は……」
「ん?」
「プロポーズ……!?」
「え?」

「ナマエ。お前いつの間に獄寺と婚約したんだ」
「うわああリボーンに話がいってるー!!」
「最初はシバいてやろーかと思ったがアイツならボンゴレ10代目にお前を引き摺り込んでくれそうだから承諾しといたぞ」
「余計なことしないでくれる!? うおおもう、こういう時ばっかり全然見つからないし、獄寺くん! 誤解だから! 獄寺くーん!!」
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