>>2020/11/14

「……悟。……起きてる?」
「起きた」
「えっ嘘ごめん……」
「どしたの」
「あ、うーんとえー、ココア飲みたくなったんだけど、ケトルどこかな」
「オシ。おいで」

「やるぞー」
「あの、ココア飲むだけなんだけど、なんで鍋?」
「砂糖出して」
「うん」
「こちら純ココア。これにその砂糖と少しだけ牛乳を混ぜます」
「あの……もう日付変わるしそんな大層なものじゃなくても」
「そいで練る!」
「おぉ」
「美味しいらしいよ。こうすると」
「この時間に初チャレンジするんだ」
「手間かけたくなったの」
「ココアに?」
「名前に」
「……ん」

「一人で寝ようとすると、変な音がする気がして」
「変な音?」
「うん。こう……肌と肌が擦れる音。手で腕を撫でるみたいな……こういう音。わかるかな」
「あー、わかる」
「もしかしたらわたしの中からしてる音かもって思ったらゾワゾワして」
「今はする?」
「しない」
「寂しいからじゃない」
「……そう思う?」
「僕はそのほうが嬉しいよ」
「呪いとかかもって心配してた」
「僕が見てるのにそんなわけないでしょ」
「うん。……そうかも」
「気になる?」
「ううん、ホッとした。誰かに恨まれてるんじゃないんだ」
「名前みたいな可もなく不可もないパンピーを実害の出るほど呪うやつなんていないだろ」
「うぐ……」
「それに呪いってのは単純な憎しみからしか生まれないわけじゃない。ものすごく好きな奴を呪詛師に呪わせるとかあった」
「えっ、好きなのに呪うの」
「そ。コワイね」
「……怖い。呪詛師に呪わせるって、ひどい。好かれた人は何もしてないのに」
「……」
「あっ。わたしも呪ってたかも」
「うん?」
「いや……う……ちょっと好きって思ったり、喧嘩した時怒るくらいなら全然平気だよね、呪いじゃないよね」
「ちょっとって?」
「え? あ、うー、ちょっとじゃないかも。すごく好きで、もうダメーって思うくらい好きでも、呪いたくなるくらいじゃなきゃ大丈夫だよね、ね」
「……」
「喧嘩とかも、一晩怒ってるくらいじゃ呪いにはならないよね。……なる?」
「それが何百何千人分積み重なってできるのが呪いだからね。一人分くらい誤差だ。それに、呪力の制御は今練習してるだろ」
「うん。でも、ほんとにすごいときはすごいんだ。もう何にも手につかないくらい頭一杯になるから、そりゃあ呪いにもなるかなってくらい……」
「僕が好きで?」
「……」
「……」
「ちがいます」
「そんな呪いに殺されるなら楽しいかも」
「ちがいます……」

「煮立たせないように見ながらちょっとずつ牛乳を足して」
「すごい。うまい」
「良い仕事だ応援係。カップあったまってる?」
「はい」
「ここに入れます。ホイ完成っ」
「洗い物」
「明日でいいって。熱いうちに飲まないなんて犯罪だよ」
「はい。いただきます」
「あっちのテーブルについて飲みなさい」
「はい」
「名前が僕のこと好きなんて当たり前なんだから照れなくていいのにー」
「バカ目隠し」
「してませーん」
「して。年中してて」
「そんなにそっぽ向かれると僕も照れるね」
「照れてないくせに」
「そう見えるならよかった」
「……あち」
「よしよし。フーフーしてやろうか」
「自分のしてなさい」
「フーフー」
「……おいしい」
「おいしい」
「すごい。悟、ほんとに初めて?」
「僕って料理でも最強なんだ」
「フッフフ、だね」
「今度はチョコ買って一緒に食べよう」
「マシュマロのせたい」
「いいね。注文しとこ」
「悟起こしてよかった」
「うん。僕の予想ではもうそろそろ任務入るしね。ちょっと手かして」
「はい」
「指あったまってきてる。寝れそう?」
「うん。……ふわ……」
「……。あくびうつった」
「うふは、ふふ。あのさ、ココアのついでにもう一つお願いしたいんだけど」
「どうぞ」
「仕事の電話がくるまで一緒に寝てもいい?」
「もちろん」






×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -