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【 研修旅行2日目 体験学習 】
朝目覚めて暫くは布団の中に入ったままスマホを見ると、タケからラインが届いていることに気付いた。送られてきていたのは布団に包まって眠っている柚瑠の姿を写した写真で、もっと送ってと要求しておいた。
俺の隣の布団には全然起きる気配がないタカがぐうぐうと気持ち良さそうに眠っており、ポカンと口を開けて寝ているタカの寝顔写真を撮っておはようという挨拶と共に柚瑠に送信した。
いつも早起きの柚瑠は勿論もう起きていたようで、すぐにおはようと返してくれた。早く会って顔が見たい。
【 タカの寝顔より真桜の寝顔見たい 】って返ってきて一人でこっそりと布団の中で照れた。
本日の予定である体験学習は1、2、3組と4、5、6組で前半後半に分かれて体験するという話を耳にした。
つまり柚瑠のクラスと一緒にできる。同じやつを選んでて本当に良かった。
わくわくしながら布団から起き上がり、洗面所へ向かった。すでに同じ部屋の男子が一人、先に起きていて洗面所から出てくる。
「あ、高野おはよう。」
「おはよう。早いな。」
「うん、…高野も。」
ちょっとぎこちない態度で話しかけられる。あんまり話したことがないクラスメイトだったからだと思う。
入れ違いに洗面所に入って歯を磨ことしている俺をそいつはジーと見てきた。
「…ん?」
「…あ、ごめん。寝癖が…。」
ジーと見られていたのは髪だということに気付き、自分でも鏡で見てみると髪があちらこちらに跳ねまくっている。いつものことなので手に水をつけてササッと手櫛で髪をといた。
歯と顔を洗った後に洗面所を出た頃にはタカ以外のクラスメイトはすでに起きて身支度していた。
私服に着替えてピアスをつけようとしているとタカが「ん〜。」と唸り声を出しながらようやく布団から起き上がる。まるで猛獣のようだ。
「タカ遅くね?朝ご飯7時からなんだけど。」
「はっ!?お前起こせよ!!!」
時計を見たら時刻は6時55分で、タカは慌てて洗面所へ走っていった。
鏡を見ずにピアスを付けるのはあまり得意ではないから、ピアスを持ちながら再び洗面所に行くとタカがガシガシと歯を磨いている。
ピアスをつけ終わって変なところがないか髪を触りながら鏡で顔を見ていたら、タカが「うわ…」と引いた声を出してきた。
「なに?」
「高野ってやっぱ自分のことかっこいいって思ってんの?」
「…は?なんで?」
「めっちゃ鏡見てたし。」
「タカは見ねえの?顎歯磨き粉ついてるけど。」
俺の言葉に、タカは慌てて顔を洗った。俺のこと言う前に自分の顔を見たらどうなんだ。
「高野ってタケにピアスつけろって言われてつけてんだろ?めんどくさとか思わねえ?それともやっぱ自分的にも似合うから付けてる感じ?」
「ピアスの穴もう安定してるしとりあえず毎日つけるようになった。…どうだろ、似合ってんのかなぁ?」
顔を拭きながらタカに不思議そうに聞かれ、鏡を見てピアスをいじりながら返事をすると、タカは「は〜なるほどな〜。柚瑠に聞いてみ〜。」と適当に言いながら洗面所を出て行った。
なんなんだよ、自分から聞いてきたくせに。
最後にもう一度だけ寝癖が残ってないか確認してから、俺もタカの後を追うように洗面所を出た。
朝食は部屋毎にテーブルが用意されていて、会場に着いた生徒から順にバイキング形式でパンやサラダ、飲み物などを好きに取ってから席に着く。
俺はそこまで食べる気が起こらずパンとスープと果物を少しだけ取ってテーブルに向かおうとしたら、「真桜!」と俺を呼ぶ声が聞こえてきた。
それは聞き間違うはずもない大好きな柚瑠の声で、振り向けば柚瑠がすでに朝食を前にしてお箸を持った姿があった。
「う〜す、真桜おはよう。見ろよ、柚瑠のこの朝飯の量。」
柚瑠の隣には当然タケもいて、柚瑠の目の前の朝食を指差す。近くまで歩み寄って覗き込めば、茶椀の中に白ご飯、お椀には味噌汁、プレートには目玉焼き、ソーセージ、ベーコン、サラダに納豆のカップまで乗っている。
「いや、食うだろ普通に。食い放題なんだから。」
「そうだけど朝からこの量はえぐくね?」
「んなこと言ったらタカなんか絶対もっとやばいって。見ろよ、あいつまだあそこで取りまくってるぞ。」
そう言って柚瑠の指差す方を見れば、タカがトングを持って何かをばさっと皿の上に乗せていた。うん。タカが大食いなのは分かってたしどうでもいいやとすぐに視線を柚瑠に戻す。
すると柚瑠もタカから視線を逸らして、俺の手にあるおぼんの上を覗き込んできた。
「真桜そんだけ?腹減るって。ソーセージあげるから肉も食っとけ。」
「あ、うん。ありがと。」
箸で1本掴んだソーセージを俺の皿に乗せてくれた柚瑠にお礼を言ったところで、ようやく飯を取り終えたタカがこっちに向かって歩いてきた。
「おう、タカおはよ。」
「おはよ。飯思いっきり取ってきたったわ。」
「だよな。俺も。」
柚瑠とタカがそう会話を交わした後、名残惜しいけど「じゃあまたな」と柚瑠に声をかけてから、自分たちのテーブルに向かった。
…タケいいなぁ、席代わってほしい。
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