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部活が終わってタカと一緒に中庭を通って駐輪場に向かっていると、中庭のベンチで寝転がって一人でスマホをいじっているイケメンが居た。
「おや?あそこで寝てんのは高野の真桜くんでは?」
「高野の真桜くんだな。一人か?何やってるんだ?」
「柚瑠のこと待ってんだろ?」
「一人で???健弘は?」
「さあ。」
近くを見渡しても健弘の姿は無く、喧嘩でもしたか?と疑問に思いながら真桜の元に歩み寄ると、真桜は俺に気付いてむくっとベンチから起き上がった。
「柚瑠おつかれ。」
「おつかれ。健弘は?」
「さっき吉川とデートしに行った。」
「はぁ?デート???」
意味不明な返事が返ってきて首を傾げるが、よく話を聞けばどうやら吉川の買い物に健弘が付いて行っただけのようだ。
「良かった、真桜が珍しく一人だったから健弘と喧嘩でもしたのかと思った。」
「してないしてない。」
「俺ら今から飯食って帰るけど真桜も行くか?」
「うん、行く。」
「よっしゃ〜400円のバーガー食うぜぇ〜。」
タカは最近テレビでうざいほど宣伝しているバーガーが気になって仕方ないようで、ウキウキしているタカと真桜の3人で学校の近くのお馴染みのファーストフード店に赴いた。
ボリューミーで美味しそうではあるけど、俺は別に400円を払ってまで食べたいとは思わなかったため、いつもよく頼むバーガーを2つ注文した。
タカは400円以上するバーガーのセットプラスナゲットまで注文しているため、1000円近く払っている。
真桜はミルクティーとポテトを頼み、それぞれカウンターで注文したものを受け取り2階の客席へ。タカが奥のソファー席に座ったため、俺がタカの正面に座ると、真桜は俺の横の席に腰掛けた。
「うわ〜、でっけ〜!まじ美味そう。」
タカはさっそく箱に入ったバーガーを手に取り、ガブッと大口を開けてバーガーに齧り付いた。
「タカさんお味はどうっすか。」
「うめえ!これはハマる!!!」
「うわー、金欠街道まっしぐらだわ。」
「てかそんな食って太んじゃねえの?家帰っても飯食うだろ?」
「…食うけど…。でもちょっと量減らすわ…。」
「それを言うなら俺も晩飯前にバーガー2個食ってるけどな。」
「柚瑠は大丈夫、ちゃんと筋肉になってるし。」
「おい!その言い方だと俺はただの脂肪ぶらさげてるって言ってるようなもんだぞ!」
「え?」
タカの『ただの脂肪ぶらさげてる』発言に対し、『そうだけど?』と言いだけな真顔でタカを見る真桜。俺はそんな真桜の横顔を見て、咄嗟に笑って食っていたものを吹き出しそうになり、慌てて口を手で押さえた。
「真桜笑かすなって。」
「え?俺?」
「お前のタカを見る目に笑っちゃっただろ。」
俺が勝手にウケてしまったってのもあるけど、何も言ってないのに俺に笑われて不思議そうにしている真桜もまた面白い。
「はー」と一息ついた後、ガブッとバーガーに齧り付いていたら、俺の正面に座っていたタカが何故か「あ、」と声に出しながら俺たちの背後を見上げている。
「ん?」と真桜がタカの視線の先を追うように後ろを向いた瞬間、「キャァ!高野くんじゃん!!!」と驚きと興奮混じりのトモの声が聞こえてきた。
「おぉ…」
バーガーを齧ってモグモグと口を動かしながら俺も後ろを見ると、そこにはトモと姫ちゃんを含む女バス部員が4人立っている。
「あ、お前らもタカの話聞いて食べたくなったんだろ。」
「へへっ、そうそう〜。」
トモたちが持つおぼんの上には、タカが食ってるものと同じの400円以上するバーガーが乗っており、そこに突っ込むとトモはヘラヘラと笑いながら俺の後ろを通りすぎ、タカが座るソファー席の隣に腰掛けた。
「俺らの横座るんかよ!」
「え〜いいじゃん。高野くん拝ませてよ。」
タカとトモがそんな会話をしている間に、ササッと姫ちゃんがトモの隣に腰掛け、もう一人居た女バスの友人が俺の隣の席に座る。てっきり姫ちゃんに俺の隣を座られるか?と思ったら一番席が離れていたから、内心少しホッとしてしまった。
「柚瑠いいな〜あたしに高野くんの隣代わって〜」
「嫌です。」
「ちぇー。」
女バスの友人とのこんなふざけたような会話をするのはいつものことで、それを聞いていた真桜もクスリと笑っている。
「もー高野くん居るとか聞いてないしー。私髪ボサボサなんだけどー!!!」
「別に高野お前の髪なんか気にしてないってよ。」
「分かってるけど私が気になるのー!!!」
真桜が居ることでトモたちがギャーギャーと騒がしすぎる。しまいには部活後で汗臭くないかとシャツの匂いまで気にし出した。
「えっ…、あたしも汗臭いかも…。」
自分のシャツの匂いを嗅いでいるトモを見て、姫ちゃんまで匂いを気にするようにシャツの首元を引っ張りだしてしまった。
「姫ちゃんは臭くないよぉ!可愛いから!」
そう言いながらよしよしと姫ちゃんの頭を撫でるトモ。そんな二人にバーガーを齧りながら視線を向けていたら、トモと目が合って「姫ちゃん超可愛いくない!?まじ女バスの姫!」と話を振られてしまった。
「うん可愛い。」
真桜が隣に居るこの場では非常に返事に困ってしまうが、まさか『そうでもない』なんて言う奴が居るわけない。
本音とお世辞、どっちも含んだ返事をすると、俺の正面に座ったタカからジッと何か言いたげな目で見つめられてしまった。
そんな目でこっちを見るな。
お前だって聞かれたら同じように返すだろ。
真桜はと言えば無言でトレイに敷いてある紙を見つめながらポテトを摘んでいる。
俺の返事を聞き、「でしょ〜?」とトモに頭を撫で続けられている姫ちゃんは、頬を赤くして恥ずかしそうに下を向いた。
頼むからそんな、分かりやすい顔をしないでくれ。
知らないふりをするのもこっちは大変なんだよ。
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