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去年は体育祭の色分けで俺のクラスは紫色だったが、今年の色は赤だった。そして体育祭前日、クラス全員に配られたTシャツは、まさかのピンク色のTシャツだった。それもかなり派手なピンクだ。

健弘がいるクラスはピンクを着る運命なのか?

俺はピンクのTシャツが似合いすぎている去年の健弘の姿を思い返してドン引きしながらTシャツを眺めていると、「それ誰がデザインしたと思う〜?あたし〜。」と吉川がぶりっ子しながら自分の顎に人差し指を突き刺した。


「まじかよ。派手すぎだろ、ないわー。…痛ッて!」


正直な感想を口にすると、バシンと顔にTシャツをぶつけられ地味に痛い。


「わ〜!ピンクだ!めっちゃ可愛いんだけど!!」

「ね!可愛い!!みんなの名前入ってる!!あとここのワンポイントも可愛い!!おしゃれ〜!」


俺の背後ではトモと美亜ちゃんのTシャツを褒めている声が聞こえてきて、吉川は「ふふん」と嬉しそうに笑っていた。どうやら女子からは好評のようだが男子の気持ちは俺と一緒の奴が多いだろう。


「柚瑠、俺の意見もちょっと取り入れて貰ってるんだぜ。」

「まじ?どこ?」

「吉川さんと俺の名前隣同士にしてもらった。」

「…お前告る前からもう気持ちバレてんじゃねえか?」

「そういう作戦よ、作戦。」

「ああそう。」


今までまったく健弘の気持ちに気付かなかったがそれもそのはず。俺の部活が終わるのを真桜と共に待っているうちに健弘は吉川との距離を縮めていたらしい。

健弘は俺と仲良くなったことによって吉川の性格が丸くなったって言うけど、俺は健弘と仲良くなってきた影響じゃないのか?と思う。

そう言えば最近の吉川は、性格が少し女の子っぽくなった気がする。去年のこいつは相当ひどかったぞ。真桜もよく知ってるはずだ。


健弘と吉川の二人なら、俺は関係が上手くいく気しかしない。





こうして、あっという間に訪れた2年目の体育祭。今年も体育祭日和の晴天だった。

朝の気温は随分涼しくなり、『もう秋だな』と季節の変わり目を感じながらチャリを漕ぎ学校に向かう。


いつも通り朝練を終わらせた後、持って来ていたクラTに袖を通した。


「うわ、柚瑠のクラTクソ派手だな。」

「俺もそう思う。」

「ほんとだ、ガチピンクじゃん。」

「去年の自分を見てるようだわ。」


男バス部員に口々に俺のクラTの感想を向けられる中、タカは真っ青なTシャツを着てそう言ってきた。

今年のタカと真桜のクラスは青組のようだ。

雲が散らばったイラストに【 2-6 sky blue 】と書かれたデザインがおしゃれなのかは俺にはちょっと分かりかねるが、ピンクのTシャツよりかは青の方が羨ましい。

しかしタカは俺の隣で「このTシャツ超絶ダサくね?」と小声で文句を言っていた。


タカと共に教室に向かうと、4組のピンクのクラTで溢れかえっている空間に約一名、sky blueが紛れ込んでいた。言わずもがな真桜である。

かっこいい真桜が着ているのだからまだマシに見える…わけでもないので、やはりタカが言うようにダサいのかもしれない。


「あー七宮やっと来たー!や〜んそのTシャツ超似合ってるよ〜、かわい〜、誰がデザインしたの〜!?」

「お前だろ。」


ただ俺にそう言わせたいだけの吉川に返事をしながら真桜の元に歩み寄ると、真桜はジッと俺の姿を眺めている。


「…柚瑠ピンク着てるの可愛い。俺も同じクラスが良かったなぁ…。」

「…可愛くはない。恥ずかしいからジロジロ見るな。」

「おーい、sky blueは早く6組行くぞー。」


俺とTシャツの色が違うことにションボリし始めてしまった真桜は、タカに呼ばれて渋々教室を出ていった。


前髪をパイナップルみたいに上にあげて、Tシャツに合わせてピンクのリボンを付けている吉川はいつも以上に恰好に気合いが入っている。


「七宮も余ってるリボンつける?」

「いらん。健弘につけてやれ。」


全力でお断りしたいピンクのリボンを吉川に差し出されたが、健弘を指差すと吉川はあっさり標的を健弘に変えてくれた。


「タケくんこれで髪結ぼ〜。」

「おお!結ぶ結ぶ!吉川さん結んで!」


こいつらまじでお似合いすぎるだろ。

二人揃うと派手度も増し増しだ。

お似合いだからさっと告って付き合っちまえ。


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