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「なんだよ?」
「俺永菜にどこまでやったら手ぇ出しても良いと思う?」
相談って言うからなんだと思えばそういう系だったか。どこまで、って聞かれても俺だってそういう系はさっぱりだから答えられない。
「さすがにえっち誘ったら怒られるかな?めっちゃやりたいねんけど。」
俺が何か返事を言う前に真剣な顔でそう口にしてくる香月が面白くて「ふっ」と笑ってしまった。こいつも永遠くんのお姉さんを前にして考えていることは俺と同じだな…。
「永菜ちゃん大学生やし良いかな?」
「高校生だった場合は我慢すんの?」
「んん…。あかんって言われたら我慢するけど…良いって言われたらしてしまうかもしれん。」
この言い方ならダメって言われたら本当にちゃんと我慢するんだろうな。俺は全然我慢できていなくて自分が恥ずかしい。永遠くんが『いいよ』って言ってくれてるから、相手が男なのを良いことにほいほい自分の欲望を出しすぎてる気がしてしまった。
「じゃあおっぱい触るくらいなら良いと思う?」
「ぶはっ!!!」
俺は聞かれても全然答えてやれてないのに次から次へと問いかけられる。香月からの問いかけに吹き出してしまった後だが、こう見えて香月は結構真剣に聞いてそうで笑ってやったらダメだな、と口を手で押さえた。
「いきなり触ったら怒られると思うけど…聞いてみるのが一番じゃねえの?」
「本人に?」
「うん。なんか、そういう空気になる時ねえの?」
「会えてもなかなか二人きりになれへんし、まずは密室で二人きりになるのが目標やな。」
「密室って…。なんか言い方やだな。」
そう言いながらも、自分だって考えてることは香月と大して変わらず、誰だって考えることは同じだなぁ。と少し安心してみたりもする。
「お前らは二人で部屋いる時般若心経ってやつ覚えてるらしいやん。永菜がおかしそうに喋ってたで。なに?般若心経って。」
「…えぇ?…あぁ、…あれか。永遠くんが適当についた嘘だよ。」
「嘘?じゃあほんまは何してたん?」
素朴な疑問、というように問いかけられたが、その問いかけに俺が黙り込んでしまったから香月は「…あぁ、ごめんやっぱなんでもない。」と謝ってきた。
俺たちが何をしてたのかを香月が察したのだと思うとそれもまた恥ずかしくて、「俺だってお前と考えてること大体同じなんだよ」と言い訳するように言えば、香月は「せやろな」とあっさりした態度で相槌を打たれてしまいさらに恥ずかしくなってきてしまった。
「…でも俺は相手が自分と同じ男だからかお前みたいにあんまり悩むことなくべたべた触ってしまってるな…。」
「そうなん?ええやん。お前と永遠の相性が良かったんちゃう?永遠は浅見と付き合う前から『光星にギュッとされんの好き〜』とか言うとったからな〜。…あっ、こんなん勝手に喋ったら永遠に怒られるかな。」
「…えっ……まじか。じゃあもっと触っていいのかな…。」
「ええんちゃう?永遠は浅見に何されても喜ぶだけやろ。」
香月のその発言を最後に休み時間終了のチャイムが鳴ってしまい、香月は「ああ良いな〜俺も永菜ちゃんに触りたい」とデカい声で喋りながらスポクラの教室に戻っていった。
『永遠は浅見と付き合う前から『光星にギュッとされんの好き〜』とか言うとったからな〜。』
『永遠は浅見に何されても喜ぶだけやろ。』
香月からそんな言葉を聞いてしまった俺は、顔がにやけてしまうのを必死に我慢しながら教室に戻る。
「あ、光星どこ行ってたん?」
「廊下で香月と喋ってた。」
「ふぅん。あ、さっき調理係のみんなと喋ってたんやけど夏休み中俺の家でたこ焼き焼く練習することになったわ!光星も来るやろ?」
「おー、そうなんだ。行く行く。」
かわいいかわいい永遠くんは、にこにこしながら「暫くの俺のご飯はたこ焼きやなぁ〜」と嬉しそうにしている。たこ焼き好きなんだなぁ。
俺はさっき香月から聞いた話があるから余計に永遠くんのことが好きで好きでたまらなくなってしまい、もう早く永遠くんに触れたくて、二人きりの時間が来て欲しくてしょうがなくなってしまったのだった。
こうして、永遠くんとの旅行の日を楽しみにしながら日々を淡々と過ごし、文化祭準備に取り掛かっているうちにあっという間に終業式の日を迎え、夏休みに突入する。
夏休み中に何日かクラスで集まる日を決めたため、それ以外の日は自由だ。
永遠くんは夏休みに入る前にクラスメイトからラインを聞いたり、調理係でグループラインを作ったり、イキイキしていて楽しそうだ。そんな永遠くんの姿を見ていて微笑ましいと思う反面、もう嫉妬はしないものの早く永遠くんのことを一人占めしたくて、俺は永遠くんをうんと一人占めできる旅行の日をまだかまだかと心待ちにしていた。
そして、気温は外にいるだけで汗が流れてきてしまうほどのうんざりするくらい暑い7月下旬、永遠くんと京都へ旅行する日をようやく迎える。
俺は友達と旅行すら行ったことなくて、好きな人との旅行なんて勿論初めてだったから、前日は恥ずかしいことに子供みたいにわくわくしてしまい、なかなか寝付くことができなかった。
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