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るいはあんまり見に来てほしくないみたいだったけど、俺が見に行かなくてどうする。ということでやって来た、るいが通う大学のミス・ミスターコンテスト!

周りは人、人、人!
それも圧倒的に女の子の人数の方が多い。


『さあ!今年もやって来ました!ミス・ミスターコンテスト!』


司会が舞台で喋り出した時点ですでに会場は盛り上がりを見せている。


「ちょ、航見て見て見て!あの子“拓也”って書いてあるうちわもってる!!!」

「え、まじ?」


“拓也”と言えばエントリーされた生徒の中で一人しか居ないはず。


「拓也くんがんばってぇ〜!!好きーッ!!!」

「……すっげー、あれガチファンじゃね?」


俺は一緒に見に来ていたなっちくんと、女の子のあまりのガチっぷりにドン引きした。


「航もうちわ持って来ればよかったのに。」

「バカ、俺がそんなん持つともっとガチすぎるだろーが。」


本音はめちゃくちゃ持ちたいけどな。
るい愛してる!って書いてあるうちわ。


しっかしすげーな。周囲からやたら『るいくん』『拓也くん』と口々に身内の名前が飛び出してくるから笑いそうになる。中には『仁くん』って名前も出てきてガチで笑いそう。


「あたし絶対るいくんに投票する〜!るいくんいつも仏頂面なのにイケメンすぎ〜!」

「…ぶふっ、うける。るいディスられてるぞ。」

「いやディスられてないでしょ。あの子絶対矢田くんのファンじゃん。航自分の都合良く解釈すんなよ。」

「チッ。」


クソ、人のダーリンに向かって仏頂面って言いやがったんだぞ、どう聞いてもディスってるわボケ。

…とまあ内心毒を吐きながらも周囲の様子を観察するのをやめられないのはうちのダーリンが人気者で俺は鼻が高いからだ。


「やっぱこの様子じゃ黒瀬矢田の一騎打ちかな。」

「だなー。2人目当てで見に来た他校生結構居るらしいぜ。」

「うげ〜、だからこんなに人多いんかよ。」


人の多さにげんなりしながら、そんな話をしている在校生らしき男子二人組。彼らにとったら迷惑な話だろうな。すまんな、俺も2人を見にきた奴らの一人だ。


『それでは!まずはエントリーナンバー1番!』


手を振りながら登場してきた出場者に歓声が上がる。

さすがにミスターコンにエントリーするだけあって自信があるのだろう。爽やかな笑顔を浮かべながら愛想を振りまいている。

が、悪いがるいの方が間違いなくかっこいい。身内贔屓では無いぞ。


そしてエントリーナンバー2番の人も同じく。


「ふっ、るいの足元にも及ばねえな。」

「うわー、航うっぜー!」


出場者を順番にディスっていく俺を、なっちくんが罵りながらも笑っている。


『エントリーナンバー3番!真山仁くん!』

「こいつもびみょうだな。ん?おっと仁だった。」

「あはは!今のぜってーわざとだろ!航いい加減にしろ!仁くんもちゃんと応援しろよ!」

「一応『仁くーん!』って黄色い声聞こえるな。仁のくせに。」

「航仁くんの評価厳しすぎだから!仁くんも高校の時人気だっただろ!」


仁は調子良く「イェーイ!」と満面の笑みを浮かべてダブルピースしながら声援に応えていた。

…まあ、今のところ仁が一番かな。今のところな。あ、これは身内贔屓かもしれん。


そして順に出場者が舞台に現れ、次に出てきた人物に今日一番の歓声が上がった。


『次はこの人!昨年のミスターコングランプリでもあるエントリーナンバー7番!黒瀬 拓也くん!』


「キャー!!!拓也くーん!!!!!」

「やっぱ黒瀬くんが1番!!!」

「好きーッ!好きーッ!愛してる!!!」


うちわを持った子がうちわをぶんぶん振り回し、暴走が止まらない。


拓也ちゃんは余裕の笑みを浮かべながら軽く手を振り、出場者の列に並んだ。


「…会長やっぱオーラ違うなー…、俺らの会長すっげーな。」

「“俺らの会長”もう一人控えてるからな。」


るいは今、どういう心境で呼ばれるのを待ってんのかな。このあと仏頂面で登場するるいを想像して、俺は一人クスリと笑った。


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