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「るいくん、仁くん、もちろん2人ともミスターコンエントリーするよね!」

「……はい?」

「ミスターコン?あぁ!そういやこの大学そんなのあるらしいな!」


大学の講義室へ到着し、仁と隣同士で席に座った直後のことだった。ザッと前が見えなくなるほどの人数の女の子に囲まれて、何事かと思えば話しかけられた内容はそんな内容で、俺は自分でもよくわかるほど邪険な態度で目の前の子たちを見る。


「なんだそれ、出ねーよ。」


そんなわけのわからない行事に参加するわけがない。さっさとどっか行ってくれないだろうか、と思いながら授業を受ける準備をするために鞄の中から筆記用具を取り出そうとするが、数名の甲高い声が一斉に耳に突き刺さり動作を止められた。


「えぇーっ!!るいくんが出ないなんてありえない!」

「るいくん出たら絶対盛り上がるのに!」

「あたしるいくん推しなのに!!」

「…いやいやそんなん言われても…。」


机の上に手を置かれ、食い気味に話をする女の子たちの勢いに負けそうになる。


「面白そうじゃん!るい出よーよ!」

「出たけりゃお前一人で出ろよ。」

「るい出ないのに俺だけ出てもつまんねえだろ!」

「うんうん、仁くんもっと言って!」


うわ、めんどくせえな。仁のやつ乗り気かよ。
だいたいミスターコンってなんだ。
自分の得意技とか大衆の前で披露するやつじゃねえのか。そんなのに出るなんてありえない。

まず俺に得意技はない。


「絶、対、嫌。他当たって。」


きっぱり言い切ったところで、タイミング良く室内にチャイムが鳴り響き、まだ何か言いたそうにしながらも女の子たちは散らばった。


「ちぇーっ、つまんねー。あ、そうだ友岡くんにお願いしてみよ。」


隣で仁がスマホをいじりながらぶつぶつ言っているが、俺はとことん知らんぷりすることにした。

何を言われても、出ないものは出ない。





「出れば?」

「え?」


……いやいや、何故航がその話を?………、あ、仁か。このクソ野郎。


夕飯の時に航から突然出された話題に、白ご飯を口に入れようとしていた手が止まった。


「拓也ちゃんも出るだろ?仁とるいも出て3人で3位まで取れたら俺らの母校最強じゃね?」

「俺航が会長のこと拓也ちゃんって呼ぶのあんまり好きじゃない。」

「あ、話題逸らし無し。」

「別に逸らすつもりは無かったけど。」


いつまでも二人が親密な関係であることに、少しヤキモチを妬いてしまうのだ。


「じゃあるいがミスターコンで1位取ったら呼ぶのやめる。」

「…え、いや、だから出ねえよ…。」

「あ、分かった。拓也ちゃんに負けると悔しいからだ〜。」

「は?そんなんじゃねーし。てかまずあの人には勝てねーよ。」


ミスターコンで会長に負けて悔しい、という気持ちは正直これっぽっちも無い。それなのに航は俺を煽ってくる。


「やる前から諦めんなよ!俺はるい一択だぞ!俺の愛しいるいきゅんが負けるはずねえよ!」


いやいやそもそも諦めるとかそういう話でもないけど、航の言葉が何故か俺の心を揺さぶる。


「良い機会なんだから俺の自慢のNO.1を、みんなに見せびらかしてもいいだろ!?」


嬉しいこと言ってくれてるけどなんか航ちょっと笑いこらえてる気がして微妙な気持ちになる。


「…いや、でも…、」

「男に二言はない!!!!!」

「いや俺まだ一回も出るって言ってねえけど!?」

「グランプリ取ったらいっぱいチュッチュしてあげるよダーリン?」

「出ます。」



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