「名前おねーちゃん」



担任の長い話が終わり漸く帰れると宿題を鞄に入れていると、ふと視界が暗くなり目線を上げると目の前にグリーンアップルの香り漂う派手な赤色と眠そうな銀色が映った。



「…その呼び方やめてよ、気持ち悪い」
「なんだよひでえな。弟くんと仲良く出来てるか心配してやってんだろい?俺らの可愛い後輩だからな!」
「で、一週間経つが赤也はもう懐いたんか?」
「・・・」
「おい」
「なんじゃ、懐いとらんのか」



切原赤也くん、立海大附属高校二年D組。英語が苦手で一言で表すなら馬鹿。男子テニス部レギュラーでエース。格闘ゲームばっかやってるやんちゃなワカメ。悪魔にも天使にもなるとか。それが赤也くんの先輩・・・、同じクラスの丸井と仁王に聞いた情報。そんな彼は、一週間前に私の弟になりました。再婚だなんてテレビでの中の出来事だと思っていたから変な感じ。お父さんの突然の再婚にはびっくりしたけど、相手にも子供がいて一個下の男の子と聞いた時は衝撃的だった。しかもその弟となる子がまさかの同じ学校の後輩で、アイドル集団かと言いたくなるような大人気男子テニス部のレギュラー切原赤也だと分かった時はげんなりした。ファンクラブとかあるみたいだし、厄介事は出来るだけ避けたいのだ。切原と名字を変えて注目も浴びたくなかったし、学校側も混乱するだろうと配慮してくれて卒業するまでは旧姓を名乗る事にした。それなのに在ろう事か切原赤也は、私の存在を知ると自分の先輩に名字名前って人が俺の姉になったんスけどどいつでどんなやつだと聞き回るから今まで大して仲良くなかった丸井くん達に話しかけられるようになってしまった。その所為かここ数日みんなというか女子からの視線がイタイ。



「名前ちゃん憂鬱そうじゃの。赤也のおる家に帰りたくないんか?」
「・・・名前で呼ばないで」
「んじゃ俺らと遊んでから帰る?丁度今日部活休みになったし」
「名前ちゃんと遊ぶん初めてじゃの」
「仁王くん、何回も言うけど名前で呼ばないで。それに、遊んで帰らない」
「つれないのう。赤也のお姉様じゃき仲ようしたいだけナリ」
「そうそう!」



赤也の姉じゃなければ仲良くしないって言ってるのと同じだよそれ。男子テニス部レギュラーの人気は半端ないから、ファンの女の子達に敵視されるのは怖いし関わりたくないと思ってたけど逆にそう言われるとちょっと傷つくな。
とりあえず帰ってお母さんの夕飯の支度手伝おうと思い、鞄を手にとって二人にまた明日と伝えて教室を出る。再放送のドラマ間に合うかもと思って少し早歩きした。部活がないって事は赤也くんも同じな訳だから、早く帰ってくるのかな・・・。赤也くんって呼んでもいいのかな怒るかな?それより今日の夕飯何かなー。



「なあ名前んちの夕飯今日何?」
「私も今考えてたとこ」
「ハンバーグがいいぜよ」
「食後のデザートにケーキとかでねえの?」
「デザートはたまに・・・ん?」



校門を出て少し歩いた頃、ハッと思って後ろを振り返れば何故か丸井くんと仁王くん。なんでいるの!?



「今日赤也んち行こうと思って」
「ついでに名前ちゃんの部屋も見たいと思って」
「ついでのついでに晩飯ご馳走になろうと思って」
「あ、安心しんしゃい。赤也ママにはさっき許可得たナリ」



いつの間にとか図々しいとか色々思う事はあったけど、私を置いて先に歩く二人に抗議する気力はなかった。


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