「Trick or Treat！」
「・・・は？」
「名前ちゃんコスプレは？」
「ああ、ハロウィンか」
「お菓子くれんとイタズラすんでーってヤツやな」
「テレビとか遊園地とかの中だけやと思てましたわ。言うヤツほんまにおるんスね」
「だから、Trick or Treat！」
「・・・なんやねんこの手」



10月31日。ハロウィン。コスプレはする勇気ないからとりあえずお決まりの台詞を言ってお菓子もらっちゃおう作戦を放課後実行中、オサムちゃんには食べかけのペロペロキャンディを渡されたので丁重にお断りして逃げてきた。新しいの出せや！おっさんの食べかけを乙女に渡すとか意味わからんねんけど！オサムちゃんはイタズラ決定と頭の中でオサムちゃんの顔に罰じるしをつけていると目の前に見知ったメンツ。お決まりの台詞を言えば予想外の反応が返ってきた。一氏なんてヤンキー宜しく睨んできた。おまけに何やねんこの手邪魔やと、あたしの手がはたき落とされた。毎回思うけどあたしの事嫌いやんな怖すぎ。



「忍足あんた正解言うたやん」
「そんくらい知っとるわ」
「謙也もそこまでアホちゃうやんな」
「白石までボケる？ほんまに分かってへんの？」
「名前ちゃんバニーちゃんとかせん？あたし化粧したるで！」
「いい！いらない！小春ちゃん話ややこしくなるから今黙ってて」
「おいこら名字！小春に黙れ言うな謝れ！」
「あーもうすいませんもういいですあたしが悪かった！」
「心込めてへんやろ！」



あたしはただお菓子がほしかっただけだ。なのになんなんこいつら。忍足に限ってはお菓子くれなきゃイタズラするぞの正解言ったよね分かってるやんこいつらどんだけ。ボケてるん？天然なん？こいつらに限って天然とか絶対あり得ん。



「名前」
「へ・・・っ！」



突然名前を呼ばれ、後ろからぎゅっとされると同時にあたしの頭部に何かがあたった。小春ちゃんが頭にちゅーとかあたしもされたいとかなんとか言ってるから頭にちゅーされたんだなと他人事のように思っていた。ふんわり太陽の匂いがして振り向けば柔らかな笑顔を浮かべる千歳がいた。



「逆イタズラ成功ったい」
「なんかちゃうそれ！」
「みんな名前からのイタズラ待っとっと」
「え」
「千歳どこ行っとったん」
「いつのまにか寝とったばい」



突然の千歳の登場と、あたしのイタズラを待ってる発言にポカーンとしてしまう。それに気付いた白石が俺らお菓子持ってへんねんと、ちょっとニヤついた顔をしていてつい後ろへと一歩下がった。が、後ろにいた千歳にトンと当たっただけだったが何故か両腕を掴まれた。



「え、ちょっと待って」
「待てん」
「ごめんなあ、名前ちゃんちょっと我慢してや」
「何を！？」
「で、名前先輩は俺たちにどんなイタズラしてくれるんスか？」
「待って落ち着いてTrick or Treatってイタズラを強要するものちゃうよ！？それにわたしイタズラしたい訳じゃ」
「名字、もう黙ろか」



両腕掴まれて後ろも前も囲まれて逃げ道がなくなったあたしの目の前には、やっぱりヤンキーみたいな怒ってんのか笑ってんのか分からん顔を浮かべた一氏がいて。あたしの凄まじい叫び声は翌日噂になるくらい酷かったらしい。





「なあ白石？めっちゃ噂になっとるけど昨日名前と何したん？ワイにも教えてや」
「金ちゃんにはまだ早いな」
「白石のいじわるあほー！」



結局彼らに逆イタズラをされてしまったあたしはもうお嫁に行けないと思う。何をされたかはご想像にお任せします。