「今日の日直〜!後で職員室来て」



新しくできたクレープ屋さん行こう、プリ撮って帰ろう、どっか寄って行こう。みんなの楽しそうな声をBGMに帰る準備をしていると担任の突然の呼び出しにびくりとする。最悪、今日の日直は私だ。相方としてもう一人いるけど多分、ていうか絶対部活に行ってしまうと思う。いつもそうだし。現に今も先生に見向きもせず談笑中だ。担任は放課後、日直に雑務をさせることでクラス内では有名なのだ。今日は何をさせられるんだろ。



「名前、終わるまで待ってようか?」
「みっちゃん!ううん、多分遅くなると思うから今日は先部活行ってていいよ、ごめんね」
「そっか・・・、あいつも手伝ってくれたらいいのにね」
「まあしょうがないよ、王者立海だし」
「部活あるのはあたしらも一緒だけどね。顧問に伝えとくね」
「おねがーい!」



ばいばーいと手を振り合って、みっちゃんが彼にガン飛ばしたのは見て見ぬ振り。
鞄は置いてそのまま職員室へと向かう。失礼しますと担任の元へと向かうと、机の上には担任が見えないくらい積まれた紙の山がある。まさかな・・・。



「せんせ、なんですか?」
「おお名字来たな。分かってると思うが、ホッチキスとめるの。頼むな」
「・・・全部ですか?」
「いや、そっちは別物だ。こっちの方」



山積みの方とは反対のちょこんと数束ある資料を手渡された。3枚綴りでホッチキス留めをクラス分。全クラス分じゃないだけマシだ。資料を落とさないようにしながらまた教室へと戻り、閉まっていた扉に手をかけた。



「・・・っ!」
「ん?あ、帰ってきた。今日はそれ?」
「なんじゃ、沢山あるんかと思うとったが少なかったのう」
「ははっ、折角残ってもらったけど仁王いらねえな!」
「俺は用無しじゃ。部活行ってよか?」
「んー」
「また後でな、頑張れブン太」
「おー」



び、びっくりした。
名字さんはまた明日じゃと私の肩をポンと叩いて横を通り過ぎて行った仁王くん。うんとしか言えなくて暫くその場で固まる。部活は?と思ってポカーンとしていると、日直の相方である丸井くんに何突っ立ってんの?早くやろうぜと言われ慌てて丸井くんの座る席へと向かう。そうだよね、早く部活行きたいよねごめんね丸井くん。さっきまで仁王くんが座っていた席に座ってからハッと気付く。何も考えずにここに座っちゃったけど自分の席でも出来るよねこれ。なにこいつ仁王の席座ってんだとか俺と仲良く作業するつもり?とか思われたかも。やば。



「クラス分だけ?だよな、これ」
「え、あ、うん」
「少なくても面倒くせえな」
「あー、丸井くん部活行ってもいいよ?」
「は?」
「あ、いや、部活行きたいだろうから。少ないし、これ」



これ、と思ってた以上に少なかった資料を指差す。これなら1時間あれば終わりそうだし。すると丸井くんはなぜかちょっとムスッとして、あのなーと続けた。



「折角俺が手伝おうと思って残ったのに、その言い方はねえだろい?」
「ご、ごめん。嬉しいけどでも日直の時、放課後頼まれるといつも先部活行ってるよね?」
「あー・・・その時はその時。今日は今日!気にすんなって!」



いや、気にするよ。なんで今日は手伝ってくれるんだろうって謎すぎて。私的にはすっごーく助かるけど。とりあえずやっちまおうぜって爽やかに笑う丸井くんにドキッとしたのは気のせいにしてホッチキスを手に取った。資料を三種類一枚ずつ順番に取って一つにして置いていく丸井くん。それにホッチキスで留めるのが私の役目。右側で留めるのか左側なのか迷っていると、丸井くんに左でいいんじゃね?違ったら俺が謝っといてやるよとまた爽やかに笑いかけられて、なんで今日こんなに彼は優しいんだと不思議に思った。丸井くんが冷たいとかそういうイメージはないけど、周りの女子には割と素っ気ないイメージはあった。あ、それを冷たいって言うんだっけ。でもなんか、違うんだよね。



「あー、あのさ」
「ん?」
「名字・・・さん、彼氏、いねえよな?」
「ほへっ?」



あと数人分で終わるなって淡々と作業していると突然の質問に変な声が出てしまった。それにツボったらしく丸井くんはくくって肩を震わしている。すごく恥ずかしい・・・ていうか、笑いすぎだよ。一通り笑った後、丸井くんは俺と仲良くする気ある?って聞いてきた。



「え・・・?」
「俺は、名字さんともっと仲良くなりたいんだけど、どう?」
「え、どうって」
「俺がなんで今日だけ手伝ってるか分かんない?」
「う、うん」
「想像もつかない?」
「うん」
「ショック。まあ、いいや。これからシクヨロ」



ファンの子が見たら失神するだろう素晴らしいウインクをされ、またもポカーンとする私に丸井くんはほんと名字おもしれえって出来上がった資料を手にした。慌てて追いかけて丸井くんと呼んだが、また明日なと顔だけこちらに向けて手を振って行ってしまった。


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