「名字」


眠いなとぼーっとしながら校門をくぐって校舎へと歩いていると、ふと後ろから名前を呼ばれた。
顔だけを振り返れば一年の時同じクラスだった柳くんがいた。


「あ、柳くん久しぶりだね!おはよう」
「ああ、おはよう」
「テニス部頑張ってるね!」
「常勝、だからな」


常勝立海大。応援コールにもあるようだし、彼らにはかなりのプレッシャーなんだろうなと柳くんを見続けた。一年の頃に比べると身長はすごく伸びていて少年という可愛らしさはもうない。相変わらず何考えてるのか分からなくてどきどきしてしまう。部活に厳しいとやはり勉強面でも厳しいようで、テストで点数が悪いと部活をさせて貰えないとか。柳くんは秀才だから大丈夫じゃないのかと疑問に思ったらそれが顔に出ていたらしく、後輩が危ういと教えてくれた。


「俺たちだけではお手上げ状態だ」
「へー・・・た、大変だね」
「ああ。ところで、名字は今日の放課後空いているか?」
「え、特に何もないけど」
「そうか。なら放課後図書室へ来てくれないか?」
「えっ?」
「俺の助手をしてほしい」
「助手・・・?なんの?」



来てからのお楽しみだと柳くんはふっと笑ってそのままテニスコートの方へいってしまった。なんの助手なんだろ。
柳くんの助手というのが気になってそればっかり考えているとあっという間に放課後になっていた。やばっ、丸井くんとせっかく隣同士なのに全く違う人の事考えてた・・・。


*


「のう、名字さん今から暇?」
「え、あ、ごめん先約が・・・」
「そうか、残念じゃ」
「・・・ごめん」
「ブン太も残念がるの」


帰りの号令が終わって筆箱やら宿題やらを鞄にしまい図書室に行こうと準備をしていると、ふと横からすごく視線を感じるなと思ったら丸井くんの席に座る仁王くん。すごく、ガン見されている。仁王くんに見られてると思うと動きがぎこちなくなって心臓が急激に速くなった。今日部活がないと言うのは先程丸井くんとの会話で盗み聞き済みだ。柳くんも言ってたと思う。丸井くんはどこ行ったのかなとか、なんでずっとこっち見てるんだろとか気になる事はあるけれど帰らないのかなと思ってとりあえず挨拶すると、仁王くんに問いかけられた。柳くんの名前は出さずに先約があるとだけ伝えると、丸井くんが残念がると言われてしまった。なんで丸井くん?柳くんと約束というか勝手に言われただけだから丸井くん優先しようかなと思ったけど後が怖いので気になりつつも仁王くんとお別れして図書室へと向かった。




*



そっと図書室の扉を開けて柳くんを探す。あ、いた。彼は一番奥の端の机に黒髪の子と座って何やらしていた。誰だあれ。というか教科書開いてペン持ってるんだけどもしかして、


「・・・、名字こっちだ」


やっぱり帰ろうかなと思ったところで奥の柳くんと目があった。気がする。目開いてないけど明らかにこちらに顔を向けた。渋々近寄っていくと、柳くんの前に座っていた子が誰っすか?と柳くんに聞いた。


「一緒に勉強を教えてくれる俺の助手だ」
「・・・」
「へー、よろしくお願いします!」
「あ、お、お願いします・・・」


まさかと思ったらやっぱり道連れにされた。お手上げって言ってたもんね。でもね、


「柳くん」
「どうした?座っていいぞ」
「いや、あの・・・一年の時同じクラスだったから知ってると思うけど、わたし」
「勉強が得意でないことは分かっているぞ」
「え」


柳くんの隣は緊張するのでお隣失礼しますと黒髪の子の横へと腰をおろし、申し訳なさげに伝えたら柳くんは何を今更とでもいうような感じだ。なんかひどい。ちょっと落ち込む。


「え!?じゃなんで呼んだんすか!?」
「まあ、ただの助手として呼んだだけだからな。俺が席を立った時の為に、赤也を監視するのにそこに座っているだけでいい」
「先輩ひどいっス」
「ああそれから、後から来る助手の相手をしてくれるだけでいい」
「後から?」
「あ!もしかして先輩たちっすか?」
「ああ」


数学も教えてもらおうと喜んでいる赤也くん。てか、まだ助手いるなら私いらなくない?って思いながらも赤也くんとやらを見つめる。

「あ!俺二年の切原赤也っす!よろしくお願いします!」
「三年の名字名前です。よろしくね」
「ちなみ赤也、名字はB組だ」
「え!じゃあ先輩たちと・・・あ、噂をすれば!」


先輩こっちですよー!と嬉しそうな赤也くん。人懐っこいのかな。丸井くんとはまた違う笑顔だけど、本当に嬉しそうで好きな笑顔だな。背後に人の気配がしたので先輩って誰だろと思いながら後ろを振り向いた。


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