最近苛々してるように見えるが何かあったのか? と言われてしまった。一年のとき同じクラスだった仲良しのかすがに。そして久しぶりに遊びに行ったのに、彼女にそう言わせてしまったことがなんだかショックだったのは記憶に新しい。苛々しているように見えている原因を彼女に話したら、本気で心配してくれた。


そしてその原因が今あそこにいる。放課後の渡り廊下というあんな目立つところでよくいちゃつけるな。女の子の肩を抱いて髪に顔を埋める姿は、明らかに女慣れしているものだ。うわ、ちゅーしてる。ちなみに前見た娘と違うじゃないか。何故かばっちり一部始終を見てしまった自分に何やってんだと心の中で言ってから、昇降口へと向かった。そこで今、というか最近一番顔を合わせたくない、さっきまで見ていた人物に会ってしまうこととなる。


「おい」
「何か用ですか」
「盗み見してたろ。趣味わりィな」
「見たくないけど見えちゃったんだよバカ」
「アイツとは偶々会っただけだ」
「会ってあんなことするって……外国人か」
「してやろうか」
「勘弁して下さい」
「テメェなんかには絶対しねえ」
「なら言うなよ」
「ほんとうぜえな。死ね」
「………」


脱いだ上履きを持ち上げようとあっちが腰を折ったのと同時に昇降口を出た。なるべく速くと意識して足を動かす。すぐに死ねという奴は嫌いだ。あの男に関しては良い噂を聞かない。何十人の女の子と身体の関係があるとか、泣かされた子は数えきれないとか。なのにあの男が慕われてるとか人を惹きつけるとか、本当に理解できない。なんでここまで嫌なんだろう。女の子誑かしてる軽い男は確かに嫌いだけど、普通なら他人のことだからと私は何も言わないのに。あの男に対して苛々が口に出てしまうのは、最初に話した印象が余りにも悪かったからだろうか。死ねと言われたし。本当に生理的に無理なんだろうな。


「ほんと、関わらないようにしよう」


そう思うのに何故か上手くできない自分が情けない。


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