俺様と旦那が先に帰った昨日、伊達の旦那と名前ちゃんは初めて言葉を交わしたらしい。が、それが余りにも最悪なものだったそうだ。不機嫌そうな顔の名前ちゃん。彼女がキレたら言葉使いが別人のように悪くなり、暴言を吐くことは既に知っていたが、初対面でそれを見た伊達の旦那はある意味すごい。


「なるほどねぇ」
「それで喧嘩になったのでござるか……」
「あそこまで嫌な奴だと思わなかった」
「まあそれは伊達の旦那が悪いよね」
「でしょ!? いきなりあんなこと言われて頭にこないほうがおかしいっつうの!」
「お、落ち着いて下され」


あの旦那に落ち着けと言われるほど今の名前ちゃんは落ち着いていない。怒りに任せてストローを吸ったらしく、赤いりんごが描かれた紙パックがへこんでる。


「なんで二人は伊達なんかと仲良いの? 特に幸村は合わなそうなのに」
「何だろ、腐れ縁ってやつかね」
「政宗殿は確かに女子との交友の仕方や口は悪いが、それ以外の努力家で責任感の強いところなどは見習うべきと思っておりますぞ」
「男子にも結構慕われてるよね」
「な、なんで……」
「わあ、納得できないって感じだね」
「私はたぶん、生理的に無理なんだ……!」


基本誰かの悪口なんか言わない名前ちゃんがこんな風に言うなんて、伊達の旦那はよっぽど嫌がられちゃったみたいだ。苦笑を漏らしていると、噂をすればの伊達の旦那が入ってきた。気づいた名前ちゃんは面白いくらい嫌そうに顔を歪ませる。彼女のこんな顔滅多にみれない。


「どうしたの?」
「古典の教科書貸してくれ」
「持っておりますぞ。取ってきまする」


席を立った旦那を見送る。机の横に立つ彼を見ようともしない名前ちゃんと、睨むように彼女を見下ろす伊達の旦那。彼女の前の席から見ていて、これは視覚的にかなり面白い。


「よお」
「……どうも」
「あんな暴言吐いた癖に、随分大人しいじゃねえか」
「名前ちゃん普段は暴言吐かないから」
「猫被ってるからだろ?」
「違うくて、キレるとああなっちゃうんだって」
「へえ。まあどっちにしろ良いもんじゃねえな」
「伊達くんに関係ないでしょ」


冷たく良い放つ名前ちゃん。今日は珍しいものばっかり見れる。


「人がいるここじゃ叫べねえってか」
「私基本そんなことしないんで」
「Ha! 笑わせんなこの阿婆擦れ!」
「はあ!? 何を根拠に言ってんだ!」
「男好きなのが滲み出てんだよ!」
「出てねえわ! てかお前に言う資格ねえだろうが!」
「ちょ、二人共!」


ぎゃあぎゃあ騒ぐ二人は完全に注目を集めてる。あの伊達政宗と、普段感情的になったりしない名前ちゃんが言い争ってるのだから言ってしまえば当前だ。おまけに言葉が汚いのでみんな引いてるし半笑い。俺の制止も聞かず順調にヒートアップしてる。


「Go to hell!」
「お前がな!」
「ちょっと落ち着いて!」
「テメェはすっこんでろ!」
「コイツが悪いんだよ佐助!」
「わかったから! とりあえず伊達の旦那は自分のクラス帰ったら? ね?」
「政宗殿、教科書を」
「ああ、Thanks」
「二度と来んな!」
「ふざけんなブス! 教科書返しに来るからな!」


そう言い残して伊達の旦那は去っていった。あの男が女の子相手にあんな風に言うことはまずない。これは相性的なものが最悪な二人が出会ちゃったのかも、と思わず顔を引きつらせてしまった。
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