昨日怒ってしまった名前ちゃんは、今日はあからさまに伊達の旦那を避けていた。いつもは旦那がこの教室に来たとき、嫌そうながらも席を外すことはしなかった彼女が、今日は伊達の旦那が現れた途端教室を出て行ってしまう。それが休み時間ごとに起こるもんで、避けられていると気づいた男は不機嫌そうに眉を寄せていた。そんなことを繰り返すうち、いつの間にか放課後だ。皆部活に向かい教室には旦那と名前ちゃんと俺様しかいない。


「伊達の旦那がずっと探してたよ」
「うん。でも会いたくなかったから」


また死ねって言われるかもしれないしね。無表情でそう言って帰り支度を進めていく彼女。俺たちに向けられているわけではないが、冷めた目は端から見てても少し恐い。伊達の旦那に対しては例外として、彼女は普段怒らない分尚更だ。困り顔の旦那と顔を見合わせたとき、教室に入ってくる男の姿が見えた。感づいていなかった名前ちゃんは、男が隣にきて漸く気づいたらしい。伊達の旦那を見て円くなった目が、そのあといつかのように冷めたものになる。


「なにか」
「死ねって、もう言わねえ」
「……は」
「今まで悪かった」


基本謝るなんてしない男の謝罪に俺や旦那まで驚いた。ばつが悪そうに顔を歪める伊達の旦那に、さっきまで恐い顔だった名前ちゃんもぽかんとしてる。昨日のことがあり、伊達の旦那は自分の言葉を反省したらしい。今日名前ちゃんを探してたのは謝る為だという俺様の予想はやっぱり当たってた。


「……どうしたの? 急に」
「悪かったと思って謝りにきたんだろうが!」
「そっか」
「……なんだよ」
「いや、伊達くんが謝ったりすると思ってなかったから」
「俺だって悪いと思ったら謝る」
「私もカッとなってごめん」
「は、」
「謝りにきてくれて、ありがと」


さっきまでの無表情が嘘の用に控えめに笑った名前ちゃん。良かったと旦那と笑い合う。男の方もほっとしていることだろうと視線を向けて、思わず目を疑った。だってあの伊達の旦那が、目を見開いて耳まで真っ赤にしていたのだ。


「……ちょ、どうしたの?」
「か、顔が真っ赤でござるぞ!」
「!? なな、なんでもねえよ!」


勢いよく右手で顔を抑えた伊達の旦那は、そのあとすぐに教室を飛び出して行った。


「え、どうしたの……?」
「体調がお悪かったのだろうか……」


さっきのあの様子で確信した。俺様の予想はやっぱり当たってたみたいだ。
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テーマ「人外ファンタジー」
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