「聞いたかい?」
「何をだ?」
「ここら辺で出てたひったくり常習犯が逮捕されたんだってさ」
「沙季ちゃんが言ってたやつか」
「そうそう。さっき公園にいたばあちゃんに聞いたんだ」
「知り合い多いなお前」
「まあね!」
「そのような不逞の輩が捕まったのはようござりましたな」
「一般の人が捕まえて警察に連絡したらしいよ」
「なんと!」
「この時代の奴もできんだな」
「ただいまー」
「お、沙季返ってきた」
「おかえりー」
「ただいま。遅くなってごめんね」
「沙季が言ってたひったくりが捕まったんだって」
「ね、よかったよね」
「聞いたのか」
「一応捕まえたのわたし」
「………」
「……え?」
「jokeかそれ」
「え、ほんとだよ」
「……え!?」
「どうやって!?」
「わたしもあとでひったくり犯だって気づいたんだけどさ。普通に歩いてたら後ろから悲鳴聞こえてね、びっくりして振り向いたら男の人がどけ!って言いながらこっち走ってきて」
「……で?」
「こう、反射的に回し蹴りを入れちゃったんだよね、顔に。そしたら倒れて、ひったくりだってわかったから警察に連絡を」
「………」
「それほんとの話?」
「うん」
「あ、アンタそんなことできんのか」
「そ、そんなにびっくり?」
「びっくりだよ!」
「なんと素晴らしい……! 修行などをされていたのでござるか!?」
「してないしてない。兄ちゃんが外国に行く前に叩きこまれたんだ」

******

「いいか沙季。女の子の一人暮らしは危険だ。ストーカー、痴漢その他不審者にあう危険性が大いにある」
「う、うん」
「そのとき自分の身を守り、尚且つ相手をぶっ倒すためのことを今から教えるから、身体に叩き込め」
「うん……うん?」
『これから特訓だ!』
「ええ……!」

******

「ていう感じで、兄ちゃんが旅立つまで毎日蹴りやらかわし方やらの練習したんだ」
「おお……」
「すげえ……」
「懐かしいな〜」
「兄上殿たちはお強いのでござるか?」
「うーんどうだろ、あんまそんな印象ないけど」
「俺も沙季の兄ちゃんと喧嘩してみたい!」
「慶次には負けちゃうと思うなあ」
「……今までに変な野郎にあったことあんのか?」
「ううん、今まで何事もなく過ごしてきたよ。ここで役に立つとは。やっといて良かった」
「そうか」
「でも普段やらないから足上げで股関節が痛くて……」
「ちょ、大丈夫?」
「大丈夫大丈夫」
「しかし沙季殿、あまり無茶をされてはいけませぬぞ」
「そうだぜ。相手は男なんだからよ」
「うん、わかった」
「本当にわかっておるのか」
「わ、わかってますよ?」
「でも今は俺様たちがいるからさ」
「何かあったら護ってやるよ」
「かっこいいねえ!」
「テメェ馬鹿にしてんだろ前田」
「某も御守り致す故!」
「俺もだぜ」
「あ、ありがとう……!」
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