私の数歩先でゆらゆらと揺れる一房の髪。さっきからずっと見つめているそれに近づき触れれば、本人はびくりと肩を跳ねさせた。


「沙季殿?」
「幸村髪さらさら!」
「そ、そうでござるか?」
「うん。ちゃんと触ったの初めて」
「ちゃんと?」
「今までもこっそり後ろから触ったことは何回かあるんだけど、気づいてた?」
「いや、存じておりませんでした……!」
「面白いことするね」


慶次は呆れたように笑ってた。髪を握る指を動かすが、絡まってる髪など見受けられない。


「枝毛とかなさそう。綺麗な髪だね」
「お、恐れ入りまする」
「いい匂い」
「のわ!」
「嗅ぐなよ」


幸村の一房の髪を取り鼻の下に持っていく。風呂上がりだからかいい香りがした。幸村の顔が赤い。佐助たちにはやめろと言われてしまった。


「俺はどう?」
「うーん、ちょっと傷んでる」
「綺麗じゃない?」
「ううん、ぱっと見綺麗だから大丈夫」


そう言うと慶次はじゃあいいかと笑ってた。今度は橙色の髪に歩みよる。


「髪の色、生まれつき?」
「うん。俺様たちの時代には髪染めるもんはなかったからね」
「いいね、オレンジ」
「ありがとー」
「じゃあ元親も地毛なんだ?」
「おうよ」
「珍しい、銀髪」
「昔は周りと違って嫌だったけどな」
「いいじゃん。綺麗だよ」
「ありがとよ」


少し照れくさそうに笑う元親は、なんだか少し幼く見えた。小十郎さんと毛利さんがいない現在のこの場で、まだ話していないのは政宗だけだ。


「つやつやしてる」
「どうだ?」
「綺麗」
「沙季の髪はどうなんだ?」
「触っていい?」
「わ、私の髪ぱさぱさだからだめ」
「またまたあ」
「いや、ほんとだから!この前政宗に髪触られたとき、ばれたと思った」
「確かに毛先は少し傷んでたか」
「ほんとのこと言われちゃった……」
「どれどれ?」
「ささ、触んないでって」
「今の言い方俺様傷ついたー」
「ごめん……」
「確かに毛先がちょっとねー。でも他はさらさらだよ」
「柔らかいし、綺麗じゃないかい」
「あ、ありがとう」
「あ、枝毛」
「ここもある」
「いい! もういいから!」
「あ、逃げんなよ」
「あーあ……」


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