「沙季殿、これは何でござろうか」
「ああ、私の数学の宿題だ」
「数学?」
「こ、この文字は一体……」
「それは数字と記号。計算するの」
「やってどうすんだ?」
「ほんとにやってどうすんだろうね……」
「なんか難しそうだな」
「うん……わたし特に数学ダメだからもう全然……」
「そ、そうなのでござるか」
「数学は受験には使わないけど学校のテストで今度あるから、やらなくちゃいけなくて」
「大変だな」
「このプリントも明日提出なんだけどさっぱりで全く進んでないっていうね。はは、どうしよう」
「笑ってる場合なのか……」
「……場合じゃないです」
「これは俺らには教えてあげられないからなあ」
「頑張って下され!」
「はは、ありがと……」


プリントを見つめる毛利さんを不思議に思いながらも入浴した後。


「沙季ちゃん、これ見て」
「どうしたの?」
「毛利が……」
「え?」
「これ」
「うそ……」
「沙季が風呂入ったあと毛利の兄さんがさっきの全部解いた」
「すごい! やり方知らないのによく解けましたね……!」
「容易いわ」
「わ、わたしがずっとやってきてできないものが……」
「沙季ちゃん、元気出して!」
「やる気削ぐようなことすんなよ……」
「日々やっていて何故できぬのだ」
「頭の出来でしょうか……」
「我が見てやろう」
「え?」
「今回限り、特別だ」


十数分後。


「何故このような安易なものができぬのだ」
「わ、わからないんです」
「何がわからぬ! 申せ!」
「な、何がわからないかもわかりません」
「意味がわからぬわ!」
「だ、だって……!」
「言い訳するな!」
「佐助……!」
「すぐに彼奴を呼ぶでない。はやく座れ」
「毛利の旦那、もっと優しく教えてあげないと……」


「Sparta……」
「沙季、どんどんやる気無くしてねえか……?」
「そろそろ止めに入んねえとな……」




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テーマ「人外ファンタジー」
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