「コシマエー! まだまだ勝負はこれからやで!」
「わかってる、よっ!」
「相変わらずすごい試合やなあ」
「越前も楽しそうだ。ここまで来た甲斐があったよ」


現在、四天宝寺中では青春学園との練習試合が行われていた。時刻はもうすぐ正午である。


「うおりゃあっ!」
「あ」
「金ちゃんが打ったボール出てもうた」
「あー! ええとこやったのに!」
「おチビー、代わりのボール、」
「わい探してくる!」
「金ちゃん! ……行ってもうた」
「あとで行きゃあええのに」
「すいませーん」
「ん?」
「ボールいきます」


フェンスの外に立っていたのは一人の女生徒。その手には蛍光色の黄緑のボールが握られている。彼女を見た四天宝寺の部員たちが小さく声を上げた。


「なまえや」
「ほんまや」
「あ、謙也。ボール投げていい?」
「おおきに。どうしたん? 今日休みやのに」
「忘れ物取りに来たんだけど、試合って聞いてたからちょっと見にきた。青学となんでしょ?」
「おお、そうやで」


フェンス越しに謙也となまえと呼ばれた女生徒が会話を交わしている。それを見ながら菊丸や桃城が白石に近寄った。


「ねえねえ、あの娘誰?」
「俺と謙也のクラスメートや」
「レベル高いじゃないっすか!」
「別嬪やろ?」
「もしかしてもしかして、白石の彼女っ?」
「ちゃうちゃう」
「じゃあ忍足?」
「謙也とは家が近いから仲ええねん。けど違うで。なまえは……」
「ボールなかったわーって、あれ! なまえがおる!」
「あ、金ちゃん」
「試合見に来てくれたん?」
「うん。頑張ってる?」
「当たり前やん!」
「なまえは金ちゃんの彼女や」
「……え、ええ!?」


目を円くして金太郎たちを見る一同。フェンス越しになまえの手を握りながらにこにこと笑っている金太郎を見て、皆感嘆の声を上げた。


「へー!」
「マジっすか」
「マジやで」
「金太郎ってそういうの興味ないのかと思ってた!」
「俺らもそう思てたんやけどな。金ちゃんのちょっとズレた猛アタックの末や」
「そっち方面では負けちまったなあ越前!」
「うるさいっす」

騒ぐ青学の輪から抜け、白石がフェンスの扉を押し開ける。


「なまえ、入ってきたらどうや?」
「え、いいよ! 試合中じゃん」
「もう昼休憩にするつもりやったんや。全国優勝の青学、見たい言うとったやん」
「おいでや!」
「ええ、でも」
「ええからええから」
「あ、ありがとう」
「こちらが青学の皆さんや」
「こんにちは。全国大会優勝、おめでとうございます」


少し緊張した面持ちながらなまえは頭を下げた。手塚を筆頭に青学の部員たちは礼を述べる。誰かを探すように面々を見渡していたなまえは、ある一人に視線を止めた。


「コシマエくん?」
「………」
「そうや! コイツがコシマエや!」
「なまえ、コシマエくんやのうてえちぜんくんやで」
「え!? す、すみません……!」
「いいっすよ」
「金ちゃんからよく話聞いてます」
「どうも」


笑うなまえにリョーマはじろじろと視線を這わせる。見られていると気づいた側は少し困惑の表情を浮かべた。


「どないしたんや? コシマエ」
「別に。アンタにはもったいないと思っただけ」
「えー! どういうことやそれ!」
「そのまんま」
「あ! もしかしてなまえのこと好きになってもうたんか!?」
「何言ってんの金ちゃん」
「何でそうなんの」
「アカン! なまえはやらんで!」


そう言ってなまえに抱き付く金太郎。なまえの方が背が少し高いのもあり、まるで姉弟のようだ。それは皆も思ったようである。


「姉弟みたい」
「わ、わいはこれから伸びんねん!」
「どうだろうね」
「人のこと言えんのかー? おチビ」
「……俺は伸びるっすから」
「わいもやで!」
「私は今のままでもいいのに」
「わいは大きなりたいんや。自分の彼女より背ぇ高いほうがかっこええ! それに大きなったらきっと、一目でわいがなまえの彼氏やってわかってもらえるもん。姉弟やなんて言われへんもん」


金太郎は拗ねるように唇を突き出たまま僅かに俯く。金ちゃん、なまえと付き合ってから身長気にしとるみたいなんや。と、白石が隣の不二に耳打ちしていた。


「これからも身長伸びないんじゃない?」
「コラ越前!」
「いてっ」
「な、なんでそない酷いこと言うんやコシマエ!」
「大丈夫。成長期なんだから伸びるよ」
「……ほんまに?」
「うん」
「もし伸びへんかったら、わいのこと嫌になる?」
「身長伸びても伸びなくても、金ちゃん好きなのは変わらないよ。ずっと一緒にいる」
「なまえ……っ、大好きや!」
「私も」


「ラブラブやなあ」
「ほんまっすね」
「え、こういうオチ?」


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