彼の長髪が風にさらりと揺れる。あの頃の彼と同じ彼。だけど、あの頃の彼と、目の前にいる彼は違う。


「そなたは、俺を通して誰を見ているのだ?」


小刻みに震える声。泣き出しそうに歪む彼の顔。視界が滲む。顔を覆うと瞼の裏に浮かぶのは、やはりあの頃の彼の姿。二本の槍が、風にはためく赤い鉢巻きが、今も脳裏に焼き付いている。今もなお彼に焦がれる私は、あの頃から何一つ変わっていない。あの頃から一歩も、前に進めていないのだ。あの頃の彼と同じ姿の彼が、あの頃の私を覚えていないことが苦しくて仕方ない。違う人物だと、わかっている。それをわかっているうえで好きになったはずなのに。


私は幸村に幸村様を重ねて、ずっとあの頃の彼を探している。




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ヒロインは転生しても戦国の幸村が忘れられないまま同じく転生した現代の幸村と恋に落ちる。けど本当に愛してるのは現代の幸村じゃなくて彼に重ねた戦国の幸村だっていう。ヒロインは前世の記憶あり。幸村はないけどヒロインから話は聞いてる。そして彼女が自分じゃなく昔の自分を見てるってわかってるっていう話。
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