放課後部活に行く生徒たちが次々と教室を出て行く中、幸村は元就を含めた五人に見守られながら教室に残って勉強をしていた。明日のミニテストで合格しなければ放課後は居残りになってしまうのだ。


明日、名前に告白しろ。今日昼休みの教室で政宗から突然そう言われ幸村は驚きで目を見開いた。名前に告白すると宣言して今日で一週間。言う気持ちは強くあるようだがなかなか実行できない幸村に政宗が遂に痺れを切らした。そろそろ言うべきだと思っていたのは他の皆も一緒。一週間前たてたあの男子生徒が告白するんじゃないかという推測は残念なことに当たっていた。いつかはわからないが、本人がそう言っていたという情報が佐助の耳に入ったのだ。あっちより早い方がいい。そう言われて明日の放課後、真田幸村は初の告白に挑むことになった。そういう訳で明日居残るわけにはいかない幸村に佐助たちが勉強を教えていたのだ。それも終わったころ、あるかばんを見つけた元親が口を開く。


「名前まだ残ってるんだな」
「ほんとだ。かすがのもあるし、一緒にどっか行ってるんじゃない?」
「本当に仲良いねえ、あの二人は」
「羨ましいんだろ、真田」
「そのようなことは……」
「声が小さくなっているぞ」


中学からのノリで話す六人の耳に不意に誰かが走ってくる音が聴こえた。軽やかだが急いでいるのがわかる足音。幸村たちは話すのを止め廊下に目を向ける。足音の主は教室の前で止まったかすがだった。切迫詰まったような彼女に全員が目を円くする。


「真田!」
「如何された?」
「中庭に行け」
「中庭?」
「名前が、告白を受けに行っている」
「え!?」


佐助たちが声を上げたのと幸村が走り出したのはほぼ同時だった。かすがの横を通り抜け廊下を駆けていく。足音は遠ざかっていった。


「びっくりした……」
「てか、今日だったのかよ!」
「知らなかった……」
「私も名前が行く直前に呼び出されたと聞いたんだ。アイツは言うのが遅い!」
「かすがちゃん、落ち着いて……」


廊下をとにかく走った。教室から中庭までが遠いことをこんなに嫌だと思ったことはない。もっと早く気持ちを伝えておくべきだった。自分が不甲斐ないばかりに他の者に先を越されてしまった。もし彼女が告白を受け入れていたら、明日から他の男の隣を歩いていたら。自分を選んでほしい。もうすぐ中庭だというところでこちらにゆっくりと歩いてくる彼女を見つけた。嬉しいと同時に絶望する。こっちに足を進めているということは、あの男の告白はもう終了したのだ。嫌な汗が流れる。なんと返事をしたのか。距離が近づいたことにより彼女が俺に気づく。手を挙げようとした彼女の体を、走った勢いのまま抱き締めた。


「わ!? な、なに、」
「好きだ!」
「え……」
「名前殿が、好きだ」


彼女が息を飲んだのがわかった。名前殿の薄い身体をきつく抱き締める。動かず何も言わない彼女に不安だけが募った。いきなりこんなことをして嫌われてしまったかもしれない。それでも離したくなんかなかった。突然背中に回された腕。自分の体が強ばったのがわかる。彼女の腕に力が入ったことに心臓が跳ねた。


「好きだよ」
「……え」
「私も、幸村くんが好き」


言葉をゆっくりと飲み込む。そのあと抱き締めていた腕を解いた。離れた彼女が俺を小さく見上げる。


「某と、お付き合いしてくだされ」


口から零れるように出た言葉。はい、と言ってはにかむ彼女が夕陽の朱に染まっていた。


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