「え! 俺ら同じクラスかい? あ、毛利の兄さんだけ隣だ」
「まじかよ! 寂しいか?」
「そんな訳あるか」
「じゃあ俺様たち五人は一緒なんだ」
「まさかだな」
「まさかでござるな!」


春は色々なものが変化する季節だ。学生たちにも出会いと別れが訪れるクラス変え。一年の教室が並ぶ廊下は、二年の教室に移動する生徒たちに埋め尽くされていた。皆かなり浮き足立って騒がしい。それは彼らも例外ではなく。


「あ、かすがちゃんも一緒だよ!」
「Oh. 猿は嫌がられそうだな」
「ちょ、言わないでよ……」
「行きましょうぞ」


隣の教室に入っていく元就を全員で見送ったあとたどり着いた自分たちの教室には、もうかなり人が集まっていた。先程話題に上がっていた彼女もいる。席に座っているだけの姿も美しい。


「よ! かすが」
「……本当にお前と一緒なんだな」
「相変わらず厳しー」
「長曾我部とはまた同じになったか」
「おう。よろしくな!」
「ああ」
「名前も一緒だろ?」
「今はトイレに行っている。もうすぐ戻ってくると思うぞ」


窓から入る風でかすがの金髪が僅かに揺れる。元親の口から出た聞きなれない名前に数人が首をかしげた。尋ねようと思ったところに担任なのだろう教師が来て、幸村たちも指定された席に着く。窓側から二列目の後ろから二番目。そこが幸村の席だ。そして彼の後ろは佐助。


「おお、近いな佐助」
「ね」
「何でお前が隣なんだ!」
「仕方ないじゃん、それは!」
「おお、かすが殿も近いでござるな!」


ちなみにかすがが佐助の隣だった。何やら言い合っている様子を仲が良いなと的外れなことを思いながら幸村が眺める。そして彼がふと思ったのはかすがの前の席、幸村の隣が未だ空席だということだった。幸村が疑問に思っているところに、後ろのドアから小走りで入ってきた一人の女生徒。


「かすが、もう出席取っちゃった!?」
「いや、まだだ」
「よかった……」
「遅かったな、名前」
「トイレが混んでて、びっくりした」

その彼女は苦笑しながら席に着く。座ったのは、幸村の隣。


「さっき言ってた名前ちゃん?」
「馴れ馴れしく呼ぶな!」
「え! じゃあ何て呼べばいいのさ」
「あ、かすがの友達だよね?」
「そうでーす」
「友達ではない」
「ひでえ。ねえ、紹介してよ」


佐助だけではなくその女生徒からも紹介してほしいと言われ、渋々と言った様子でかすがが口を開いた。不満そうな様子のかすがを見て佐助はへらりと笑う。


「名字名前。一年のとき同じクラスだった」
「よろしくね」
「俺様は猿飛佐助。で、こっちは真田の旦那。真田幸村」
「お」


いきなり自分も紹介され驚いたのか、幸村の肩が上がった。今までぼんやりとやり取りを見ていただけだったため反応が遅れたらしい。改めて佐助と挨拶を交わし終えたかすがの友人、名前が幸村と目を合わせる。


「よろしくね、真田くん」


笑みを浮かべた名前を見て幸村の心臓が跳ねたことには、本人すらも気付かず。



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