※忍たまの委員会パロ風味
※現代だと言ってみる
※なんかいろいろ違う





「ついにこの日がやって来た」


開け放たれた襖から外を見ながら、会計委員会委員長、毛利元就先輩は微笑を浮かべる。学園はこの現代にはまずない日本屋敷のような設計のため、部屋はこのように基本和室だ。風にさらさらと揺れる彼の茶髪。後ろから見ていた私を端正な顔が振り返る。


「準備はできておるな」
「はい」


彼を除いて唯一の会計委員である私は頷いた。学園内を包む普段はない緊張感は、朝よりも強くなっている。時計の針が十二時を指した。チャイムが学園中に鳴り響く中、毛利先輩はニヤリと笑う。


「始まるぞ」


同時に至る所から上がる雄叫び。今日は各委員会が予算をもぎ取ろうと必死の攻防をする日。予算会議、いや、予算戦争の日だ。



******



「委員長、体育委員会と作法委員会がやって来ます!」


部屋に面する庭園の左右から大きな足音が近づいてくる。私たちのいる部屋の前で止まった二つの集団。


「我ら体育委員会! 予算案を認めて頂きたい!」
「体育委員会なんぞにやる必要はねえ! 俺たち作法委員会によこしな!」
「な! その言い方は何でござる!」
「体育なんか走り回ってるだけだろうが! アンタらと違って、俺たちにはdangerousな仕事があんだよ!」
「無礼な! 体育委員会の真の意味をわかっておらぬようだな!」
「何だと!」


いがみ合うお二人。体育委員会委員長、真田幸村先輩と、作法委員会委員長、伊達政宗先輩だ。体育委員会は鍛練好きな真田先輩が委員長なため、相当走ったりしているらしい。彼と武田先生の殴り合いによって壊される学園の備品の修理費に、体育委員会の予算は殆ど消えてしまうという。副委員長の猿飛佐助先輩が愚痴ってた。そして、作法委員会。なかなか危険な仕事があるようで、度胸のある生徒が集まると言われている。確かに見た目からしてありそうな人ばかりだ。副委員長の片倉小十郎先輩とか特に。彼はまず学生に見えないことは黙っておく。


「そうはいかねえぞ!」
「図書委員会だって予算が欲しいです!」
「金が必要なのは保健委員会さ」


現れたのは用具委員会委員長の長曾我部元親先輩、図書委員会委員長の風魔小太郎先輩と副委員長の鶴姫、保健委員会委員長の竹中半兵衛先輩だ。用具委員会は名前通り学園の用具の修理など。長曾我部先輩は毛利先輩と仲が悪い。図書委員会は風魔先輩があまりに無口なため、必要な際に代わりに話すのは、彼に恋する副委員長の鶴姫だ。魔逆の二人だがなんやかんや合ってるよねと個人的に思っていたり。保健委員会は委員長の竹中先輩が学園で一番病弱という非常事態が起きている。こんなところに来て大丈夫なんだろうか。


「俺を忘れてもらっちゃ困るな!」
「我らにも予算が必要だ」


姿を見せたのは生物委員会委員長代理、前田慶次と火薬委員会委員長、雑賀孫市だった。慶次は前田利家先輩に風邪をひかせて、治るまでは彼が委員長を務めるらしい。いつもお猿の夢吉と一緒にいる。羨ましい。火薬委員会は委員皆いつも銃を持ち歩いているというかなり物騒な感じだ。孫市はあの美しい顔に似合わずなかなかデカい獲物も持ち歩いているという。


そんなわけで全ての委員会が集結した。各委員会が自分たちの武器となるものを取り出す。体育委員会の砲弾、用具委員の漆喰砲はもちろん危険だが、作法委員会の生首フィギュア、保健委員会の汚い手拭いもなかなか恐ろしい。前回の予算会議では、そりゃもうすごい争いになった。怪我人続出、戦場さながら。直接争わない会計委員会の私も、あのときは巻き込まれ足の骨を折るという大変痛い思いをした。今回は絶対に避けたい。漂う静けさと緊張感。まさに始まろうとしたとき、凛とした声が響いた。


「貴様らの予算は既に決定している」


声の主は我が会計委員会委員長、毛利先輩だった。どういうことだとざわめく一同。私も彼の言う意味がわからない。一体どうしたんだ。


「体育委員会」
「な、なんでござろうか」
「貴様らの予算は殆どが学園の修理費に消えておる。それでも活動できているということは、委員会の活動として使う金は修理費以外にいらぬということだな。それは壊さなければよい話」
「な……!」
「作法委員会、首実検のフィギュアは十分足りていると聞くが、何故予算がいる。そういえばこの前、作法委員会が小旅行をしたと聞いたな。一体どこから金をだしたのだ?」
「……Shit」
「長曾我部、貴様が率いる用具委員会に金をやるつもりはない。必要だとしても」
「それおかしいだろ!」
「図書委員会、図書室には我の家にある要らぬ本を寄付する。この度新たに買う必要はない」
「そんな……!」
「保健委員会、予算案には必要ではないのかと思うものが何も書かれておらなんだぞ。要らぬということだな」
「そんなはずは」
「大方、貴様が倒れている間に未熟な一年がわからず書いたのであろう。非があるのはそちらだな」
「……やられたね」
「生物委員会、生物の餌は自分たちで用意すると前田利家が以前に言っていたが」
「え!?」
「火薬委員会、貴様らの発砲音や火薬の匂いについての苦情がきておる。罰として予算は削減させてもらうぞ」
「………」


真を置かず話し続けた毛利先輩。バン!と彼が算盤を机に置いた音が大きく響く。


「よって今回、各委員会に必要最低限の予算しか渡さぬことを決定する!」


悔しそうながらも誰も彼に反論しない。人を説き伏せるこういうところは、流石というべきか。最初はそんな彼が恐くて他の委員会に移ろうとしたこともあったが、今は尊敬に値する。いや、今も恐いときは普通にあるし、夢吉がいる生物委員会に入りたいなとかしょっちゅう思うけど。少しの間を開けたあと、唐突に口を開いたのは長曾我部先輩だった。


「な、なんでだよ! 予算は今までみたいに争って決めるもんだろ!?」
「あのやり方は廃止した。怪我人が出てはいけないだろう」
「前回は全くんなこと言ってなかったじゃねえか! 会議のとき楽しそうに傍観してやがった癖に!」
「確かにそうだった。だが前回、腹立たしいことがあったのでな」


腹立たしいこと? 皆と同じようにそう思っているとき、毛利先輩が私を振り返った。若干びっくりしている最中に腕を引かれ、よろけながら彼の隣に並ばされる。え、何ですか。私たちを不思議そうに見る一同の前でも、毛利先輩は表情を変えない。


「前回、此奴が貴様らに怪我を負わされた。今回の予算削減は、その罰だ。後輩を傷つけられた報復ぞ」


余りに彼らしくない発言に皆が目を円くする。え、それは私のためにしてくれたってこと? いや、まさか。そんなの毛利先輩らしくない。思わず彼を凝視してしまっている私に気づき、毛利先輩は目を細める。


「護ってやろう。貴様は、我について来ればよい」


そう言って僅かに微笑んだ毛利先輩。私はこの瞬間、ずっと会計委員でいようと思いました。



ぼくらの学園戦争



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