足元から身体の芯がじわじわと温かくなっていく。柔らかい布団は肌触りが良く気持ちがいい。やっぱり冬は炬燵に限るなあとみかんの皮を向きながらぼんやり思う。向かいに座る幸村は自分の腕を枕にバラエティーを映し出すテレビを見つめていた。全く話さないのは眠いからなのだろう。炬燵の中に冷えた手を入れる。幸村の足首に触れれば、彼は勢いよく上半身を起こした。


「のわっ!」
「おはよう」
「つ、冷たいではないか」
「だって幸村が寝てるから」
「普通に起こしてくれれば……」
「ごめんね。はい、あー」


続きを紡ごうとした口に腕を伸ばしみかんを入れる。触れた唇は少しだけかさついていた。頬を赤くする幸村に笑いながら自分もみかんを口に運べば、甘さが口の中に広がる。


「美味しいね」
「う、うむ」
「顔赤いよ」
「わ、わかっておる」


隠しているつもりなのか、少し俯き気味になる。出会ってから何年も経つが、こんなところはずっと変わらない。そんなところが好きなのだけど。照れている幸村を見ていたらなんとなくうずうずしてきて、私は炬燵から抜け幸村の隣に座り直した。一辺だけに二人埋まり、あと三辺は空っぽな炬燵は少し不格好だが気にすることではないだろう。肩に頭を起き身体を寄せると、触れた部分から温かくなっていく。


「どうしたのだ? いきなり」
「この方が暖かいよ」
「確かにそうでござるな」


炬燵の中に入れていた手を不意に握られる。これは照れないんだなあ、と思いながら私も握り返した。炬燵の中ということもあり、繋いだ手は少し熱いくらいだ。沈黙が流れるが、それすらも心地よく感じる。


「名前」
「なに?」
「眠いのか?」
「え、なんでわかったの?」
「名前は眠いと途端に話さなくなる」


それは先ほど彼相手に思ったことだ。私もそうだったのか。一人笑う私に、幸村はきっと不思議そうな顔を向けているのだろう。幸村の肩から頭を離し、私はそのまま上半身を後ろに倒した。


「幸村も寝転んで」
「え、」
「ほらほら」


軽く彼の袖を引く。幸村は少し迷ったあと私と同じ体勢になった。ここぞとばかりに再びすり寄る私。不意に身体に回ってきた腕に気づき顔を上げると、赤い顔の幸村と私の視線が交わった。


「この方が、暖かい」


照れながら呟かれたその言葉に頬が緩む。そうだね、と返して彼の胸元に頭を寄せた。二人眠りに落ちていくのにそう時間はかからないだろう。



くっつく季節


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