「皆さん、現代には少し慣れましたか?」
「沙季ちゃん、敬語」
「……あ」


朝食を食べ片付けも終えたあと、リビングにいる彼らに向かい少し張った声をかけた。毛利さん以外の六人と約束した敬語なしを頻繁に破ってしまうわたしに、すかさず猿飛さん……佐助の指摘が入る。


「ご、ごめん」
「ああ、最初に比べりゃ慣れたぜ」
「某もでござる」


二人の言葉に同意するように他の皆も頷いている。彼らがきて約一週間。少しでも慣れてもらえたらと思っていたが、そのようで安心した。


「みんなが大丈夫なら今日、学校に行こうかなって」


学校?と聞き返してきた慶次に頷く。以前説明した学校というものを思い出すように、彼らの視線が宙をさまよった。暫くして数人があれか!というような表情をする。


「昨日まで休んでたんだよね」
「うん」
「わりィな、何日も休ませて」
「気にしないで」
「俺たちなら平気だよ! なあ?」
「Yes」
「大丈夫?」
「心配はいりませぬ!」
「休まねえほうがいいんだろ? 行ってこい」
「ありがと」


彼らもこちらの基本的な生活をわかってきたように思う。順応性が高いのだろう。本人たちが大丈夫だと言うならきっと大丈夫だ。準備してくるね、と言ってわたしは自室に向かった。


それが約十分前のこと。制服に着替えて、髪の毛も整えて、必要なものはリュックにつめて。全ての準備を終えてリビングに戻ったわたしを見て、皆が固まった。


「ど、どうしたの?」
「その服……」
「……は」
「は?」
「破廉恥でござる!!」


顔を赤くした幸村の大声に、こちらが固まってしまった。


「そそ、その格好は何でござるか! 何故そのように脚を出しておられるのだ!」
「こ、これは制服で……」
「まさかそれで行くつもり?」
「この服じゃないと学校に行けないんです」
「……学校ってそういうところなのか?」
「そ、そういうところ?」
「学校って男もいるんだろ?」
「うん」
「………」
「……はしたないわ」
「え!」
「いけませぬ! その着物ならば行かせる訳にはこざりませぬ!」
「ええ……!」


非難の理由は制服のスカート丈だった。世間一般の女子高生と同じ……まあ確かに短いけれど、戦国の彼らからは考えられないらしい。たしかにあちらは着物だから、それも当然なのかもしれない。だがわたしはスカートの裾を切ってしまっているため、伸ばすこともできない。何度も説明して、やっと認めてもらえた頃にはもう遅刻決定の時間だった。


「えっと、じゃあ用事があれば、電話からわたしの携帯に連絡してね」
「OK」
「お昼ご飯は温めた方がいいかも」
「わかった」
「外に出ても大丈夫だけど、信号守ってね。車通る道には絶対出ちゃダメだよ」
「心得申した」
「じゃあ、行ってきます」
「気をつけてな!」
「いってらっしゃい」


玄関を出てから振り返って手を振った。誰かに見送られるなんて、久しぶりだった。

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