向かったのは一番近くのショッピングモール。バスという乗り物についての説明をして、歩くには遠いからそれで向かうかと尋ねれば徒歩で行きたいという意見が上がった。現代のものをゆっくり見ながら行きたいらしい。なのでそうすることに。家から出て暫くしたら止まった彼らの足。驚きを隠さない顔で呆然と辺りを見渡す。その後少しずつ足を動かしていった。


「Wow. 地面が固いな。……この棒何だ?」
「コンクリートっていうので出来てるんです。これは電柱って言って、あの黒い線に電流が流れてて、それで家の電気がつくんですよ」
「うわ! なんだあれ!」
「あれは車って言って、早く移動できる機械? です。あ! 車道出たら危ないです!」
「ねえ、あれって誰かの城?」
「いえ、あれはマンションって言ってたくさん部屋があって、人がいっぱい住んでるんです」


説明をしながらゆっくり道を進んで行く。なんと言い表せばいいかわからないものもあって少し焦った。わたしの下手な説明でも理解して頷いてくれた三人に感謝する。いつもより倍ぐらいの時間をかけ無事目的地に到着した。


「扉が勝手に開いた!」
「自動ドアです」


自動ドアに驚く三人に少し笑いながら中に入る。彼らの瞳はせわしなく動き店内を捉えていた。エスカレーターに乗り上の階に上がる。


「皆さんにはこの店で下着を選んでもらいたいんです」
「下着って、褌代わりのやつか?」
「はい。あと、皆さんのものと一緒に他の方の分も選んでもらえますか?」
「Ah? なんでアイツらの分まで」
「文句言わないでよ、竜の旦那。了解しましたよっと」
「ありがとうございます。お一人に二、三枚選んで下さい」
「お前はどこ行くんだ?」
「わたしはちょっと用事済ませてきます。すぐ戻りますね」


そう言ってその場を離れた。向かったのはモール内の銀行。そこで今日使う分のお金を降ろした。数分で終え、再び先程の場所に戻る。既に選び終えていた三人にお礼を言い会計を済ませた。次に向かったのはメンズ服の店が並ぶ場所。その中で、品揃えがよく価格もお手頃だと兄がよく買っていた店を見つけ中に入った。下着は他の者が使っていたものを使用するのは嫌だろうということで全て新しく買ったが、服は兄の物が使える。だが流石に七人がそれだけを着るのは無理があるだろう。サイズも違う。それに皆自分の服が欲しいはずだ。


「この中から自分が着たいと思う服を選んでもらえますか?」
「いいの?」
「でもこの時代のって何がいいかわかんねえよな」
「ああ」
「沙季ちゃんが選んでよ」
「そうだな。頼むぜ沙季」
「わ、わたしがですか?」


いいのだろうか、わたしが選んで。確かに現代の服のことは彼らにはよくわからないだろう。ならば、と店内を歩き服の物色を始めた。彼ら七人のそれぞれのイメージに合うと思った服を選び、手に抱えていく。一人で持ちきれなくなった分は彼らが持ってくれた。この場にいる三人には、これとこれだったらどっちがいいですか?などと尋ねたりもしたが、ほとんどはわたしの意見で決めさせてもらった。体格のいい方の大きめのものを少し多く買い、服の買い物は終了。服の枚数に比例し袋の数も多かった。


「持つよ」
「あ、すいません。ありがとうございます」


店員さんから渡された袋をわたしが持つ前に手に取ったのは猿飛さんと元親くん。このあと残っている食料品の買い物を考えて、悪いが持ってもらうことにした。


「おい、何だこの野菜の数。見たことねえのもありやがる」
「この魚釣りたてなのか!?」
「団子置いてある」


モール内で彼らが一番驚きを見せたのがこの食料品コーナーだった。釣りたてではないですよ、と元親くんに説明してまた別の日に魚を買おうと言った。戦国時代には無いらしい野菜を見る度に、これは何だと尋ねてきた伊達さんに野菜の説明をし、気になっていると思ったものは籠にいれる。


「猿飛さん、お団子好きなんですか?」
「ううん、好きなのは俺様じゃなくて真田の旦那」
「そうなんですか」
「そうそう。甘党なんだよ、あの人」


団子に反応を示していた猿飛さんに尋ねると、答えと一緒に苦笑が帰ってきた。彼の言葉を聞き真田さんの顔を思い浮かべる。甘いものが好きだというのがなんとなくわかる気がした。三色団子、みたらし、あんこを数パックずつ、全員で食べられる分籠に入れる。


「喜んでくれるといいですね」


団子を見たあとそう言うと猿飛さんは、ありがと、と言って頬を緩めた。食料品のあと、歯ブラシなどの必要なものも選び会計を終えた。これで今日の買い物は終了だ。買った物は袋につめるのにも時間がかかったほど、相当な量。持ち帰るのが大変だな。何袋かは持ってもらい、自分も両手にできる限り袋をぶら下げた。だが持ってすぐわたしの手から離れたその重み。右手の分は元親くんが、左手の分は伊達さんが持ってくれていた。


「も、持ちますよ!」
「重てえだろ? 持ってやるよ」
「で、でも元親くんは服も持ってるし……」
「猿飛、服頼む」
「はいよー」
「これでいいだろ?」
「わたし何も持ってないです......」
「別にいいだろ?」
「いいから任せてよ」


両手が塞がっている彼らに比べ自分は手ぶら。いくらなんでも、これは申し訳ない。


「一袋でいいですから、も、持ちます」
「なんだ、持ちてえのか」
「は、はい」
「変わってるねえ」
「じゃあ一個頼むわ」


だが結局、渡されたのは一番軽い袋だった。


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